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記憶、ヨーグルト、選択

なぜ私はヨーグルト買い、食べたのか、順を追って説明いたします。

★購入編

前日(6月28日)、私は仕事終わりにスーパーに寄りました。お腹が空いていたので、兎に角食べ物を買えるお店に入りたかったからです。でもあまりお金は使いたくありませんでした。

しばらく店内を物色し、帰宅後すぐ食べられるお菓子と、元気が出る栄養ドリンクらしきものと、季節ハズレの為に150円もする大玉アボカドをカゴに入れていました。ところでアボカドの季節はいつなのでしようか。アボカドは100円くらいがいいです。10円、20円と値上がりしていくアボカドを見て、「季節じゃないのだな」と思っていたのですが、アボカドが100円だった時期を忘れたのでもはや分からないのです。お金を出来るだけ使いたくない私は、150円もするアボカドを買う予定ではありませんでしたが、その時はとにかくアボカドの油が食べたくて、150円もするアボカドをカゴに入れていたのです。

ふと、“甘いものも欲しい”と思いました。

でもチョコレートとか、ちがう。そういうのじゃない、そうだ、野菜コーナーの近くには乳製品コーナーがある。

真っ先に頭の中にヨーグルトが浮かび上がってきました。もうヨーグルトしかない。

ヨーグルトコーナーをみると様々な味と会社名が書かれたヨーグルトが並んでいます。

ヨーグルトってこんなに種類あったっけ。ここのスーパー、ヨーグルトに力入れすぎじゃない? こんないる? このメーカー知らんなぁ。もう頭使いたくないから早く食べたいわ。地べたに座って食べ比べしたい。

脳内1人お喋りが始まりました。思考が脱線しつつも、ギリシャと名前が付いているヨーグルトは濃厚で、フルーツが入っているとたまに水っぽいことがある、など、過去の記憶の味を掘り起こしながら現在の自分に最適なヨーグルトを探していました。そして、あるヨーグルトに目が止まりました。

明治ブルガリアヨーグルト

普通だ。昔から食べていた。うちの家族は「明治ブルガリアヨーグルトが一番美味しいし安定している」と、昔から言っていた。

安定の意味は謎ですが、明治ブルガリアヨーグルトは私の中でそんなイメージで、ヨーグルトの基礎の味です。

そうだ、大きなサイズのこれに、蜂蜜を入れて自分の好きな味にしよう。アボカドを買った私は、気が大きくなっていました。小さいサイズより、大きくて何回か分けて食べられる明治ブルガリアヨーグルトは、その時の私に最適でした。

そうして、私は明治ブルガリアヨーグルトのプレーン400gを買いました。


★食べる編

家に蜂蜜がありませんでした。

そんなショッキングな話の前に、ヨーグルトといえば朝食べるもの、と思っていた私は帰宅してすぐには食べませんでした。なぜか帰宅後はもう何も食べたくなくなっていたのです。

次の日の朝(6月29日)、カフェオレをつくり、朝用のパンを焼き、熱々のパンにバターを塗り、昨日買ったヨーグルトを木のスプーンで器によそいました。

ガラス製で、薄く青色に光るガラスの器です。夏には素麺のつゆ入れにも使いますし、ほうれん草のお浸しを入れたりもします。ただ、その器が一番美しい時は、ヨーグルトを入れた時です。

ヨーグルトは白い為、色彩の邪魔を一切しません。白色は何色とも相性がいいです。逆にいうと、白のままでは足りない気がする。

何か味、色をつけなければ。

砂糖の味は求めている味ではないと思っていたので、蜂蜜を探すと、いつも蜂蜜を置く棚に蜂蜜がありませんでした。

大きめのサイズの彼はその胸の内に秘めたる黄金色の野望を失うはずがないと、私は思い込んでいたのです。そして、私は思い出しました。

この前、ホットケーキ食べたなあ。

蜂蜜は諦めました。そもそも、明治ブルガリアヨーグルトは、何も味付けしなくても美味しいことを、私は知っていたのです。

心を決めてから、まず私はカフェオレを飲み、パンを食べ、パンを食べ終えてからヨーグルトを食べ始めました。ヨーグルトは今その瞬間デザートの位置なので、主食を食べ終えてからでないと食べられないからです。そして、食べ終えました。

さっぱりとしたヨーグルトの酸味、濃さを感じたことで、ようやく私は昨日の私の目的を達成したことになりました。満足度の高い朝を、私は私の手で掴み取ったのです。

ヨーグルトひとつとってもこれだけ私は記憶を探り、選択をして生きているのです。

もし昨日スーパーへ行かなければ。アボカドを買わなければ、甘いものを欲さなければ、チョコレートを選んでいれば。ヨーグルトを思い出さなければ。家族が昔から明治ブルガリアヨーグルトを食べていなければ。昨日の帰宅後すぐにヨーグルトを食べていれば。蜂蜜が残っていれば。

幾重にも重なる“もし”を経て、私は6月29日の朝を迎えたのです。

ヨーグルト中心のその時間は、確実に私を形成する要素になりました。

ヨーグルト、ヨーグルト、ヨーグルト。

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