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4月馬鹿

「もしもし、こちら電話局ですが、新築されたマンションに電話を引いていただきありがとうございます。つきましては、ビル全体の通電確認をいたします。少々埃が出ますので、気になる方は『電話器』に、ビニールでもおかけください。では、今から30分以内で終了いたします」

 たいそう真面目な声を取り繕い、親しくしていたマンションの友人宅に次々と電話している夫。コーポラティブマンションに入居して初めての四月馬鹿。

 今はもう他界されたその友人は、家に人を招くのがお上手で、休みともなれば大勢で押し寄せたものだった。
 その日も日曜日、真っ昼間から誘われて行くと電話器にビニール袋が。

「え?なんでこんなことしてるん?」と夫。

「あゝ、電話局から電話があったんや。じぶんとこはなかったか?」
三三五五集まった人々も次々『ウチも』『ウチも』と。

 ニタニタ笑う夫の顔をみて

「あぁ〜じぶん〜!やったなぁ〜!」
(その友人は相手のことを『じぶん』というクセがあった。酔うとなおさらに)

 それからというもの、夫の仕掛けるエープリルフールをまんまと騙される年が何度かあり、それをネタにまた飲み会が続く。ほぼ50年前の話。


 懐かしいよね『た〜さん!』、そっちでもみんなでわいわいやってるのかな?お友達もずいぶん増えたでしょ。呑みすぎないでね〜私たちが逝くまでは。


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