【漢詩教室】第二回

漢詩教室第2回 2024.4.18

●唐の歴史の話(渡辺さん)
漢詩は唐の時代に発展しました。618~907年で約300年の歴史があります。
これは日本の江戸時代と同じぐらい長い時間です。でも小さな島国の日本と、異民族による大陸では、300年の重みが違うのではないでしょうか。

(1)初唐
則天武后(女性)が改革を行う。
(2)盛唐
玄宗と楊貴妃。
詩人は李白や杜甫。
755年、安史の乱で世情が混乱。
(3)中唐
760~835年。
漢詩も混乱を描く。白居易など。
甘露の変が起こる。宦官が官僚を殺して皇帝も幽閉。
(4)晩唐
いつ宦官に狙われるかわからない、気をつけるべき時代。政治的主張を直接書かない漢詩が増える? 李商穏など。

(わたしが昨夜のメモをもとに書いているので不正確かもしれません)

●唐の漢詩人は同時代のスターだった(安田さん)
白居易と、日本の空海や菅原道真は同時代の人でした。だから空海たちも、古典を読むのではなく、いま流行っている本を読んだり歌を聴いたりする感覚だったはず。

●政治的主張を恋愛の歌にのせる(渡辺さん)
漢詩は、恋愛を詠まないものだった。中唐になり、白居易が初めて詠んだ(玄宗と楊貴妃の恋を書く「長恨歌」が有名。紫式部「源氏物語」に影響を与えた)。
晩唐になると、李商穏が、甘美で美しい恋愛の詩を書いた。
…と見えて、じつは、恋愛の話をしているふりをして、政治的主張の原液をドクドクと混ぜていた(そういう研究があるのか、講師の渡辺さん独自の読解なのか? わたしが確認しなかったのでわかりません)。
例えば「昨夜星辰昨夜風」で始まる無題の詩。これは「祇女に会いに行ったが、仕事で呼び出されたから、帰った」という内容。祇女との関係を歌っている。
でも実は、最後の一行「走馬蘭台類転蓬(馬で役所に帰るのは回転草になったような気持ちだ)」に、「政治が不安定で命令に従うのが馬鹿らしい」という批判が込められている。

(つまりEmotionやPassionに隠してLogicを詠むということだろうか?)

(「中国名詩選」「中国名詩鑑賞辞典」などで確認したら、李商穏は恋愛詩の名手として紹介されていますが、詩によっては確かに、政治批判がテーマだと解釈されています。例えば「初食筍呈座中」は不本意な役職に不満を抱いている、「登楽遊原」は唐の滅亡を予感している、など)

(中国には、情を歌いながら、奥に政治的な論がある、という詩作の手法があるのかもしれません。もしそうなら、情の部分で止まらず、正確に読解するべきだと思いました)

宋の時代にも、恋愛のことを書きつつ政治批判の意味を込めている詩が多くあります。(安田さん)

●宋になり、起承転結じゃなくなる(安田さん)
「春夜」蘇軾
春宵一刻値千金
花有清香月有陰
歌管楼台声細細
鞦韆院落夜沈沈

この詩は一行目から「花が咲いてる。花には千金の価値がある」とクライマックスのテンションで始まっています。二行目も「花の香り。月の光」と華やかです。歌に例えると「ずっとサビの歌唱が続く」構成。このように、起承転結にならないのが宋の詩です。


●漢詩を作ってみよう
今回も、二文字、三文字の言葉の表を見ながら、文法を守って、七文字の漢詩を作ってみるコーナーがありました。
わたし、昨日は…

竹屋 好風 詩酒筵
(竹の家 春の風 詩と酒と筵)

これ何…?
ゆっくりお酒を飲みたかったのだろうか…🍻

●余談
自分の小説で、美しい顔のことを「花のかんばせ」と書いてきました。これも漢詩の「花顔」を訓読みした「花のかんばせ」でした。
白居易「感鏡」に出てきました。


漢詩教室は第二回も盛況で、会場参加が約40人、オンライン参加もあわせると約100人だそうです。大河ドラマの影響もあるのかな。
来月は第3回です。

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