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本日の一曲 vol.233 バーバー 弦楽のためのアダージョ (Samuel Barber: Adagio for Strings, 1938)

サミュエル・バーバーさんは、1910年3月9日、アメリカのペンシルベニア州ウェストチェスタで生まれた作曲家で、母親がピアニスト、母方のおばがメトロポリタン劇場のコントラルトでした。6歳でピアノを始め、7歳で最初の作曲をし、14歳でカーティス音楽院に入学して、音楽の勉強をしました。

本日ご紹介する「弦楽のためのアダージョ」は、バーバーさんの曲の中で最も有名な曲ですが、この曲は、もともとは1936年、バーバーさんが26歳のときに、弦楽四重奏曲ロ短調の第2楽章として作曲されたもので、これを同年に弦楽合奏用に編曲したものです。

この弦楽四重奏曲は、以下の構成になっています。
第1楽章 Molto allegro e appassionato(アレグロ、とても情熱的に)
第2楽章 Molto Adagio(アダージョ)
第3楽章 Molto allegro (come prima) - Presto(アレグロ、第1楽章と同じように~プレスト)

1936年9月19日、バーバーさんは、チェリストのオーランド・コールさんに宛てた手紙に「今日は弦楽四重奏曲の緩徐楽章(第2楽章)を終えたばかりだ。これはノックアウトだ!さあ、フィナーレ(第3楽章)だ。」と書いたそうです。バーバーさんご自身も、このアダージョについては相当自信があったことが窺えます。

演奏については、アメリカのジュリアード音楽院出身で、近現代作品を十八番にするエマーソン弦楽四重奏団です。

第1楽章

第2楽章

第3楽章

弦楽四重奏曲の作曲の後、バーバーさんご自身が弦楽合奏用に編曲を行い、「弦楽のためのアダージョ」として、1938年11月5日にアルトゥーロ・トスカニーニさん指揮NBC交響楽団の演奏で初演が行われました。

この曲は、アメリカ人が特に愛している曲であり、第2時世界大戦後のGHQ占領下の日本での最初のラジオ放送、ジョン・F・ケネディさんの葬儀、アメリカ同時多発テロから1年後のニューヨーク世界貿易センタービル跡地での慰霊祭などで演奏されました。

映画でも1980年公開のデヴィッド・リンチさん監督の「エレファント・マン」や1986年公開のオリバー・ストーンさん監督の「プラトーン」などに使われました。

また、日本でも昭和天皇が崩御された際のNHK交響楽団による演奏会や、東日本大震災後の先代フィルハーモニー管弦楽団による復興コンサートで演奏され、園子温さん監督の映画「ヒミズ」でも使用されました。

これまで日米に限らず、世界のあちらこちらで演奏され、親しまれています。

セルジュ・チェリビダッケさん指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団による1992年の演奏もご紹介します。悠然としたテンポによる演奏です。

さらに、バーバーさんは、1967年に合唱曲への編曲も行い、こちらは「アニュス・デイ(Agnus Dei, 神の子羊)」という題名が付されています。

(by R)


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