潜入レポート!TOKYO STARTUP GATEWAY 2017の決勝大会へ行ってきました

本日は東京都が主催、NPO法人ETIC.が企画・運営する「TOKYO STARTUP GATEWAY 2017」の決勝大会にお邪魔しに来ました。

今年で4回目の開催になりで、参加者も2014年の448名のエントリーから年々拡大しています。2017年度は、1360名のエントリー、その後1次182名、2次33名、最終10名と絞られていきました。

アクセラレータープログラムに詳しくないところはありますが、行政である東京都や、IBMやAmazon等の大企業、リクルートやfreee、Wantedlyといったベンチャー企業まで事業化支援を強く支援し、スポンサードしているのが印象的でした。

一例ではありますが、国内のアクセラレータープログラムも非常に色に富んでおり、充実していそうな為、こちらもどこか調査し紹介していきたいと思います。(むしろ詳しい人がいたら教えて頂きたくらいですが、、)

さて決勝大会プログラム概要ですが、以下の進行で執り行われました。
「1. セミファイナルリストによるピッチ」
「2. ファイナリストによるプレゼンテーション」
「3. 交流会」
「4. 最優秀賞・優秀賞の発表」

本稿は少し毛色を変えて、簡単なイベントレポートとしたいと思います。
「TOKYO STARTUP GATEWAY 2017」の詳細は公式HPを確認ください。
http://tokyo-startup.jp/
尚、本稿にあるプロフィールや事業内容は公式HPに掲載されているものを参考にしています。

0. 目次

- 1. セミファイナリストのピッチ内容紹介
- 2. ファイナルピッチのプレゼンおよびピッチ内容紹介
- 3. 最優秀賞・優秀賞の発表
- 4. おわりに

1. セミファイナリストのピッチ内容紹介

ファイナリストの方々の、プレゼン前にセミファイナリストよる1分ピッチがありました。
バイアウト的な観点でも、音楽アーティスト向けのアイデアや食器関連EC、遠隔介護等は注目できる候補のようでした。
ただ正直なところ、スケーラビリティやエコノミカリー面で詳細をお伺いしないと難しいものが多くありました。

(1) iProbe ~ あなたが動かす月面探査機 ~
- 代表:植松風登さん
- 概要:月面探査機を、世界中の人々が自在に操縦できるように、10分ほどの枠ごとの予約制にし、VR技術等を用いて、気軽にリアルな「類似月面飛行」を。

(2) スイーツを通して日本の魅力を美味しいという感情に乗せて世界へ
- 代表:小澤幹さん
- 概要:スイーツを通して日本の魅力を発信するためのイベントとしてスイーツフェスを企画。そのなかで地域を巻き込んだスイーツシーンの創造を目指す。

(3) 雲水の修行を最大限サポート!まずは足元からゴム革命!
- 代表:中瀬さん
- 概要:臨済宗の雲水が普段履いているゴム草履を改良し(既製のゴム草履は雲水が履き続けるとすぐ破損するため)、丈夫で強い新しいゴム草履を開発します。

(4) ファンの熱狂を可視化し、アーティスをもっと幸せに
- 代表:康欣哲さん
- 概要:IoTによりイベント会場での参加者の行動データを解析し、熱狂が生み出す体験の価値を可視化することで、マーケティングに活用するシステムの提供。

(5) 既存の「服」をなくす
- 代表:郡祐太郎さん
- 概要:既存の「服」をなくし、新しい「服」をテクノロジーを用いて「機械を着る」時代を創造する。

(6) 最新技術で途上国投資をクレームから救う!
- 代表: 馬場貴光さん
- 概要:隔操作・BIM・画像認識の技術で、海外物件を遠隔で「見える化」して、手に取るような不動産管理環境を実現。無人管理でクレームを0にします。

(7) 人々に新しい音楽の発見を提供し続け、音楽家の収益性を実現する
- 代表:濱本至さん
- 概要:曲を通じ、音楽の創り手と聴き手を繋げ、創り手の収益化を成すサブスクリプション型ストリーミングファンディングというビジネスカテゴリを創造する。

(8) 親の介護ピンチをチャンスに変える遠隔介護のぷらっとフォーム
- 代表:増野佳範さん
- 概要:遠距離にいる親の介護を安心して依頼できるサービスとして、介護を依頼したい人と介護をする方を繋げ相互支援できるWeb上のマッチングサービス。

(9) 思い出の風景へのタイムスリップを可能にする
- 代表:松井永さん
- 概要:3Dで再現した昔の街並みを、VR技術で歩けるようにし、仮想タイムスリップ体験を提供するサービス。

(10) 人の生きた証を残せる世界 想い出のプラットホームを創る
- 代表:松岡智子さん
- 概要:いつでも立ち返りたい場所や何度も思い出す経験を手軽に追体験できる「想い出のプラットフォーム」を創り出します。

(11) 距離を超えて大切な人と距離を深める「遠隔お酌」
- 代表:松原大悟さん
- 概要:遠く離れた大切な相手に遠隔でお酌をすることで、動画と音声を超えた遠隔地との疎通を可能にし、距離を超えて大切な人と絆を深める場を提供する。

(12) MADE in Japanの食器をスタイリングで更に魅力的に
- 代表:山本 美代さん
- 概要:MADE IN JAPANにこだわった、スタイリング済の飲食店向け食器販売プラットフォーム。業態に合わせた提案で、探しやすく、買いやすいサービスを提供します。

(13) 壁ロボットで子育て環境の「壁」をなくす
- 代表:渡辺 凌央
- 概要:親と保育所間の情報共有の乏しさを、壁ロボットによる動画配信で解決し、子どもを取り巻く環境すべてが子どもの成長に向き合える社会をつくる。

2. ファイナルピッチのプレゼンおよびピッチ内容紹介

ファイナリスト9名による最終プレゼン。5分間のプレゼンテーション+審査員による質疑応答という構成です。
優勝は審査員による評価およびオーディエンスによる投票により決められます。
審査員による「最優秀賞1名」「優秀賞2名」、オーディエンスによる「オーディエンス賞1名」の3つのアワードがあります。
「Sli.do」(https://www.sli.do/)を使って投票やリアルタイムでのコメントを行ったのですが、個人的には知らなかったサービスだったのでこれが新鮮でした。
以下ではファイナリストの紹介と、私の雑感を中心に書いています。

(1) 長岡 彩子さん
【コンセプト/概要】
- matou~着物シェアリングでこころをつなぐ世界~
- 着物のシェアリングサービス。貸したいユーザーと借りたいユーザーをマッチング。着物ファンが安心して使いたくなるプラットフォームを提供する
【雑感】
- 他に類似サービスや店舗が着物レンタルを行うことも多くなってきていますが、その着物に対しユーザー同士がコメントし合うことや履歴が確認できるソーシャル性を押していました。
- 海外展開も見据えてとの事でしたが、既に競合が出ている中での後発参入となるため、このあたりがもう少し知りたかったです。

(2) 井並 頌さん
【コンセプト/概要】
- 環境に優しいグルメ昆虫食の開発により世界の食料問題を解決する
- 昆虫はいくつかの点で大変優れた食材である。この昆虫に遺伝子操作技術を適用することでより理想的な「食」を実現し、食料が必要な地域に提供したい。
【雑感】
- ソフトシェル化することが蝉やコオロギを食べることの肝だという点が、発想もし得ない点で面白かったです。
- また東南アジアでの昆虫食マーケットは550億円規模だということも驚きでした。
- ただ審査員からのコメントでもありましたが、やはり”見た目”の障壁が高く、栄養価の高い食品を提供する点ではあくまでも昆虫そのものを食べることにこだわる必要はないと思いました。

(3) 梅津 円さん
【コンセプト/概要】
- 吃音者に特化した就労支援・吃音症改善VRデバイス「吃音VR」
- 扁桃体や脳科学的なアプローチにより、吃音症を改善するVRトレーニング教材の作成。吃音者の就労やキャリアにおける課題の解決を目指す。
【雑感】
- その脳科学や臨床実験的な側面もありますが、「就労支援」なのか「吃音症改善」なのかでもアプローチは異なるという印象でした
- VR×医療の展開としては、こうしたサービスが普及し、色々な実験データが溜まっていくことには注目していきたいところです。

(4) 小幡 重人さん
【コンセプト/概要】
- 空の個人利用を革新する、世界最密のネットワークを持つ航空会社
- 誰でも小型機とパイロットをシェアできるプラットフォームを作り、空の世界も「所有から利用へ」移すことで個人で自由に空を使える世界を実現します。
【雑感】
- 沖縄の離島に1/10の時間、1/3の価格で行ける大きく業界を変化させる期待を感じます。
- 将来的なエンタメやレジャーの市場拡大にも強く貢献するサービスであり、小幡氏がプロの曲芸飛行師というのも注目を集める点の一つになるのではないでしょうか。
- また日本の小型飛行の市場が諸外国に大きく及ばない点や、大きな規制はいまのところは心配ない、との事だったので安全性やコスト面でクリアできるが鍵になるのでしょうか。

(5) 永野 将司さん
【コンセプト/概要】
- 言語難民を撲滅せよ!〜日本語教育のパラダイムシフトへ〜
- 日本語教育業界のパラダイムシフトを実現し、日本に住む全ての外国人に安価で良質な日本語教育を提供することで言語難民のいない社会を実現します。
【雑感】
- 言語なに対する就業支援なのか、治安悪化の抑制なのか、によりまた違った事業の形があるのではないでしょうか。

(6) 玉城 潤一さん
【コンセプト/概要】
- 都市の移動を変える、ビルの高低差を利用した移動システム
- 安全に設計されたカプセルでビルの高層階から目的地まで直線距離で移動します。新しい都市の移動形態を提案します。
【雑感】
- ビジネスプランとは直接関係ないですが、機械系メーカーに8年近く務める玉城氏の、ものづくりへの好奇心や無邪気さがとても印象的でした。

(7) 島根 由佳さん
【コンセプト/概要】
- 機能的な「作業着」× IoTの活用により技術者の働き方を変えたい!
- 「ものづくりの現場に必要な機能性を持った作業着をつくる」×「IoTの技術によって得られたデータを活用する」ことで、技術者がより働きやすい世界に。
【雑感】
- 従業員の安全や生産性管理は今後のIoT時代のトレンドにある中で、「作業着」が抱える負を捉えている点で面白いものでした。
- また作業着は靴やヘルメットとは違い直接接触するデバイスではないため、データをいかに取っていくかという話では最適解なのかというのが気になるところでした。

(8) 橋本 雅史さん
【コンセプト/概要】
- 「見たい夢を見る」を現実に!夢の活用を可能にする技術開発
- 夢を医療や研究に生かしたり、夢で仕事のヒントを得たり、夢の中を自由に動き回り楽しんだり。そんな、「見たい夢を見る」技術の開発を目指します。
【雑感】
- まだ事業としてというよりは研究段階でしたが、研究・開発を対象としたアクセラレータープログラム等もあるのでしょうか。
- VRの技術がより進歩していけば、解析夢状態をつくることも不可能ではないと感じ、そのあたりのアプローチ方法の違い等も気になるところでした。

(9) Milmeさん
【コンセプト/概要】
- 日本の18・19歳のための自立支援シェアハウス
- 独立を希望する18・19歳を対象に、クリエータースキルや社会的基礎力、仕事を提供し環境的・経済的・精神的な自立を支援するシェアハウス。
【雑感】
- アイデアとしては素晴らしいと感じたものの、ビジネスとしていかに回していくのか、対象となる人々へどうアクセスしていくのかが気になるところでした。

(10) 山口 将秀さん
【コンセプト/概要】
- 障がい者の世界を変えて社会を動かす
- 就労移行支援事業所の立ち上げ、福祉事業所と企業のマッチングを広げていき、働き方や、障がい理解の促進と啓発を進めていきます。
【雑感】
- 人材紹介という形で障がい者と企業を結びつけ、そこから本採用に繋げるという仕組みです。
- 企業の障害者法定雇用率の上昇もあり、いかに企業に接触し理解を得て、採用のミスマッチや見えない壁を取り除けるかが鍵になるのでしょうか。

3. 最優秀賞・優秀賞の発表

【オーディエンス賞】玉城 潤一さん/ビルの高低差を利用した移動システム

【優秀賞1】橋本 雅史さん/夢活用の技術

【優秀賞2】Milmeさん/自立支援シェアハウス

【最優秀賞】小幡 重人さん/小型機とパイロットをシェアプラットホーム

4. おわりに

プラン段階やシード期にあるプロダクト・サービスも多く売却という観点では正直評価しにくい点もありましたが、こうしたアクセラレーターが盛んになることで行政や大企業からスタートアップが相乗効果を生み、イノベーションが起きやすくなる取り組みにますます期待するばかりです。それによりIPO以外のExitも多くのスタートアップにとってメインストリームになっていくのではないでしょうか。今回のイベント参加でアクセラレータープログラムにとても興味を寄せるところとなったので、引き続き注目していきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?