雑談:海でフライフィッシング……?
正直、海でやった経験はわずかなんですが、マスの仲間のほか、海の小物釣りもできるんだよ、という雑談をひとつ。
海外の動画(リンク参照)を見ていると、もうなんでも釣ってるわけですね。カジキ、GT、ヒラマサ、カンパチ、マダイ、ヒラメ、シイラ、ブダイ、クロダイ、カサゴ/ソイ、モンガラカワハギ、ボラ……。工夫を重ねてアオリイカにチャレンジしている動画もありました。
日本でも釣り教室や釣り大会が行われる程の、スズキの仲間は当然ですけど、非常に多くの魚が対象となっています。
それでいて面白いのが、フライフィッシングの道具立ては「10cmくらいしかない川の小物釣りから超大物まで、太く、強く、頑丈になっていくだけで、基本的には何も変わらない」ということなんです。これ、とてもユニークですよね。わかりやすいといいますか。
もちろん毛鈎も、もともと日本には鳥の羽根を使ったバケやカブラといった疑似餌もありました。それを流用する、類似のものを作るだけでなく、フライフィッシングならではの創意工夫を重ねて、小魚は当然のこと、イカ、エビ、カニ、ゴカイ類、貝、さらには海藻(!)まで、なんでも作ることが可能です。
そうそう、ただ釣るだけなら関係ない話ですけど、国際的な記録を取っている釣り団体の規定では、サビキ仕掛けにあるような魚皮を使ったものは「疑似餌」ではなく「餌」になるそうです。
●気軽にできる小物釣り
防波堤から釣れる魚、例えばアジやイワシ、小サバ、メバル、セイゴ(スズキの幼魚)、メッキ(ヒラアジなどの幼魚)なら、川や管理釣り場の道具そのままで問題ありません。リールも基本構造がシンプルなので、帰宅したらバケツの中の水道水にザブッと数時間漬け込んで、隙間に入った塩分を流し出してしまえばいいわけです。その後でグリスアップすればよし。竿も海水対応ではないので、水洗い、金属部分の潮抜きを念入りに。
このクラスの魚を釣る毛鈎は自作のほか、サビキの疑似鈎をそのまま使う人もいます。最近ではメバルのルアーフィッシング用に作られた毛鈎もありますね。軽いフライラインでは、沈むもの(シンキングライン)を使ってもルアーのように5mも10mも沈められませんが、表層限定なら、軽くて小さい疑似鈎を25m以上飛ばせるのは、フライの釣りの特権かもしれません。
逆に考えて、フライとしてのキャスティングはナシにして、クロダイの落とし込み釣りのように「足元を釣る」方法もできますね。トラウトでもウエイトをたっぷり巻きつけた重い毛鈎で竿の直下を釣る釣りがあるのですから、それもまた良いかと思います。
小物と言えば、小さすぎて釣り上げることはできませんでしたが、鉛筆サイズのサヨリが小さなエビの毛鈎を追いかけて反転ジャンプするとは思いませんでしたし、川に入ってきたコトヒキの子供が十数匹で水面の毛鈎(超小型のポッパー)をチェイスするのは、小さなストライプド・バスの大群のようで迫力がありました(10cmくらいですけどね)。そんなのは見ていても楽しいです。
そういえば何かの間違いで東京湾にサンマの群れが入ってきたときに、やはりサビキ仕掛けの疑似鈎を毛鈎代わりに釣りに行き、みごと仕留めた人もいたそうで……。そう考えればなんでもアリです。
●湖用でどこまでできるか & その上は?
もう少し大きい魚、例えばサバやワカシ、フッコ級のスズキ、大きなボラといった魚を船や防波堤から狙うなら、湖用の6〜7番の竿とバッキングラインを多めに巻き込んだドラグの効くリールが必要でしょう。ここまでなら湖の釣り具で流用がききます。湾内で手漕ぎレンタルボートから、30〜40cm級のサバやソウダガツオとかが掛かったら、かなり楽しいことになるのは間違いないですね(立ち上がったまま投げるのはやめましょう)。
そこそこ大型のスズキやブリ(イナダ、ワラサ級)などが相手なら、8番のシステムは欲しくなりますね。このクラスになると、竿だけでなく、リールもディスクドラッグのものが必要になってきます。クリック・ブレーキだと、魚の疾走でギヤが削れてしまうものが出てくるので。
まぁ、ここまでのレベルなら、ルアーを使って湖や大きな川のトラウトを狙う道具で、どの程度まで海の魚が釣れるのか? を考えるのとほぼ同じ。なので、そのあたりの釣りをやったことがある、興味がある方ならわかりやすいかもしれませんね。
さらにその上=シイラやカツオ、ブリ、ヒラマサなら9〜10番でしょうか。さらに10kgを超える大物となると12番ですが、このクラスを振り続けるには、相当な腕力、体力が必要です(何しろこのクラスの魚を相手にする竿を片手で振るんですから)。
さらに実用的な射程はせいぜい40mなので、ルアーよりだいぶ落ちます。これは大前提。60mとか行けないこともないですが、そこまで飛ばしてみても、手でたぐるのが前提ですから手元の糸の処理が不可能です。
また水深も10mくらいまででしょうか。頑張って深くまで沈めてオヒョウ(巨大なヒラメ/カレイの仲間)を釣った動画もありましたけど、沈めるのに何分かかるのか、みたいな釣りです。
一方、磯から釣るのには手前の岩礁を越えられる長さが必要だということで、片手/両手兼用のスイッチロッドや、ダブルハンドの11〜15フィート(3.3〜4.5m)の竿を使う事例もあります。
この辺、日本のメーカーが振り出し竿で作ってくれれば、サブロッドとして持ち歩きやすくなるのですが、それはなかなか無理そうですね。磯竿の流用だとガイドリングの直径が小さく、遠投用の磯竿だとガイド数が少なすぎるのです(一応、投げることはできます。学生時代に小笠原へ行く予定で実験済み。ただし釣りは台風で中止)。
そうそう、海の釣りで必須のものがひとつ。それはラインバスケットです。ラインを砂まみれにしたくないですし、船の上で船具などに絡まる/磯で岩に絡まるトラブルを避けたいですから。さまざまなものが売られていますし、プラスチックのバスケットなどを使った自作派もいるようです。
私も百円ショップのグッズで作ったものがある(総額600〜700円くらい)のですが、テストがまだなので状態が良かったらまた報告します。
もちろんライフジャケットは忘れずに。事故の時の危険性は川の釣りの比ではありませんから。
●カジキのフライフィッシング
なお、13〜15番というシステムもありますが、これはもう、クルーザーでカジキを釣るような特殊な釣り方用の竿なので、遠投して魚を探るのは難しくなってきます。ただ面白い釣りなので、ちょっと書いておきましょうか。
一般的なカジキのフライフィッシングは、鈎の付いていないカジキ用のルアーをトローリングし、それを追ってきたカジキの目前でルアーと毛鈎をすりかえるのです。こんな用途なので遠投性能は必要がないのです(ただし一部地域のバショウカジキは例外で、冒頭のリンク動画にある通り、群れに向かって投げて釣ります)。が、そのとき船が動いているとトローリングになってしまってルール違反になるため、キャプテンは停船しなければなりません。
というように遠投する必要がないかわりに、息のあったキャプテンとティーザーマン(鈎なしのルアーをコントロールする人)のコンビ+クルーザーのチャーターが必須……です。その他のボートスタッフまで入れたら何人必要なのか、いくらかかるのか。
こんなことから、カジキのフライフィッシングは、トローリングの上をいく、「セレブの究極の娯楽」とされている釣りなのです。さらに、世界を回って7種いるカジキ類(諸説あり。なおフウライカジキ属は除く)を全て制覇するなんて達成するにはどれだけのお金がかかるのか? なんですが、実際にやっている人がいるわけで(ため息)。
* * * * *
このカジキの釣りは極端な例ですが、毛鈎の釣りはルアーほどの集魚力がありません。鈎をつけないルアーを引っ張ることで魚を寄せる、底から水面近くに誘い出すのはもちろん、生きたイワシや魚の切り身を撒くなどの寄せ餌も、普通に使われています。とはいえ気分的には、寄せ餌の使用にハードルがある人は多いかもしれませんね。
海外では、よほどの魚群がある場合や、寄せ餌に反応しにくい魚以外は、抵抗なく寄せ餌が使われているようです。また目的の魚ではなく、その餌となる小さなイワシなどを寄せる目的で餌を撒く例もあるようです。
あと、サビキ仕掛けのような枝鈎も、弱いながらも集魚効果がある、と思います。毛鈎1本では群れたイワシすら興味も持ってくれなかったことがあります。3本つけてやっと食ってきた……。次にアジ・サバ釣りの機会があるなら、サビキ仕掛けの一部分、枝鈎3本くらいを使って、先に沈みやすいように小さなオモリをつけてみようかな、なんて思っています。
手頃な対象魚が近くにいない、海辺にお住いの方は、是非に。
フライフィッシング入門・目次
https://note.mu/sakuma_130390/n/n85152b3ea6f3
フライフィッシング、および海川の小物釣り入門の実用記事を書いています。気に入っていただけたらサポートしてくださると励みになります。 (モバイル決済不可/note社経由したくない等の方はお問い合わせを。ギフト券などもご相談ください) もちろん出版企画は大歓迎します。