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AIに負けないレポート課題の出し方 その2〜AIとうまく付き合っていく?〜

前回記事で、chatGPTの登場により、大学でのレポート課題に対する学生の不正利用にどう対処すべきかを書きました。

しかしこれを書いた途端、下記のような、出典を明確にした、より精度の高いオープンAIがあることを知り、前回の記事内容がほとんど無駄ではと頭を抱えています。

上記リンク先によれば、この新たなオープンAIは、ChatGPTのように「うそ」を言うこともなく、また、ちゃんと引用元を明示した上で、回答をしてくれるのだそうです。

この新たなオープンAIの登場への対策としては、高校までであれば、「使わせない」という選択もあると思います。そのうえで、もしも使われることを想定するのであれば、「うまく付き合う」べきと考えています。そもそもテクノロジーの発展については、私はそれ自体は好ましいことであり、基本的にどんどん使っていけばよいという発想です。

しかしこれは、全てのテクノロジーに関して言えることだと思いますが、教育機関においてはそのバランスが難しいところですね。それに頼らないで鍛える能力が重要であったり、また上手に使いこなせるかは子供の発達段階によりますし、さらに、トラブルが起きないよう、その段階に応じたリテラシー教育も必要になります。

そうした対策を検討している間に、こうしたAIのようなテクノロジーはどんどん次の段階に行っている。超絶進化していっている。というところで、まあ本当に、小・中・高校の教育現場では大変になっていると思います。大学でも、ですが。

ただ、少なくとも前回記事で私が対策3として書いた「使用する資料を指定・限定する」は依然有効だと考えます。

要はこれも、対策の2との関連していて、根拠を元にして書けるかどうかについて、学生のアカデミック・ライティング・スキルを確認するものになります。また、参考文献を授業で用いた資料・関連資料に限定することで、授業の内容を理解しているかも、同時にチェックすることも目的となります。
良質な資料を自分で探したり、選ぶことがまだ難しい学生に、あらかじめこちらで資料を指定してしまうことで、その手間を省いたり、良質な資料がどのようなものか理解をしてもらう、という意図もあります。

レポート課題の規定字数を少なく課す場合は、厳密に引用明記をさせることが難しく(字数が増えてしまう)なります。そうした場合に、引用明記をさせずとも、ネット記事コピペを見抜くことが容易になるというメリットもあります。これも、AI対応へと応用ができるかと。

AIに負けないレポート課題の出し方|桜井政成研究室(出張所) #note https://note.com/sakunary/n/n849fb71241f9

この3の発展形・応用として、「査読論文だけを引用してレポートを作成せよ」というようなレポート課題の出し方もあり得ると思います。つまり、有象無象の資料を何でもありでレポート執筆に使わせずに、良質な資料とは何であるかを示した上で、使用可能資料をそれらに(やや広めに)限定する、というやり方です。

また、別の方策で、授業内容の理解を測るためのミニレポート課題の例として、「授業の内容に関して、他の人と話をしなさい。そして、その話した内容と、それを踏まえて自分の考えがどう変化したか書きなさい」というような、リアルタイムな情報を書かせるという手もあるかと思います。

この「友だちの話」は、一次情報であれば何でも応用させられることが出来ると思います。例えば、どこどこへ言って聞いた話をまとめ、それをある観点から考察しなさい、みたいな。ネットの情報が全てではなく、一次情報の重要性を理解させたいときや、社会調査の練習目的に使えるのではないかと思います。

要は、前回記事で書いたように、基本的な思想は、「受講者のAI利用可能性を織り込んだうえで、評価したい学力・能力を適切に測れるよう、入り口(レポート課題の設定)のところで適切に設計しておく」ということのままで変えずに、ある程度対応可能なのではないか、と考えるわけです。

しかし、大学で「うまく付き合う」としたら、それだけでは不十分ではないかとも思います。これではAIと「付き合っている」とは言えず、その好意に気づいているのに無視している片思いの思われている側…いや、例えがあまりよくないですね。言いたいのは、これらの対策は、AIを無視する方法に過ぎない、からです。

前回の記事の最後で冗談気味・ぼやき気味に書きましたが、私は結構本気に、AIが発展すれば、それがレポートや論文などのアカデミック・ライティングの有効なサポートツールとなり得ると考えています。テクノロジーは常に、学術的営為を支えているのです。

例えば今や、Google Scholar(論文検索サイト)なしに先行研究の収集はできません。翻訳ツールも、言語の勉強中には使わないほうが良いのですが、大量の英語論文を読むのに私はもはや欠かせなくなっています。もっと言えば、Wordなどのライティングソフト無しに文章を書くなんて、学生でも今や考えられないでしょう。

ですからもし、PerplexityのようなオープンAIが今後さらに進化するのであれば、その機能を前提としたレポート作成、レポート課題設定を考えてもよいのではと思います。例えば、研究、あるいはレポート課題の背景となる情報はある程度そうしたAIで整理をしてしまってよいこととし、オリジナリティある部分は自分で書かせるという手です。

そもそもアカデミック・ライティングは、そうした新たな知の創造を意図したものです。「既存の知の整理」を外部の脳みそ(AI)がやってくれるのであれば、それだったら、脳みそに汗をかいて労するのは、もっぱら、オリジナリティある部分に特化してしまったほうが効率的ではないかと思うのです。

ただし今のAIがそこまで発展しているわけでは有りませんし、またそうしたサービスが出来ているわけでもありません。今後に期待ですね。


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