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孫をエサで釣る方法

 お泊まりの子供たち(孫①と②)が帰った午後、家の中は静まり返った。

 台所を片付けた後にどっと疲れがでた私は、心配する夫にことわりを言い、自分の部屋でお気に入りのBGMで眠りにつく。

 小一時間も経っただろうか、身体の火照りも取れて部屋を見渡す。小さな部屋が妙に寂しい。さっきまで小学2年生と4年生の男子二人が、椅子から床へベッドへと飛び降りして賑やかだったのが脳裏をかすめる。何ヶ月振りかでお泊りの二人は、ちょっと見ない間にずいぶん成長していた。

 孫①の遅まきながらの誕生祝いもあり、子供たちに聞いた好きなもので夕食を作っていると孫②がお手伝いをするという。

「じゃぁ、その玉ねぎをこの中にいれてね」

 輪切りにしてバラバラに外した玉ねぎをビニール袋に入れさせてまんべんなく味付けしたお粉をつけさせる。

「それから?」
「その玉ねぎをひとつひとつこの中にいれてね」
「手でしてもええん?」
「もちろん!手でね」

 卵とお粉のタネに玉ねぎをひとつ手で入れる度にシンクで手を洗うので、一向に進まない。

「これどないするん?」
「これはね、あんたの好きなオニオンリング!」

 流石にまだ油で揚げることまではさせられない。

 揚がったオニオンリングを網のバットに並べて
「食べていいよ♪」
「ホント!」
「熱いから気をつけてね」

盛り付けしたもの

「おいしい〜!」
「でしょう!」

「つぎは?」
「次ね、じゃぁ、トマト!」
「トマトで何するん?」
「サラダにしよう!」
「どうするん?」

「そのトマトをボールにいれてね」
 一口サイズに切ったトマトにモッツアレアチーズとミジンに切ってさらした玉ねぎを入れさせ、岩塩と胡椒をカリカリさせてオリーブオイルをたらり。

「見ててねぇ〜♪」
ボールをシャッシャと上下させてトマトと中味を混ぜ合わせると孫②の目が光った。
「味見する?」
「うんッ!」

盛り付けしたもの

 トマトを頬張るや否や片手の親指を立ててグー!の合図!
「どう?」
「イケるッ!」
 顔が弾ける。

 そうこうして、チキンナゲットにオニオンリング、ステーキにトマトサラダ、焦がしバター醤油味の枝豆、お赤飯などなどテーブルに並べさせ
「じいじも呼んできて♪」

 みなが揃ってお食事開始。

「こんなに作って誰が食べんねん」
と心配するじいじをよそに孫たちの食べること食べること!

 最後に残っていたオニオンリングもトマトサラダも孫②が完食!自分で作ったからかしら?あまり食べない子なのに喰い付きが違う。

 あくる日、お昼ごはんを食べ終えて帰る子供たちに
「また来てね♪今度は、孫①の握りにしようね!」
孫①には早くから握り寿司を教えていた。シャリコマで結構上手くできる。

「うん、また来る!」

 お寿司もリクエストに入っていたけど、ステーキには合わないので準備をしていず、
「グランマ、お寿司は?」
と突っ込まれていたのだった。孫①の握りをエサに次回の約束を釣るグランマでありました。

(2014年記)

追記
 2014年 小学2年と4年の孫たちは、今年2023年 高校2と大学生となり、今でもラインで
「行っていい?」
と聞いてくる。
 今はもうご馳走のオンパレードは作れないけれど、思い存分食べられるように「銀の皿」の配達を頼んだり、先日は「うどんすき」のリクエスト。次には「焼肉が食べたい!」と言って帰った。
 身長170cmはゆうに超えるほど大きくなった孫①と②、まだしばらくはエサで釣れることが判明。

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