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20代後半で留学を決断した理由


将来を楽して生きたい

振り返れば、大学在学中に始めた長期インターンを考慮すると、5社以上で働いた経験がある。どこも事業規模としてはそこまで大きくなかったが、現場にはほぼ例外なく外国籍のエンジニアがおり、彼らをマネジメントしている英語が堪能な海外MBA・GAFAM出身の方々、さらには若くして海外スタートアップでバリバリ働いている人など、、そんな方々と触れ合う日々だった。
多くの刺激を受けつつ、一方で将来的に日本語だけしかできないポジションの椅子取りゲームが待ち受けている気がした。パンデミック以降、柔軟に働き方を選択できるようになったため、デジタル人材不足の日本では海外人材の受け入れがこれから加速していくだろうし、今は若いから仕事をもらえているけど、このままの状態で若さという資産を失った時、競争を勝ち抜けるのはほんの一部だけで、仕事を自由に選べなくなるのではないか?そんな将来の漠然とした不安に対して布石を打っておきたいと思うようになった。

生成AIなどこの変化の激しい時代に、30代で中長期的なビジョンを何も持っていない状態はまずいなと思っているし、「将来楽して生きたい」とは決して働きたくないという意味ではなく、30代前半のうちに自分の軸を持ち、尚且つ先行者利益の利く分野で熱量持って没入できている&常に自分が望む仕事を選べる状態を目指すということ。だから、英語がストレスなくビジネスで使えて、どこでも働ける状態にしておけば、年を重ねるごとに、低迷したキャリアを歩むことも選択肢が狭まることへの危機感もなくなるだろうし、将来を自由に生きるための手段として英語は必須かなという考えに至った。

なぜ留学か

キャリアのJカーブがあっても良いと思っている。私が新卒で入った会社は知名度の全くないスタートアップで、採用や広告宣伝、R&Dへの大胆な初期投資とそれに伴う赤字からスタートし、徐々に成長していくようなビジネスモデルだった。結局、その会社では事業成長を経験できず辞めてしまったが、自分のキャリアにおいても、数年間一時的に全く新しいことに挑戦すること自体はとても意味のあることだと思ったし、同時に長期的な成長にもつながるかなと。
確かに、ある程度成熟した企業に入ることができれば、一定の線形的な成長はある(※自分自身、いわゆる就職人気ランキング上位の大手企業で働いた経験は一切ない)。それでも体力があってリスクを取れる20代の若いうちは一生懸命に仕事や経験に時間とお金を投資して、自分自身の市場価値を高めていけば、より自由で満足のいく働き方を実現できそうな気がする。

その投資先として自分は留学を選んだ。私自身挑戦したいと思っている宇宙業界、中でも環境問題と衛星事業の交差する分野は欧米が先行しており、グローバルな環境で物怖じせずディスカッションできる素地を培うための留学はその第一歩。グローバルスタンダードなスキルを身につけつつ、その先に、例えば欧米企業で就職できるくらいにビジネス戦闘力が上がれば、将来的に自分の投資が大きなリターンになって返ってくる(と信じている)。

留学準備期間は何をしていたか

IELTSの勉強

まず、IELTSやTOEFLといった国際的な英語試験で、各大学の要求するスコアを達成する必要がある。本格的に試験勉強を開始したのは2023年2月で、目標スコアに到達できたのが約1年後の2024年1月、集計してみると計1100時間の学習時間をスコアメイクに投じていた。つまり、TOEIC600点台から海外大学院に合格できるレベルまで引き上げるために、月100時間近くを英語学習に充てていたことになる。またスクール代、オンライン英会話、受験費用(一回あたり3万円弱)、教材費など、学習にかかった費用としておそらく100万円は超えているはず。

IELTS初回受験からスコア達成までに要した勉強時間

仕事と並行して試験対策を継続することは決して容易ではなかったし、スコアの停滞していた時期はもちろん不安や焦りもあったが、不思議と勉強自体にはあまり苦痛と感じることはなかった。

「努力する者は、それを楽しんでいる者には勝てない」という孔子の言葉がある。
さすがに努力が楽しみに変わってそれがもはや苦労ではなくなる、みたいな理想的な状態ではなかったものの、私にとって英語学習は、将来の海外インターンや現地就職、自由な生活への憧れという明確な「方向性」があった。そのため、毎日、昨日よりもほんの少し良いやり方で改善を積み重ね、それが徐々に結果に表れているという小さな成功体験も経験しつつ、その過程の努力もある程度楽しむことができたのは確か。

この経験から、例えば今の仕事で嫌いな要素があっても、自分のやりたいことの「方向性」を加えることで、嫌いを徐々に「好き」に変えられる可能性はあるかなと個人的には思ったりする。ただ、自分の望む方向へ進めないような自身でコントロールできない環境にいるなら、さっさと転職した方がいいかなと。

とにかく真面目にたくさん働いて自己資金を確保する

円安の影響もあり、留学に必要な資金は日本の大学と比較して桁違いに高い。Imperial College Londonのような名門校は学費だけで年間800万円近く、生活費や渡航費など含めれば1000万円を軽く超えるだろう。
そこで、私費留学を想定し、希望の留学年度から逆算して収支計画を作ってみたところ、通常の正社員の働き方だと到底資金が間に合わなかった。そのため新卒で入社した会社を1年余りで退職し、フリーランスとして働きまくる選択肢をとった。労働集約型のフリーランスなら、月に100万円以上稼ぐことも可能だったし、IELTS試験前には勉強に集中するための時間調整もしやすいため、フリーランスという選択は正解だった。

その他、副次的なメリットも多くあった。

1. CVにかけるネタが増えた。

海外大では、試験の点数よりも個々の経験やバックグラウンドがより重視される傾向がある。私の場合、フリーランスのエンジニアとして開発案件に留まらず、自分がフロントに立ってクライアントワークを行なったり、新規事業のPMサポート、さらには論文執筆にも携わることができた。これらの経験は、多少なりとも他の応募者との差別化要因になっていると思うし、実際に現時点で出願している5つの大学全てからオファーをいただけた(※うち1校はIELTSのライティングスコアで0.5ポイント不足しているため条件付き合格)

2. PJメンバーや取引先と良好な関係性を築けた。

海外大へアプライする際の必要書類として、第三者の推薦状を2~3通求めていることが多い。そんな中、1年間一緒にプロジェクトを行っていたマネージャーの方から推薦状をもらえたことが私にとって大きなアドバンテージとなった。というのも彼はスタンフォードMBA出身だっため出願プロセスはすでに熟知しており、推薦状の作成だけでなく、Personal Statement/Essayの添削や英語学習のアドバイスまで幅広くサポートしてもらった。このようなメンター的存在は、私にとって非常に大きな支えとなった。こんな高単価の人が僕のために時間を割いてくれている申し訳なさを感じつつも、これも同じプロジェクトで彼の期待を裏切らないよう、一定の信頼関係を構築できたおかげかと思う。
また、フリーランスで関わった複数の取引先からは、留学中も継続的に発注してくれるという口頭合意をもらえるなど、「信頼」という無形資産は中長期的に複利で効いてくることを学んだ。今後も、(当たり前のことだが)相手の期待値を下回らないように目の前の仕事を全力で取り組んでいきたい。

生成AIで留学準備のストレスを軽減

留学準備の過程でChatGPTの存在は非常に大きかった。
Personal StatementやCVの初稿はChatGPTに作ってもらった。また、出願プロセス中、特定のセクションで選択肢に迷った際、スクショと共に質問する使い方も便利だった。
例えば、オランダの大学院に出願する際に、あまり馴染みのないプログラムレベルを選択する必要があったが、「オランダの修士コースに出願したい場合、何を選択すれば良い?」とふわっと質問したところ、期待する回答が返ってきた。

少し余談になりますが、こういった便利ツールや新しいスキルを学ぶ時間をいかに短縮できるかってとても重要。
Smart HRの元CEOも「変化に適応し続ける奴が一番強い」と語っているように、すぐに仕事や普段の生活にインストールして、求められる役割や環境の変化に柔軟に対応する能力は今後ますます必要になってきそうです。

https://content.fortune.com/wp-content/uploads/2022/05/Adapting_to_Endure_May_2022.pdf

誰が勝つか?
- 現実を受け入れた者
- 早く適応した者
- あとで後悔することを恐れ、規律を強化する痛みを受け入れたもの
- この状況下で強くなったもの

今後の展望

最近、カーボンクレジット取引を手掛ける企業からスカウトをいただけた。テックチームは外国籍メンバーで構成されており、私の留学先で学びたい内容とも親和性があったので、近いうちに初めての日本人メンバーとしてJOINする予定である。(留学前の準備期間としてもGood)

人生を変える三つの要素

大前研一さんの提唱する「人生を変える三つの要素」は印象深く残っており、私の行動原理にもなっている。

1. 住む場所を変える
2. 付き合う人を変える
3. 時間配分を変える

大前さん曰く、とにかく行動が大事で、最も無意味なのは「決意を新たにする」ことらしい。実際に、自分の場合はフリーランスへ転身して様々なバックグラウンドを持つ方々と仕事ができ(2. 付き合う人を変える)、毎日をほぼ仕事と英語学習に注力したことで(3. 時間配分を変える)、海外大学院の合格とグローバルチームで経験を積めるチャンスが同時に得られた。
まだ、留学後の具体的なプランはイメージできていないが、海外でのインターンや現地就職も視野に入れていきたいし、常に自分の位置を正確に知り、学びや成長につながる形を模索しながら、自分が心から納得できる楽しい生き方を選択したい。

おまけ:環境問題×衛星事業には大きなビジネスチャンスがある

宇宙業界は、そのアカデミックな探究心とビジネスの可能性が融合した魅力的な分野だ。宇宙からのデータは天気予報、災害監視、農業・漁業支援、金融分析、安全保障といった従来の用途に加え、AI技術の進化が新たな可能性を切り開いている。衛星コンステレーションの整備も進んでおり、2024年以降さらに充実していくため、数年前だと不可能だったことが実現可能になる未来も近い。

特に、Climate TechへのVCからの投資は前年比倍増で700億ドルに達しており、この分野の拡大は加速している。

https://www.holoniq.com/notes/2022-climate-tech-vc-funding-totals-70-1b-up-89-from-37-0b-in-2021

SDGsの17ターゲットのうち、1/3くらいは宇宙からのデータや通信が支えていると思うし、地上のサステナビリティを維持するためには、リモートセンシングデータの利活用が不可欠となるだろう。

衛星データサービス市場の拡大に伴い、欧米企業は幅広い分析用途で価値提供し売上を伸ばしている一方で、これらの技術を深く理解し、エンドユーザーのニーズに対応したサービスを提供できる日本企業はまだ少ないように感じる。
こういった背景もあり、欧米企業でチャレンジできる機会が来れば、社会人経験も活かしつつ、学術とビジネス間のリエイゾン役として貢献していければと考えている。

Seraphim spacetech map 2023(https://seraphim.vc/news/introducing-the-seraphim-spacetech-market-map/)




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