「ジョゼと虎と魚たち」
暑くて寝れなくなった深夜1時、逃げるようにリビングに降りてきて
お決まりのNetflixを開いた
そうして、何を見ようかと物色し、
ふと田辺聖子さんが亡くなった記事を思い出した
そして選んだのが『ジョゼと虎と魚たち』。
久しぶりに「この映画好きだーー」と思った
こんな形の愛を見たことがなかったから
こんなに口が悪くて可愛らしくてまっすぐな弱くて強い主人公を
見たことがなかったから。
そんなジョゼを、若いながらに理解し、彼女を認め、
同情ではなく心から愛しいと勇気を持って示せる相手役を
見たことがなかったから。
他は関係ない、2人のリズムで進んでいく愛がとってもとってもよかった
”障害者と健常者の恋”
とかいうそんな括りには当てはめられないと私は思う。
誰だって、弱い部分はある
そして、相手の弱い部分を認めて、支えたいと思うことが愛だと思うからだ
そして恒夫もまた、ジョゼに自分にはない”強さ”や”たくましさ”を
求めていたのかもしれない。ある種の憧れがあったのだと思う。
映画を見た後、私は本屋を4軒はしごしてやっと文庫を見つけた。
”原作を読もう”
実はこの作品、原作は短編。20数ページからなる。
驚いた。
田辺さんによって綴られた言葉はすごい。
ジョゼの表情が心が透き通って、細かに目の前に浮かんでくるようだった。
私は原作と映画の両方を見るのを面倒に思うタイプだが
両方見ないとわからないことがあると初めて感じた。
ジョゼにとって恒夫だけが、”外の風”を運んできていたのだ。
そして恒夫も、ジョゼの言葉に嘘はなく、現実とは別の次元で厳然とそれが存在していることがをちゃんと分かっていたのだ。
これは見ていない人には、なんのこっちゃわからない文に
なっている気がするので申し訳ないけれど
これは私が忘れたくないものを忘れないようにするメモである。
気になった人は見てみてほしい。
新しい愛の物語、壊れそうでたくましい女の子と、男の子の成長を。
何に惹かれ合うのか、誰を想うのか、2人以外のキャラクターの役割
誰も悪くない。みんな必死に認めてもらおうとしているだけ。
それが綺麗に心地よく描かれていた。
なんとも不思議な空気感の映画で、眠れない夜にはぴったしだった。
物語は、迷いながらもゆっくりと、着実に踏みしめながら進んでいく。
ちなみに、エンディングのテーマは、くるりの『ハイウェイ』。
最後の最後まで私の気持ちをジョゼと虎と魚たちに残したまま
出口まで導いてくれた。