⑵楽譜解釈を実践しよう!


今回も『新版ソアレスのピアノ講座 演奏と指導のハンドブック』のまとめ記事を書いていきます。


第2回は、楽譜の解釈に必要なポイントについて、具体的に書いていきます。

この本では以下の4つあげられています。

⑴リズム、ハーモニーとメロディの関係
⑵アーティキュレーション
⑶デュナーミク(強弱)
⑷形式

順番に見ていきましょう。



リズム、ハーモニーとメロディの関係

Q1. この曲は何拍子だろうか?

今弾いている曲が何分の何拍子か、2拍子か3拍子か4拍子かによって、自然なスウィング(揺れ)が異なります。
作曲家がなぜこの拍子で作曲したのかを考えてみましょう。


また特に注意したいことは、「重要なハーモニーは基本、強拍にある」ということです。


そして突然のアクセント(強拍)の変化であるシンコペーションは、いつも特別に考えましょう。




Q2. メロディ中の和声音と非和声音の見分けができているだろうか?

①弱拍にある非和声音は、あまり目立たせず軽く響かせましょう。
(経過音・刺繍音・先取音)

②強拍にある非和声音(倚音)には、常にアクセントをつけます。

③掛留音は、後に続く和音を丁寧に鳴らしましょう。

④バッハの時代までの保続音は、クライマックス感を高めるために使われているため、やや強調しましょう。
対して古典派以降は、不安定さや消極性を表しています。音色は柔らかめに響かせましょう。



Q3. このカデンツはどの終止形にあてはまるだろう?

①完全終止…不完全終止にくらべて、少し柔らかく、やや遅く弾きます。


②半終止…完全終止にくらべると、緊張感をもたせた弾き方になります。


③偽終止…あとにくる完全終止の感じを高める効果があります。
特に低音に注意して、poco rit.したり、音に少し重みをかけて弾きます。


☆同じ完全終止でも、それぞれの調性を生かした表現というものを考えてみましょう。


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Q4.楽曲中の 韻律(拍節法)を把握できているか?

韻律とはおもに詩の用語で、繰り返される一定の規則のことを指します。
拍節とは、楽曲中の規則的なまとまりのことです。
(楽曲の重要なパターンの1つで、同じモティーフを繰り返し、ハーモニーだけが変わっていくというもがありますが、これが詩で言うところの韻律にあたるわけです。)


モティーフを繰り返すことにより、曲全体につながりや統一感をもたせています。

J.S.バッハのインヴェンションは、カデンツを境にして3〜4つの拍節に分解できます。




アーティキュレーション

『全ての記号において大切なのは、ひとつひとつの記号に対する絶対的な弾き方、絶対的な意味というものはないということです。ひとりひとりの想像力によって、全部異なった音色になるのです。ですから、より創造的な演奏をするためにも解釈をしなければならないのです』(p46)


①レガート

レガート奏法では、音符の長さに注意し、よく響かせることを意識します。

また、音を重ねていくと同時に、そこに微妙なcresc.やdecresc.をかけ、旋律にふくらみをつけることで、レガートにすることができます。
(さらにレガートがほしいときは、音を重ねる時間を長くします。)

ペダルは、音が重なる瞬間にふみかえます。
こうすることで濁らせずに旋律をつなぎ、歌うように弾くことができます。


②スタッカート・ノンレガート・ポルタート

どれも記譜されているより音価よりも短く弾く記号です。
スタッカートが一番短く、ノンレガート、ポルタートの順に少しずつ長くなります。
(ポルタートはレガートに近く、メロディックなニュアンスを含みます。)

スタッカートにもいくつか段階があり、「軽やかさ」が求められている場合や、「アクセント」を意味する場合もあります。

加えてタッチの仕方によって様々な音色が可能ですから、解釈の仕方によってその場面にあったものを選択することが必要です。


③ⅰ二音間のスラー
 ⅱため息のアーティキュレーション

ⅰスラーのかかった2つの音と、次の音の間はノンレガートになります。
また長い音符と短い音符がスラーで結ばれている場合、短い音符の方を弱めに弾きます。

ⅱ 倚音から和声音にかかるスラーには、
『倚音にアクセントをつけて、和声音は力を抜いた状態で軽く弾く』という意味があります。




④アクセント・テヌート

1曲の中で様々な種類のアクセント記号が使われているときは、作曲家がそれぞれの記号に違ったニュアンスを求めていたということなので、それぞれの意味の違いについて考えてみましょう。

アクセントが「シャープな音で十分に保つ」という意味で使われたり、sfが「そこまで盛り上がってきた頂点」という意味で使われることがあります。

古典派に多くある用法で、rfは、sfと違いその音だけではなくその周辺が前後に比べて強調される場合に使われます。




デュナーミク(強弱)

①アーティキュレーションの考え方と同様、絶対的な大きさというものはありません。
②強弱記号が、大きさ以外の意味を含んでいることがあります。(事例ⅰ〜ⅳ)

ⅰ pでも弱く弾かない場合
   テーマ部分のpをよく響かせたいので、「弱い」という印象はもたないという場合。

ⅱさまざまな意味をもつfの記号
  「非常に明るい音色」としてのf、アクセントとしてのfなど。

ⅲ tuttiとsoloという意味のfとp
 ♪イタリア協奏曲  
   (音量の変化だけでなく『トゥッティはオケのような統制のとれたリズムで、ソロは多少のルバートをともなって演奏する』といったアゴーギクの変化をもたせたり、音色の変化をもたせることもできます。)


ⅳ ロンド形式の各部の強弱記号の違い
  ♪『ワルトシュタイン』ソナタの終楽章
   (A部分はpp、B部分はffと形式面のデュナーミクを持っていますが、音量が豊かで力強いB部分の中にあるpは、A部分のpとまったく違うということを認識しなければなりません。)

《終楽章は14:14から》



形式

曲がどのような形式なのかにより、解釈はかなり変わってきますが、
どの形式も、アイデアの「繰り返し」「変化」「相違」「対照」などの要素が関わっています。

それぞれの時代によって、考え方に以下のような特徴があります。

ルネサンスの音楽「変化」
バロック「繰り返し」
組曲  「相違」
古典派 「対照」

古典派の代表的な形式としては、ソナタ形式があげられるでしょう。

ソナタ形式は、複数のテーマや部分ごとに「激しさ」と「優しさ」などの対照的な個性をあたえ、それらを対立させたり融合させたりして作られています。
(ソナタ形式の基本型を暗記しましょう。
基本型がわからなければ、数多くある変則的なソナタの解釈はできません。)


最後に、ソナタ形式の各部分間の性格的な違いを出す工夫をあげていきます。


①テーマと推移部では重みが全く違うため、異なる弾き方をしましょう。
テーマには存在感をもたせ、推移はつなぎですからそれほど存在感は必要ありません。


②第1テーマと第2テーマは、2人の人物が対立する意見をそれぞれ述べる様子に例えることができます。
(オペラからの流れで、第一主題は男性、第二主題は女性を表しているという捉え方もあります)。

第2テーマに入ったときには、第1テーマと異なる性格、別の内容をあらわしている、ということをはっきり示す特別な変化が必要です。
(具体的には、音質の変化、フレージングの作り方、アーティキュレーションの変化を用います。)


③展開部のpと再現部のpでは、曲の形式の中での場面が別なので、同じ記号でも全く違うものと考えましょう。





次回は、頭の中で想像した音楽を楽器を使って表現するために、自分の身体を道具としてどう使ったらよいのかについて書いていきます。


今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございます!


さくら舞🌸



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