宇宙(そら)とクスノキとちぃちゃんと
生まれた歌たちに付随する物語。
2012年3月12日記
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ちぃちゃんが通っていた学校の、校庭の真ん中には大きな大きなクスノキがありがました。ちぃちゃんのお父さんが子供の頃にもそのクスノキはあったのだそうです。
ちぃちゃんは、クスノキの下で遊ぶのが好きでした。なんとなく、安心するのです。少しの雨なら、雨宿りだってできました。風が吹くと、葉っぱは、ざわざわと音をたててまるで笑っているようでしたし、ちぃちゃんが泣いていると葉っぱをパラパラと散らせてまるでいっしょに泣いているようでした。
クスノキは、いつも黙っていました。でも、ちぃちゃんは、クスノキがいつもちぃちゃんを、待っていてくれているように感じました。
ざわざわという葉っぱの音も、パラパラと舞い散る葉も、「大丈夫だよ」というクスノキの声に聞こえたのです。
ちぃちゃんはよく、上を見上げてクスノキの枝葉の隙間からこぼれる光を眺めていました。その時のちぃちゃんは気づいていなかったけれど、その足元には、クスノキの大きな大きな根っこが広がっていて、ちぃちゃんは、クスノキにだっこされていました。
その根っこの先には山があり、川があり、大地があり、海があり、地球があり、宇宙(そら)がありました。ちぃちゃんが感じていた「大丈夫だよ」という声は本当は、宇宙の声だったのかもしれません。
小さな小さな、ちぃちゃんと宇宙をつないでくれたクスノキだったのだと大人になったちぃちゃんは、クスノキのことを思い出しています。
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