見出し画像

『国民のための名医ランキング』の編集部が伝えたい「医師や病院を選ぶべき本当の理由」

最初から名医にかかること

本書は、医師をランキングする画期的な試みです。患者視点の本であり、掲載する医師は臨床・治療の第一線にいることを条件としました。
誰でも「自分や家族が病気になったら、誰に治療してもらうか」という決断を迫られる時がきます。患者は、命にかかわる病気を宣告された時、どの医者にかかれば良いか、すぐに決めなければならない現実に直面します。時に、主治医や手術を今日中にも決めなければならないという切迫した状態にも置かれます。
こうした待ったなしの状況に立った時にどうするか、自分にとって最善の医師をすぐに選べるようにしたい、というのが本書を刊行した理由です。
調査・取材してわかったことは、とにかく最初から名医にかかることの重要さです。救急でない限り、「近い病院だから、症状が軽いから」という理由で何となく病院や医師を選ぶのは要注意です。
軽い気持ちで検査をして、患者はその悪い結果に驚き、あっという間に手術日が決まり、入院となる場合があります。「もっと別の治療法がないのか、他の医師の意見も知りたい、自分が納得するまで説明を聞きたい」と思っても、病気に対する不安と焦りで流されるままになる場合が多いのです。それでも良い医師・病院に恵まれたら幸運ですが、一度入院すると他病院への転院は非常に困難になります。
病院を決めること、担当医師や治療法を決めるということを軽く考えてはいけません。これは手術だけに限ったことではなく、生活習慣病など慢性的な病気も同様です。最初の一歩をどう踏み出すかが極めて重要です。医師を選ぶことは自分の人生を選ぶことに直結するからです。

誰が本当の名医なのか

|本書の調査は、医師への直接取材、推薦、医師間の相互評価、患者からの情報などから総合的に判断して掲載を決定しています。各分野の名医とされている医師にアンケートを依頼し、なるべく客観的に比較できるようなデータを出して頂くことをお願いしました。多くの医師が情報を公開し協力してくれています。
とはいえ、医師の技量を測る客観的データといっても複雑で、横断的に比較できるような統一された基準もなく、その公開方法も一律ではありません。
外科手術については、例えば、高難度手術と通常の手術実績は一律に比較できませんし、患者の容体によって治療成績が異なるのは当然のことです。一般内科においては、何をもって治癒・寛解とするかを定義すること自体が困難です。
こうした名医を探す作業を通じて、有名な医師の情報を集めるのは簡単でも、その中から本当の名医を選ぶことは、実に難しいと痛感しました。
しかし、誰もが理解している一つの事実があります。医師の技量の比較方法は困難ですが、「各医師によって治療の結果は明らかに違う」ということです。ただ、その客観的な比較方法がはっきりとしないだけです。
どのような基準をもって名医というかの判断は大変難しいですが、医師も自身や家族が病気になったときには医師間のネットワークを駆使して名医を探しています。それが実態であるということです。

最適な治療法の選択

治療法の選択も大変重要です。患者は誰も手術を望んでいません。できれば切りたくないのは当然です。
がん患者が手術をきっかけに身体の免疫機能が低下して、一気に体力が落ちて悪化してしまう例もあります。そこで、現在は低侵襲治療というなるべく体に負担をかけない方法へ進んでいます。カテーテル治療(血管内治療)が心臓、脳血管の分野まで発展しています。開胸(開頭)することなく、治療が可能となる病気が増えました。
放射線治療もガンマナイフ、サイバーナイフ、トモセラピー、ホウ素中性子捕捉療法、陽子線治療、重粒子線治療など、患部にピンポイントで照射する技術が高まり、まさにナイフ(手術)に匹敵するかのような進歩を遂げています。
「がんゲノム医療」という、がんの遺伝子変異を明らかにし、一人一人の体質や病状に合わせた治療も実施され始めています。
また、ノーベル賞を受賞した研究成果をもとに開発された免疫チェックポイント阻害薬、「オプジーボ」のような画期的ながん治療も話題となりました。

優先順位をはっきりさせること

しかし、これら最先端医療も魔法ではなく、副作用・合併症・欠点もあることを忘れてはなりません。傷が小さいことがメリットである腹腔鏡手術で、群馬大学病院で起きた死亡事故(2014年発覚)のような未熟医による術死は今後も起こり得ます。
治療法の選択は、年齢、容体など個人差があり大変難しいのですが、その判断に元国立がん研究センター中央病院の片井均医師は、取材時に次のような優先基準を示してくれました。
1、患者の病気が治ることが全てにおいて優先される。
2、手術が必要と判断されたら、なるべく臓器は温存されるべき。
3、臓器の温存ができるなら、なるべく傷は小さい方がいい(低侵襲)。
これは、ごく当たり前のように思えますが、患者はできるだけ手術したくない、切りたくないという気持ちの前にこうした前提を見失うことがあります。できるだけ、臓器を温存して切らない医師がいたとしても、あっという間にがんが再発して「最初から適切に大きく切れば良かった」というケースもあります。傷が小さい、痛みが少ないといって、小さく切ったのに、がんは取り残されて、最終的には全摘になってしまうケース、放射線を無計画に当てて、かえって腫瘍が取れなくなったケースもあります。医師と患者は、治療法のメリット、デメリットについて納得がいくまで話し合う必要があります。

いざという時に頼れる医師ガイド

医師を探すときには本書などを参考に医師選びの第一段階とし、次にその医師や病院に、ご自分の症状や希望を伝えてください。そして、最終的に納得のいく医師や治療をご自身で選んで頂くようお願いします。
毎日のように新たな治療法がニュースになります。懸命に生きることが善となる場合や、欧米のようにあえて末期の延命治療を止めて本人が望む尊厳を重視する考えもあります。
これらをすべて踏まえた上で、やはり医師の技術、病院設備によってあなたの未来は異なるということを本書は提議しています。
そもそも本来は、医療界で医師のレベルを公表すべきだと考えます。それが社会的な財産となるからです。

本書が、読者の皆さんの一助となり、また僅かでも日本の医療の進歩向上の役に立つことを願って已みません。


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

記事を最後まで読んで頂きありがとうございます。 ↓の画像をクリックすると桜の花出版が刊行した本をご覧になることができます。