主人が体調を崩して休職した話

去年末、主人が鬱になり、休職を余儀なくされた。

実は、主人が鬱になるのはこれが初めてではない。私と出会うずっと前、ハタチの頃にも体調を崩し鬱と診断され治療を受けている。

今回はそれが十年ぶりに「ぶり返した」と捉えるべきだろう。

体調を崩して病院を転々とする日々

実は転職してリモート勤務をはじめてから、主人は激太りしてしまった。リモートワーカーあるあるとも言うべきか、転職して3年で20kgもデブってしまったのである。

私と出会った頃の主人は(その頃からちょっとお腹はポチャッてたけど)今よりずっとほっそりとしていて、顔立ちも整っていてちょっとカッコいいなと思っていた。強いて言えば、ホントにホントに、敢えてカテゴライズすれば、AV男優・エロメンとして各方面でご活躍中の鈴木一徹ぽい顔立ち。(ごめんなさい鈴木一徹さん。ごめんなさい鈴木一徹ファンの皆さん。)

ちなみに本人は「若い頃はモテてたんやで」「若い頃は『藤木直人に似てる』て言われたこともあるんやで」とのたまっていた。

が、今は昔。その頃の面影は皆無。眼前にはただの90kgの飛べない豚。キモオタ風。あれれ?私の一徹くんはどこに行ったの。

しかも妻の意見には耳を傾けないのが夫という生き物である。「痩せたほうがいい」といっても「このままだと病気で血管プッツン寝たきりコースやで」と煽っても一向に痩せようとはしないのだ。

そうこうしているうちに、「風邪ひいたから病院行ってくる」「咳が止まらないから仕事にならない、休む」「眠れないから不眠症の薬もらってくる」と、立て続けに欠勤するようになった。去年末のことだ。

これはヤバイ。眠れないってそりゃ当たり前だろデブりすぎて夜中は無呼吸になってるんだから。「おや?轟音(いびき)が止まったぞ?死ぬのかな?」とこの頃は毎晩のように思っていた。

そうして「その時」はやってきた。

頭が正常に稼働してないがゆえの「謎行動」

その日はちょうど日曜日で、私は子どもたちと出かけていた。そのタイミングでの出来事だ。帰ってきてリビングに来てみたら、床が濡れていたのだ。

「はて?」と思いそのままキッチンに目をやると、酩酊状態の主人の姿が。なぜか全身ビショビショに濡れている。外は快晴だ。主人の手元にはほぼ空の一升瓶とほぼ空の睡眠薬のシートが1枚。

これはヤバイと思い、子どもたちに一旦玄関で待ってもらい、その間にキッチンと床を拭き、主人を自室に移動させ、水を飲ませて寝かせた。

そのあと子どもたちをリビングに移動させて、看護師の親友と、同じく看護師をしている義理の妹に電話をかけてみた。救急車を呼ぶほどではないにせよ、病院には行ったほうがいいのか?家で安静にしておくだけで大丈夫なのか?素人には判断がつかなかったからである。

休日だったので案の定はじめは捕まらなかったが、それでも、救急も経験したことのある看護師の親友のほうが、着信に気付いてあとから掛け直してくれた。「どうしたと〜?」という彼女の声を聞いたときはホントに泣きそうだった。

事情を説明し、酒と薬の量を伝えると「おそらくは自宅安静で大丈夫だろう」とのことだった。救急で運ばれてくる患者さんの中には、それこそ酒と睡眠薬を大量に飲んだ人たちも含まれているが、大体は1ヶ月分(30錠)丸々とか、それ以上とか、とにかく大量に飲んでから来る人達ばかりだそうだ。

そうなると応急措置として胃洗浄などが必要になるが、量から推測するに、別段その必要はないだろうと。そのかわり、とにかく水を飲ませてトイレに行かせるように、とのことだった。

心療内科で診断を貰いめでたく休職

そういうわけで、その日は子どもたちの世話にプラスして、定期的に主人の部屋に行っては息をしているか、受け答えができるか、嘔吐していないか、吐瀉物が喉に詰まっていないかを確認しつつ、水を飲ませてはトイレに行かせるというタスクもこなさねばならなかった。

この一件で「通常の精神状態」ではないことがハッキリしたので、これまた日曜日の夜ではあったが、かかりつけ医に電話をかけてみることにした。

病院に直接かけても出てくれない(誰もいない)ことは明白だったので、以前もらっていた携帯電話の番号にかけてみた。

ここ最近の一連の流れを説明し、この日の薬と酒の量のこと、看護師の友人から指示を仰いで対処したこと、いい心療内科を紹介してほしいということを伝えたところ、2〜3件ほど提案してくださった。

また床が濡れていたのは「おそらく失禁したのではないか」とのことだった。が、そのとき尿のニオイは一切感じられなかったのと、頭からつま先まで全身が濡れていたこと、それなのに股間は濡れていなかったこと、キッチンどころかリビングの床までびしょびしょだったので、尿にしては多すぎるのではないか?ということ。

アルコールの大量摂取で酩酊しているのであれば、水を飲まないとこんなには失禁もできないはず。ということは逆に、喉が乾いたタイミングで水を飲もうとしたか何かの拍子に、蛇口をひねったまま躓いて倒れたのではないか?と推測している。

翌日、酩酊状態からさめて元気になった主人に、昨日のことを覚えているか尋ねてみると「覚えてない」と言うので(ふざけんなよゴルァ。と思いつつ)極力おだやかに、極力平生を装って「こういうことがあったんだよ、精神状態が怪しいから、きちんと心療内科にかかって、診断書を貰って、そのことを会社にも伝えたほうがいいと思う」と説明した。

それを聞いた主人は「ふーん」と生返事だったが、その後すぐ会社のマネージャーに掛け合ったらしい。ここ最近の状況を説明し、妻から聞いた「昨日のできごと」を説明したら、そのまますぐ、有給の傷病休暇に切り替わった。

その後、かかりつけ医に教えてもらった病院に電話をかけ、比較的すぐ予約が取れたところに主人を行かせた。主人いわく「とても良い先生」だった。

心の安定とともに家事に精を出すようになっていった

休職後の半年間で、主人は自分の心と向き合い、生活を見直し、運動をし、20kg痩せて、結婚直後くらいの体型を取り戻すことに成功した。

仕事のストレスや閉塞的になりがちなリモートワークとの相性もあったのだと思う。本人曰く、リモートワークを今すぐやめるという選択は賢明ではないので、試行錯誤しながら向き合っていきたいということで、転職は一旦は見送ることにした。

更に驚くべきことに、彼は家事を率先してやり始めた。

おそらくは、家にいて「ただ何もしない」ことに飽きたのだろうとは思う。それまでにも、彼は休みの日に全員分の夕食を作ったり、毎日のゴミ出しを買って出てくれたりしてはいたのだが、それに輪をかけて毎日毎食ごはんを作り、風呂を洗いお湯をはり、洗濯物を洗って干して畳んで、床掃除や子どものおもちゃの片付けまでするようになってしまった。

逆に疲れない?大丈夫?無理してない?と聞いてみたのだが、本人曰く「今まで自分が如何に家事をしていなかったかが分かった」そうで、今までやってこなかった分を取り返している感じだそうだ。

(当時の私はというと「どうせ復職したら今まで通りになるだろう」「どうせ仕事ばかりになって家事などしなくなるだろう」と非常に冷めた気持ちで彼の一連の仕事を眺めていた。)

...これ以上はちょっと長くなってしまうので、また続きを別の記事としてアップしてみたいと思う。

というわけで、つづく

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