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オイカワをフライフィッシングで釣ろう

 イワナやヤマメ、アマゴについては、いろいろな解説書/サイトがありますよね。釣り場の形態や季節、捕食する虫類などなど。
 で、身近すぎるほど身近なターゲット、オイカワ(地方名:ヤマベ、ハエ、シラハエ……etc.)を釣ろうとすると、雑に考えすぎるんじゃないかな、という印象があります。いや「専用の竿」とかいうものはあるんですけど……私自身は「なんか違うぞ」と考えています。

●まずは道具から考えよう

 小型の魚だから、柔らかい竿、細いフライラインを使って楽しもう、と考えるのは一理あるのですが、実はここに罠があります。その生息エリアが平野部であること、さらに渓流魚の禁漁期である冬も楽しめる(というかむしろ禁漁期の楽しみという色が強い)ことを考えてみてください。

 そう、強風という壁が立ちはだかるのですね。特に冬は木枯らしが大敵です。そんな場合は# 1~2のラインでは太刀打ちできません。# 4が欲しいところです。メーカーさん的にはごく柔らかい「オイカワ専用竿」と称するものが売られていたりしますけど、木枯らしを想定した場合は、もうちょっとしっかりしたものが理想です。どっちにしろ平均12cm、大きいもので15〜16cmくらいですから、どんなに細くても、竿がぐわ〜っと曲がるような「引き」が楽しめる魚ではないです。

「いやちょっと待って。そんな強風が吹いている冬の寒い釣り場だったら、オイカワ釣りの醍醐味である『水面での釣り』なんてできないのでは?」というご意見もあるとは思いますが、実は関東で言うなら東京、神奈川、千葉から南の「湧き水の川」「温排水の流れる川」「温まりやすいワンドの奥」などでは、真冬でも日中は羽虫が飛び交い、水面でのゲームが楽しめるところが少なからずあるのです。

 で、もうひとつ。河川環境にもよるのですが、中下流域の川というのは、砂利の広い河川敷か、川の中に入らない限り、後ろに葦原やススキがあるんですね。さらに手前に茂みがあったり、護岸で足元と水面にかなりの高さの差があったり。

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 つまり、引きが弱いなら硬くても短い竿で楽しみたい! と思っても、なかなか難しかったりします(とはいえ、やはり9フィート以上はつまらないです)。まぁ実用的には、中をとって7フィート半〜8フィートくらいでしょうか。実際は7フィート以下の方が面白いんですが……。いっぱい魚はいるので、短い竿で釣りやすい場所を選ぶとか、長靴を履いて川の中に入ってしまうのもいいかも、としておきましょう。

 さて、リーダーも強い風の中ではターン重視になります。7フィート半の6X(0.6号相当)が標準と考えていいでしょう。ちょっと太めですが、風でターンしない方が影響が大きいです。あまり強い風のない、普段の釣りでも7X(0.4号相当)までですね。リーダーは6Xのままで、先だけ結び替えてもいいでしょう。
 小さな毛鈎が見えにくいという人は、リーダーとティペットの結び目部分にごく小さいウキ(「糸ウキ」などという名称で売られているタナゴや小鮒釣りに使われるウキ)を通してからティペットを結んでおくと、どこに毛鈎があるかわかりやすくなります。いわゆるフライフィッシング用のインジケータは、ニンフフィッシングの際の「ウキ」ですから、大きすぎ、さらに風に弱いので却下です。

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 どうしても小さな毛鈎が見えないという方! ラインではなく、リーダーの方を見やすくするため蛍光黄緑のものにするという方法があります。が、昔は何種類か売ってたのですけれども、今は短い蛍光リーダーってあんまりないみたいですね。代替案としては、蛍光の油性サインペンでリーダーを着色するとか……(でも、あまり色がつかないんですよね、釣り糸って)。

 あとは「魚の視覚」のところで書いたように、グレーやアクアブルー、蛍光ではないグリーン……といったナチュラルカラーのフライラインが必須となります。カワセミやサギ類などの天敵がいっぱいいる川なら、なおさらオレンジや黄色は避けたいですね。
 派手ライン+ロングリーダーによる風トラブル多発は、絶対に避けたい。数釣りが楽しめる魚だからこそ、そう思います。渓流での釣りの練習だから、と言うなら止めませんけど(実際とてもよい実践トレーニングだとは思いますが)、オイカワで苦労していると、よほどの熱意がないかぎり、嫌になってしまいますよ。

●真剣に専用毛鈎を考えてみる

 で、毛鈎です。口が小さいので、小さい毛鈎と言いたいところですが、案外に# 16あたりでも釣れます。これには吸い込みやすい構造とともに、もうひとつ、面白い事実がありました。それは「そのとき食いの立つ色の毛鈎は大きめでもいいが、色が合わないとサイズを落とさなくてはならない」ということです。
 これがトラウト類のように、そのとき飛んでいる虫の色とリンクしていればいいのですが、オイカワの場合は別に、魚からの見易さや好みがあるみたいで、困ったものなのです。

 ということで、大きい毛鈎の方がよく見えるし、掛かった魚を外すのにも楽なんですけど、平均すると# 20に絞っていいのじゃないか?と思います。私自身は# 28まで使ったことはありますが、実用的なのは# 24までがいいところです。

 パターン的には、テール(尻尾)がないカディス(トビケラ)パターンが、吸い込みやすい傾向にはあるようです。ウイングにハックルファイバーを使い、ヘッドの後ろにハックルを巻いた「フラタリング・カディス」が基本ですかね。「エルクヘア・カディス」ならボディ全体にハックルを巻かない、下半分のハックルを切るなどの鈎がかりをよくする工夫が必要です。まぁ、ボディを作ったところへ浮力の強い素材(フローティング・ヤーンとか)を束ねて付けただけでも釣れてしまいます。
 水面に浮かせて釣る「ドライフライ」の色は薄茶、灰色、白は必須カラーですが、もう「各色用意しておいてください〜!」みたいな感じです。自作するなら、焦げ茶、薄茶、白、灰色、クジャク/黒、黄緑(ユスリカ成虫色)、赤(ユスリカ幼虫色)あたりでしょうか。水生昆虫で言えばユスリカとトビケラが手本ですが、先にも書いたように「当たりカラー」と「そのとき飛んでいる虫の色」が合っていないので、本当に釣ってみるまでわかりません。

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 あと、ぜひ用意しておきたいのがユスリカの幼虫や蛹パターン。とは言っても赤を中心に、白やグレーの糸でボディを巻いて、頭のところにミニオストリッチやクジャク(ピーコック)をくるくる巻きつけるだけのものです。流れのほとんどないワンドの奥などで、小さく波紋を広げているようなときには、コレを投げてゆっくりと引いて、手元に伝わるヒットの瞬間を感じ取るというのが最強パターンになります。風で波立って、なおかつリーダーがしっかり伸ばせず、水面に飛び出してくる魚の釣りがなかなか難しいときにも有効です。

 自作しない人は、エサ釣りの延べ竿で使う市販の毛鈎流し釣り仕掛け(飛ばしウキと5本から7本の毛鈎が付いている)から1本ずつ切り取って、ハリス部分を結んで使うのもOKです。浮くように作られたパターンではなくではなく、見づらいので、目印となる糸ウキとのセットや、手元でアタリ(食いついた感触)を感じ取るなどの工夫が必要です。
 自作派にはこの伝統毛鈎のパターンをフライとして再現する、なんてのも面白いですね。私自身も昔、目印のウイングのみ追加した伝統毛ばり各種を作ってみる、というチャレンジをやったことがあります。(了)

フライフィッシング入門:目次
https://note.mu/sakuma_130390/n/n85152b3ea6f3

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