境っ子の意見 その1―武蔵野市に選挙カー禁止条例を!前編

後編はこちら

うるさい迷惑だと批判が多いにもかかわらず、選挙カーが堂々と走る。
素人の苦情なんか無視してしまえと言わんばかりに、
多くの候補者は自分たちの都合を押し付けてはいないでしょうか?

たぶん大多数の人が良くない印象を持っていて、
一部かなり毛嫌いしている人もいる選挙カー。
一方で大多数の政治家が選挙カーはどうしても必要だとおっしゃいます。
でも少なくとも武蔵野市の場合は、
参院選以外は一律禁止しちゃっても影響は無さそうに思えます。

よくありがちな反論は、公職選挙法のせいで出来ることが限られる、
限られた手段の中で明らかに選挙カーは効果があるし仕方がない、
データでも証明されているから、選挙カーを使うのが賢い戦い方だ。
実はこの主張にも穴があります。

まずおさらい。
基本的に選挙カーには、候補者の知名度を上げる効果しかありません。
連呼行為(候補者の名前やキャッチフレーズを繰り返し叫ぶ行為)
しかできないため、政策や候補者の力量等はほとんど宣伝できません。
つまり、有権者が投票先を選ぶための判断材料を出せないわけです。
有権者の役に立っていない、なのに迷惑。
この時点で、選挙カーの擁護はかなり難しくなるのではないでしょうか?

(参考)連呼行為についての参考資料

公職選挙法の条文(140条あたりです)
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC1000000100_20180601_428AC0000000094&openerCode=1

条文の日本語がちょっとややこしいので、解説記事もいくつか。

【世にも“奇妙な”公選法】一体なぜ!? 連呼しつづける選挙カー | 選挙を知ろう | NHK選挙WEB
https://www.nhk.or.jp/senkyo/chisiki/ch18/20160625.html

しつこく名前を連呼する「選挙カー」 住民は「静かにして」と要求できるか|弁護士ドットコムニュースhttps://www.bengo4.com/c_1012/c_1110/n_533/

走行中の選挙カーは選挙運動NG?どんな行為が公職選挙法違反になる?
https://news.allabout.co.jp/articles/o/22529/

確かに、選挙カーを使ったら効果はあるという調査はいくつかあります。
ただそれは、
選挙カーを使った場合と使わなかった場合を比較すればという話。
選挙カーを使った候補者のほうが有利だとしたら、
全員一律に禁止しちゃえばいいだけのことです。

(参考)選挙カーの効果に関する調査とか意見とか

選挙運動が有権者の心理に及ぼす効果 候補者への好感度は高めないが投票には向かわせる | 2017年の報道発表 | 関西学院 広報室
https://www.kwansei.ac.jp/press/2017/press_20170407_015918.html

選挙時の街宣車放送をめぐって
https://www.sss.fukushima-u.ac.jp/~nagahata/research-j/election/index.html
公職選挙立候補者の考える街宣車放送の効用について
https://www.sss.fukushima-u.ac.jp/~nagahata/research-j/election/N-2007-14.pdf
育児中の母親は選挙時の街宣車放送をどのように聞いているかhttps://www.sss.fukushima-u.ac.jp/~nagahata/research-j/election/N-2008-20.pdf

さて、知名度について突っ込んで考えてみましょう。
その前に、武蔵野市の選挙について整理します。
衆議院議員選挙、都知事選挙、都議会議員選挙、市長選挙。
この4つは1名だけを選出する小選挙区制が採られています。
参議院議員選挙、市議会議員選挙。この2つは大選挙区制です。

小選挙区制と大選挙区制の違いについて書き出すと長くなりますが、
ここでは政治学の教科書によく出てくる
デュヴェルジェの法則について取り上げます。候補者数は、
だいたい選出人数+1になっていく傾向がある、ということ。
たぶん都知事選挙だけはこの法則が効いていないような気がしますが…
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%A5%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%81%AE%E6%B3%95%E5%89%87

何が言いたいかというと、
候補者が少なければ誰が出馬しているかはすぐ分かるでしょう、と。
例えば3人しか立候補していなかったら、
3人とも名前の苗字ぐらいはだいたい分かりますよね?

投票所には候補者の名前が貼りだされているので、
一字一句暗記する必要もありませんし。

都知事選挙は特殊で、マスコミの影響力が強すぎて
選挙カーで戦局をひっくり返せるものではありません。
つまり、小選挙区制の選挙なら選挙カーに頼る必要が無いわけです。

一方で大選挙区制のふたつ。

市議会議員選挙ですが、
候補者が多すぎて選挙カーで宣伝しても埋もれてしまいます。
しかも、市議選は選挙カーの台数が多いので被害が甚大。

もっと言うと、候補者が多いので票が割れます。
武蔵野市なら約1300票で当選しそうです。
この数字なら、選挙カーに頼らなくても戦えるはず。

近隣のイベントとかボランティアなどで地域に精力的に貢献すれば
市議選当選レベルの知名度も信頼も十分に勝ち取れるはずです。
実際に日頃から地域に貢献していて、地元の議員さんよりも有名な人、
武蔵野市にいっぱい居ますよね?

しかも、武蔵野市は全国で11番目に小さい市。
本気で頑張れば市の全域で有名になれるはずです。

残ったのは参議院議員選挙。これだけは、選挙カーを無くしたら
何かしらの影響は出そうです。さすがに選挙区が広くて候補者も多いと
大変だというのは理解できます。
ただ、良識の府たる参議院に挑む政治家が
選挙カーで迷惑かけつつ知名度をかさ上げするのはいかがなことかと。

そもそもですが、小選挙区制と大選挙区制とで戦い方が違うのは
選挙に関わる人にとっては常識中の常識のはずです。
ここの区別もせずに闇雲に選挙カーを回したり
必要だと主張しているという点だけ見ても、
選挙カー擁護論はいい加減だなと思います。

さて、今回は選挙カーを使う利点?について切り込んでみました。
選挙カーには知名度を向上させる効果しか無く、
有権者に有益な情報をもたらせていない。
しかも、武蔵野市の場合は参議院議員選挙を除いて
知名度向上のために選挙カーに頼る必要は無さそうだということです。

次回は、選挙カーのよろしくない点についてつらつら書いてみます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?