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新サービスは、過去5年間のM&A事例から読み解き、導き出せる!? メディア事業で成長をしてきたスタートトゥデイ・クックパッド・アイスタイス・じげん・オークファンが今後買収したいサービスとは。

基本情報

各社2016年度の売上高・営業利益は以下の通りです。
ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイの売上が76,393百万円と他企業と大きく差を開いています。また営業利益率も高く、高収益事業だと分かります。


子会社化件数

2013-2017年の5社の子会社化件数は合計27件です。
過去調べてきた中では売上規模の割に積極的に買収意図があるように思います。市場規模も大きく、圧倒的No1であるメディアであれば高収益が保てますが、1メディアだとシェアの拡大だけでは売上のアッパーがくるため、水平・垂直展開が基本であり、その一環でシナジーの高いサービスを買収することが多いのだと想定しています。


企業別調査

1.スタートトゥデイ

ファッション通販サイト、ZOZOTOWNで成長を加速させてきたスタートトゥディ。今後の市場拡大戦略として、IRに以下の内容を載せていました。

ZOZOTOWNで獲得したユーザーを、メディアで囲い込み、購買喚起をさせ、ZOZOTOWNでの購入頻度を上げる。また年齢層も若い人が多く、常に新しいものを買うことは金銭的に難しいため、二次流通を活性化させ、中長期的視点を持った購入金額を増加を見込むことが出来ます。
また今後、購買データ活用による初のPB(プライベート・ブランド)の立ち上げを強化していくようです。

直近5年間の子会社は以下となっています。

サービス名 | サービス概要 | 金額(百万円)
-----------------------------------------------------------
■ 2013年
プラケット | オンラインストアがつくれるサービス | 650
 ※2016年にMBO
■ 2014年
ヤッパ| 電子雑誌を揃える書店サイト | 920
 ※株式会社スタートトゥデイ工務店に社名変更
■ 2015年
アラタナ | ECサイト開発・運用サービス | 2910
■ 2017年
IQON |ファッションメディア  |非公表

子会社構造は上記のようになっており、今後進めていきたい事業の開発基盤を買収によって獲得したようです。

また今月19日に子会社化の発表があった「IQON」を手がけるVASILYに関しては、市場拡大戦略にあったWEARと同じメディアに分類されるものであり、複数メディアによるユーザーの囲い込みは今後も強化されていくと思われます。
よって、ファション系メディアの買収は今後も検討されるはずです。

2.クックパッド

クックパッドといえば、2016年に世間を賑わせた、創業者で筆頭株主である佐野陽光取締役と、穐田社長(当時)を中心とする経営陣の対立のニュースが記憶に新しいと思います。2016年を堺に買収方針も異なっているので、それを踏まえながら考察をしていきたいと思います。
現在クックパッドは、「毎日の料理を楽しみにする」という企業理念に基づき「料理」の課題解決につながる事業・サービスへの集中を進めています。
上記の事業方針の変更によって、変更前に買収していた企業を含め、国内に関しては、生活関連領域のグループ会社11社、他3社の計14社を売却を実施しました。
また海外に関しては、英国のCookpad International Ltd.を海外事業の全てを統括する第二本社と位置づけ、レシピ事業に関する知的財産を集約させると共に、 海外事業の持株会社化を実施しました。

直近5年間での子会社化は以下となっています。

サービス名 | サービス概要 | 金額(百万円)
-----------------------------------------------------------
■ 2013年
コーチ・ユナイテッド | 個人レッスンのマッチングサイト | 1,000|
ALLTHECOOKS,LCC | アメリカのレシピサイト | 512 |
■ 2014年
DAPUR MASAKPTE.LTD | ユーザー投稿型のレシピサイト | 61 |
セレクチュアー | 衣料・キッチン用品・雑貨のオンラインショップ | 550 |
Netsila S.A.L. | レシピサービスの開発及び運営 | 1,393 |
■ 2015年
みんなのウェディング | 結婚式場の口コミサイト運営事業 | 2,865 |
日本テクト | 産婦人科を通してママ・ベビー向けのサービス提供 | 非公表 |
■ 2017年
 オフクセ・ルー|ロシアの料理情報サイト | 非公表 |
多多開ホ(dodocook) | 台湾のレシピサイト | 非公表 |

また今後の投資に関する考え方も共有していたので掲載します。

2016年を堺に以下の点が変わったと言えるでしょう。
①領域の拡大によるARPU増加を進めない
前穐田社長の時は、クックパッドで獲得したユーザーをターゲット層に、生活領域のサービスを複数展開し、売上を伸ばす計画だったようですが、今後は「料理」に絞って事業展開を行い、やるからには市場NO.1を目指す経営方針に変わったようです。
ただし1ユーザーあたりの売上を上げるという点では、クックパッドの利用者である6300万人をどれだけ有料会員数に出来るかは考える必要があります。
またアプリ利用者が15%しかおらず、スマートフォンブラウザが60%、PC利用者が20%という点は驚きであり、有料会員の料金がアプリの方が120円高いことから、アプリの利便性を高める動きは強まると思います。

②海外展開の加速化
佐野社長は5年後に100ヵ国でNO.1の料理レシピサービスを作ることを目指しており、まずはユーザー獲得を優先させて積極的にM&Aをしていく形を取るでしょう。その結果2017年にも2社海外のレシピサイトの買収がありました。

③料理に関する新規事業を進める
クックパッド料理教室や人気レシピの商品化などはその典型的な例でしょう。

以上クックパッドの今後の戦略は以下3点に集約されそうです。

1.利用サービスの領域拡大を進めるのではなく、アプリ利用率を高め、有料会員数を増やす
2.海外のレシピ系サービスをM&Aし、市場NO.1を目指す
3.料理に関する新規事業を進め、「毎日の料理を楽しみにする」というミッションを達成する

よって、イグジットを考える場合は、まだ買収がされていない海外のレシピサイトを立ち上げる、もしくは料理にドメインを絞ったサービスを展開することが大事になりそうです。
最近流行っているKURASHIRUといった動画レシピサービスに対抗し、
国内料理動画事業も立ち上げていることから、動画への関心も高いと見込めます。

3.アイスタイル

アイスタイルは、@cosmeを運営する会社であり、1999年に設立されました。EC事業から始まり、現在実店舗での販売、PBの発売、海外への進出等サービスも多岐に渡ります。2016年に「中期事業計画 Road to 2020」という中期計画を策定し、直近の4年間どう会社を成長させていくかを規程しました。
その資料を参考に直近どういった企業を買収していくのかを考えていきたいと思います。
まずは、過去の子会社一覧です。

サービス名 | サービス概要 | 金額(百万円)
-----------------------------------------------------------
■ 2014年
ビューティー・トレンド・ジャパン | 定期頒布型サンプルEC |非公表 |
■ 2015年
メディア・グローブ |美容業界特化のメディア支援 | 非公表 |
■ 2016年
Eat Smart | メディア・コンテンツ・システムソリューション事業 | 非公表 |
■ 2017年
Hermo Creative(M)Sdn. Bhd. | 美容・化粧品のEC事業運営 | 1,470 |
艾思網絡股?有限公司(台湾) | 化粧品クチコミサイト「UrCosme」 | 非公表 |
MUA Inc.  | 美容・化粧品のクチコミ・サイト「MakeupAlley」 | 1,000 |

2017年は、世界中の美容に関する情報を集約したGlobal One Databaseを構築するため、海外サービスの拡大を進めました。
今後の買収意図を知るためにも、「中期事業計画 Road to 2020」を見ていきたいと思います。

中期戦略としては、大きく3つが記載されています。
この戦略を理解するためには、そもそもアイスタイルは何を目指しているのかから知る必要があります。

アイスタイルは「Beauty×ITで想起される世界で一番の会社になる」ことをミッションにおいています。
そのために、BeautyPlatformの構築を推進していくようです。これは、美容に関わるすべての情報にIDを振り、つなげる(ネットワークする)ことで新たな美容情報の基盤を作ることを意味しています。
@cosmeというECサービスにおいて、ユーザー(生活者)と化粧品を扱うブランドメーカーとの接点を創出し、自社でのオフライン店舗出店を行い場所を抑え、化粧品以外のサービス(エステサロン、ネイルサロン)展開を進めているアイスタイルだからこその実現性の高い構想となっています。

よって、中期戦略として記載していた3点を強化することは目指すべき姿の達成には必要だと感じます。
①@cosmeを基盤とした収益構造の強化
を行い、ユーザー1人当たりのARPUを高めます。そのためはECサイトや予約サービスのCVRを高める必要があり、AIによるマッチング精度の向上、提供の情報パーソナライズ化が大切となります。

②化粧品小売店に続く美容関連事業への進出
を行い、商品情報のカテゴリー及び対象となる美容サービス事業者の拡大を進めます。そのため、食品・医薬品メーカー及びサロン事業者や美容のプロなどに事業者向けID(BID)を発行し、ユーザーとの接点を促進する必要があり、この事業者向けIDがどれほど浸透させれることが出来るかが成長のキーになると思います。

③海外への本格進出
を行い、「Beauty×ITで想起される世界で一番の会社になる」というミッション達成のため、世界に仕掛けていきます。
市場としても、日本の「美容・パーソナルケア製品の市場規模」は約2兆円で停滞しているのにも関わらず、世界の「市場」は10年間で2倍以上に成⾧することが予測されており、美容先進国である日本の技術やサービスをアジア圏に展開することでさらなる事業成長も期待出来ます。

M&Aという観点でいうと、2018年以降は活発化される見込みではなさそうです。ただし、2017年にアトリエはるかと資本業務提携があったように、化粧品専門店以外のリアルの顧客接点を構築することが出来るサービスの子会社化、海外サービスの買収は引き続き行われそうです。

4.じげん

じげんの社長である、平尾丈氏は学生時に2社起業、リクルートグループ最年少代表取締役社長に就任したアントレプレナーとして有名な方です。立ち上げ当時は、リクルートが得意とするようなBtoBtoCメディアが世の中に乱立していており(今もでしょうか)、それを一つ一つ登録や見ていくのは面倒くさいという課題に対して、〇〇EXといった、さまざまな1業界のサイト情報を一手に集約した特化メディアを立ち上げ、会社を伸ばしてきました。
現在は、人材領域・不動産領域・ 生活領域(自動車や旅行)という市場規模の大きい3つの業界に対してサービスを展開しています。
以下、過去の子会社化の一覧です。

サービス名 | サービス概要 | 金額(百万円)
-----------------------------------------------------------
 ■ 2014年
インターキャピタル証券 | 証券業 |57 |
ブレイン・ラボ | 人材紹介会社向けコンサルティング |1,170 |
リジョブ | 美容ヘルスケア業界の求人サイト |1980 |
■ 2015年
エアロノーツ | モバイルメディア、メディア&ソリューション事業 |250 |
■ 2016年
エリアビジネスマーケティング | サイト制作事業、集客運用コンサル |300 |
三光アド | 新聞折込求人広告の企画・制作・発行 | 3,110

過去買収してきた企業は、必ずしもスタートアップ企業のような急成長企業ではありません。買収後は、社内の経営人材、経営ノウハウを活用し、グループ会社のPMIを強く推進しています。
基本的に、事業領域である3領域にてサービスを展開しており、買収金額としても安く買える、インターネットによる改善余地の高い会社を買収し、自社のアセットによって、V字回復させる手法を得意としています。

結果、2015年3月期取得3社の営業利益は、買収前の2013年度と比較して直近で約4.5倍に増加という実績もあり、買収としてうまく成功させていると言えるのではないでしょうか。


じげんが今後買収をする可能性があるサービスを考えるために、どういった方向性を目指しているのかについても、考察していきます。

どのような産業にもサプライチェーンが存在します。
例えば、小売業界だと川上から製造→卸・流通→販売→消費という流れが存在しており、消費者と直接接点を持つ大資本のコンビニやSPAが川上から川下まで一気通貫で担うことで業績を上げています。
しかし、情報産業において、コンテンツ生成→流通(検索エンジンetc)→再構築(解析/配信)→行動変容といったサプライチェーンが存在するにも関わらず一気通貫でサービスを展開出来ている企業は少ないのが現状です。
そこで、現在数メディアを運営し、ユーザーとの接点が多いじげんがそのサプライチェーンの垂直統合を目指すと発信しています。

その結果2016年に買収があった、サイト制作の会社であるエリアビジネスマーケティングや新聞折込求人広告の企画や制作を行う三光アドが買収先として選ばれた理由もよく分かります。

先程記載したサプライチェーンの垂直統合に加え、既存領域のサービス多様化、新規事業の展開も進めていくとあります。

既存領域のサービス多様化という点で、求人広告市場・不動産広告市場における新しいビジネスモデルのメディアを立ち上げは今後も続くと思います。

新規事業の展開については、未だ注力が進めれていない生活領域のサービスがメインとなり、中古車輸出プラットフォーム「Car-Tana(カタナ)」のローンチを含め、中古車アグリゲーションメディア以外の事業機会を検討されるとのことです。第三の収益源となるよう生活領域のサービス買収も今後は行われると想定出来ます。

5.オークファン

aucfan.comというサービスをご存知でしょうか。ヤフオク!、楽天オークション、モバオク等複数のネットオークション情の商品を価格比較・相場検索出来るサイトになっています。じげんの〇〇EXと似たような構造ですね。
月間1,300万UVとかなり多くのユーザーに利用されています。
また事業領域としては、大きく3つの分野を持っています。

・BtoCとなる商品相場比較サイト(aucfan.com)の運営
・BtoBとなる卸・小売・メーカー向けの在庫販売支援(売買の場の提供)
・BtoBとなる小売店/EC事業者向け販売促進ソリューションの提供

また、過去の買収事例は以下になります。

サービス名 | サービス概要 | 金額(百万円)
-----------------------------------------------------------
■ 2014年
グランドデザイン&カンパニー | デジタルマーケティング事業他 | 90
マイニングブラウニー | データマイニング事業 | 33
■ 2015年
NETSEA | BtoB market事業 | 1,255
■ 2016年
リバリュー | 返品商品・余剰在庫の流動化サービス | 非公表
スマートソーシング | ネット広告代理事業/中古車販売事業 | 非公表

立ち上げから2014年までは、商品相場比較サイト(aucfan.com)の拡大に注力してきました。2015年以降BtoB領域の強化に伴い、NETSEAやリバリューといった買収が行われました。
今後に関しては、大きく2つの方針があり、それに沿った買収が今後も予想されます。

①海外販売(中国・東南アジア)など、新規の販路開拓にも着手し、アライアンス構築を強化。
②メディア・マーケットプレイス・ソリューション事業から獲得出来る膨大な商品売買データ(商品データ、価格データ、取引データ)を分析・集約しモノの売買最適化を進める。

また直近このような記事が出ていました。
タイの不動産ポータルサイト「Hipflat」、日本のオークファンから戦略的出資を獲得——価格情報のマイニング技術と有料販売でシナジーを期待

Hipflatというポータルサイトは、複数の情報源から不動産情報を収集するサイトになっています。不動産取引の公式記録が不完全だったり、見当たらなかったり、公開されていないことがよくある新興市場では、重要な価値をもたらす可能性があります。
価格情報を収集・整理・分析・提示するのに用いる両社の技術は似ているため、今後のシナジーも考え、オークファンも出資を判断したと思われます。
このように今後データを活用することでシナジーが組めると思うサービスの買収は視野に入るのではないでしょうか。


まとめ

最後に、スタートトゥデイ・クックパッド・アイスタイス・じげん・オークファンの5社のM&A方針をまとめます。

■ スタートトゥデイ
キャッシュがあるため、今後もBtoC領域であるZOZOTOWNの売上最大化を進めるためのファッションコーディネートアプリや、ZOZOUSERDで囲えていないユーザー向けのブランド古着買取サービスの買収が考えられます。

■ クックパッド
引き続き、海外は積極的なM&A、国内は自社での事業開発がメインになると考えられます。ただし自社での新しいサービスが生まれにくくなってしまっていることも経営課題として感じているため、クックパッドとシナジー効果が見込める料理に絞ったサービスに関しては買収の可能性はあると思います。

■ アイスタイス
海外のM&Aが引き続き積極的であり、国内M&Aは直近ないと踏んでいます。
ただし、美容サービス事業者を囲っているサービスがあれば、アトリエはるかのように、資本業務提携・子会社化も進める可能性はあります。

■ じげん
自動車関連のM&Aは可能性が高いと思います。
またその場合、引き続き割高なバリュエーションとなる企業ではなく、三光アドのような地域特化型事業を展開しているサービス、地場で着実に事業をすすめてきた老舗企業を買収し、インターネット化をローコストで促進することで利益率の向上を考えると思います。

■ オークファン
aucfanのような、価格比較サイト・ECサイトの海外サービス買収は進めていくと思います。

総じて、日本国内でBtoC、BtoBtoCメディアとして成功した場合、次にデータを抑えるためのBtoB事業に展開、そのノウハウをアジアを中心にした海外へ手を広げるという王道のパターンがありそうです。

引き続き、メディア事業を展開した先の戦略をどう立てていくのか、その成功確率を上げるためにどういった企業を買収するのかに注目です!




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