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毒親育ちで自死遺族になったので水商売で働いてみた話⑤

前回の記事はコチラ🔻

いい加減、水商売の話はまだか! という感じですが、まだまだ水商売に就くまでの話は続きます。
なんといっても、犯罪者を受け入れる精神科の閉鎖病棟ほどネタに尽きない場所を他に知らないくらいには非日常が溢れていたからです。

まず、意外だったのが半分老人ホームなこと。
認知症の方まで一緒くたに入院させるのはどうなんだとツッコミたくなるくらい、認知症のご老人がいる。
年齢層は後に入院した別の病院では12歳の患者もいましたが、そこと比べると幅広くはない。
とは言っても、私が知る限り下は20代前半から上は70代まではいたと思います。
ご老人の年齢がもう70代から上は見分けがつかないので(失礼)一人だけ認知症ではない方の年齢を聞いたら70代だと教えてくれました。
認知症の患者が何かやらかすと、余裕のある患者が看護師を呼ぶ係になるのが暗黙の了解で、私もこの係になったので結構ストレスでしたね。
私も治療を受ける為に入院しているので。
それは、他の患者と同じようでした。
あとは、本来入院するべきではない人がシェルター代わりに入院していました。
これはイレギュラーで一人だけですね。
その方は旦那のDVに耐えられなくなり、行く場所も無いのでシェルター代わりに入院していて、病棟内は同じフロアで男女で別れていて鍵がかかっているのですが、DV旦那もそこに入院しているとのことでした。
奥さんは入院するまで夜中に車の中に避難して怯えていたとのことでした。
後に、この方とはよくお話しするようになるのですが、DV被害者だけどからっとした明るさと、ボロボロの私を慰めてくれる優しさがありました。
ほんの少し気が強いのは、年齢を重ねてふてぶてしくなったということで(ごめんなさい)。

そして、恐ろしいことがひとつ(気持ち悪いと感じるので読むのはお気を付け下さい)。

ここでは患者と話す、TVを見る、作業療法(簡単に言うとリハビリ)でやる塗り絵をする、本棚にある本を読む程度しか娯楽の無い空間で、私にとっては排尿と排泄が娯楽のひとつになっていきました。
だって、排尿と排泄をしているときって気持ちいい。
激鬱で性欲なんてわかないから、自分で始末しようとも思わない。
私は、お手洗いに行きたい欲がわく度に少し嬉しくなりました。
普段なら、何か作業を中断しなければならず、面倒臭いあの行為が、楽しみになってしまったのです。
古臭い言い回しになりますが、うら若き嫁入り前の女性の思考ですよ、これ。
以前、見知らぬ人のツイートか2chで、何かの事件の加害者に対して、「三代欲求を満たすことをやめさせろ。それ以外にも自由に排尿と排泄をさせない為に、その快楽を与えない為に、尿道カテーテルを入れてやれ」と書き込みされていたのを思い出しました。
そうなんですよ。私達は普段そこまで意識していないけど、排尿も排泄も気持ちいい行為なんですよ。
勿論、お腹を壊して水下痢が止まらないなんかは嫌ですけど、お手洗いに長蛇の列が出来ていて、排尿、又は排泄をしたときの気持ち良さを私達は知っている。

下品な話はこの辺にして。
日々、争いの尽きない上に娯楽が極端に無い環境。
そこでは当然の如く、一部の患者同士でロビーに2台しかないテレビの取り合いという名の争いが繰り広げられました。
チャンネルを勝手にいきなり変える者、リモコンを死守する者、争いから身を引く者、人は娯楽に飢えるといい歳をした大人でもこんなに残念に奪い合いをするのかと思いました。
ときに、刑務所では理由は知りませんが警察24時が大人気だと聞いたことがあります。
ここは刑務所と似た環境で、期待を裏切らない一部の患者達も嬉々として警察24時を見ていました。
ということで、私も見ることにしたのですが確かに面白かったですね。
そのうち私は、チャンネル争いに勝つのが得意なYさんとお話しするようになりました。
例の、「以前、保護室のベッドを解体して鉄パイプを作った患者がいた」の話を教えてくれた人です。
Yさんは確か30代で、3児の母。
生活保護受給者のシングルマザーで、既婚者の男性と不倫中でした。
不倫と無縁な人生を送ってきた私は、それをあっけらかんと話すこと自体に驚いたのですが、聞いてみると奥さん公認というか、奥さんが我慢しているとのことでしたね。
不倫相手=旦那がそれなりに稼いでいるので、離婚した方がデメリットになる、と。
お子さん達も不倫相手に懐いており、皆で温泉旅行に行くこともあるなんて教えてくれ、まだまだ知らない世界もあるものだ……、と思いました。
Yさんから話しかけてきてくれたことがキッカケで話すようになるのですが、この人はオープンな方で入院することになった事情も教えてくれました。
躁鬱病を患っていること、普段は仲良しの息子と殴り合いになったこと、殴られ過ぎて口の中が血の海なので息子に血を吐きかけてやったこと。
で、私も私で子供の頃から親に暴力を振るわれてきたせいか、平常心で聞いていられるんですよ。
この辺は自分でも狂ってる感が否めないのですが、こうやって適応しないと私自身が壊れるので、これって多分人間の防衛本能なんでしょうね。
まぁ、適応したくせに結果として壊れて入院するはめになったので、どちらに転んでも狂ってるわけですが。
Yさんは初めての入院ではないので、早く退院するコツを伝授してくれました。
あと、看護師の目を盗んでズルする方法とか。
「こうやって技を引き継いでいくわけよ」とはYさんの談。
私が副院長の前で敢えて笑顔を作って、ロビーでの滞在時間を長く出来たのもこのアドバイスがあったからだったような。うろ覚えです。
Yさんが別の機会に入院したときは、当時元ヤンの彼氏がイキっていたのが頭に来て、同じく元ヤンのYさんが彼氏の家のドアの前で「開けろよ、ゴラァ!」怒鳴り、しかし元ヤン彼氏は雑魚なのかドアを開けずに籠城したので、元ヤン彼氏の車をぶっ壊したところ入院になった、とのことでした。
この辺は法律に疎いのでよく分からないのですが、母親から「今、退院したら逮捕されるからまだ入院していた方がいい」と言われ、敢えて入院期間を延ばしたとか。

Yさんを通じて拒食症のTとも知り合いました。
TもYさんと同じ30代で拒食症。
恐るべきことにその病状故、体重は37kgです。
当時の私は、48kgでそこから食欲が落ちて47kgで身長は同じくらい。
そして、その細い身体のどこにそんな体力があるのやら、不倫相手は2人ときた。
そのうち片方はお小遣いまでくれるという。
旦那からもお小遣いを貰ってます、こいつ。
呼び捨てなのは、後に保護室を完全に出た後に私がこの女と同室になり盛大に揉めるからです。
二人部屋になった私達ですが、私は部屋のドアを閉めたい派、あっちは開けていたい派。
なので、私が一人で部屋に居るときだけ閉めておこうで話は落ち着いたのですが、後にYさんから「気を遣って、二人でいるときもドアを閉めてしまう。そうなると閉塞感がある」と聞きました。
困ったのがこの人、拒食症なんだけど夜中に部屋でお菓子を食べ、更に歯磨きまでしだすという点。
一方、私は不眠症なので寝ている途中で起こされストレスが溜まる。
「夜中にそういうことするのやめて」と伝えたら、「朝だよ」としれっと返答されたので、「3時半は朝ではない」と言い返しました。
で。私は遂に怒って大声で文句を言ったのですが、「言い方ってものがあるでしょう!?」と怒られ返され、そのままナースステーションまで行ったTは、「この子嫌なんだけど!」と言い出す。
私は更にストレスが溜まり、(あんな華奢な女、下手したらストレスで素手でも■せるレベルだ……)となり、取り敢えず自分のベッドにある枕を、ブツブツ小声で文句を言いながら殴り蹴り壁に叩き付けました。
殴れば殴るほど手の甲が擦れ、僅かとはいえ出血までする。
枕カバーには穴が開き、血も付着していました。
そこで、「ぺん子さん」と、他の看護師よりも心を開いていた看護師さんに声をかけられ我に帰りました。
様子を見るに、少しの間私の様子を見ていたようでした。
これには私も地味にショックを受けましたね。
だって、人から見られても気付かないくらい正気をうしなっていたんですよ。
この後、私とTを同室にするのは危険、でも部屋が足りないということから、「ぺん子さんは保護室にするね。でも、あくまで部屋が足りないから保護室であって、今までの部屋と同じ扱いにするから鍵はかけないし、他の看護師にも周知しておく」と説明されました。
「何で私が保護室なわけ?」と聞いたら、看護師は言いにくそうに「Tさんは、その、退院条件を満たしているんだよね。詳しくは話せないけど」と言われ、例の体重の話を思い出しました。
この後、理由は思い出せないけど別の看護師と口論になったときに、「そんなんだから保護室行きになるんだよ」と言われ、いや、いくら看護師が人間でストレス溜まるにしてもそれ言っちゃうんかい、てか、周知するんじゃなかったんか、と思いました(後に、謝罪はしました)。
この病院への期待や信頼は最早落ちるところまで落ちました。
驚いたの、例の置物女医は特に問題視せず、ストレス発散で片付けたこと。
いやいや、まともな人間は枕カバーに穴を開けたり出血するまで枕を殴りませんて。
このときばかりは無能な医者で良かったと思いました。

次の記事でいよいよ犯罪者(といっても、前科がついてるかは不明)らしき患者との話を書けそうです。

#創作大賞2023 #エッセイ部門


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