仕事帰り
仕事帰り、カップルの会話
男「マイメロディ?」
女「ちがう」
男「キティ?」
女「ちがう」
これは何の話だったんだろう。
おそらく「わたしの好きなサンリオキャラはなんでしょう?」と言った会話なのではないかと推測する。
いや、しかし安直すぎる。
正直会話として全然楽しくない。
やはりちがうかもしれない。
もう少し考えてみたい。
「株式会社サンリオのキャラクターのなかで、最も古いキャラはなに?」
だったという可能性はないか?
彼女のほうがもっと博識で、それを生かした会話が可能な際、こういったクイズ形式の対話が繰り広げられた可能性がある。
しかしこの仮説には問題がある。
まず、文章では伝わりにくかったと思うが彼氏の方のテンションはかなり低かった。
サンリオの可愛いキャラクターの名前を発しているとは到底思えない楽しくなさそうな声色であったのだ。
彼女がこんな会話をもってきたら、もっと盛り上がって然るべきだ。
次にもう一点の問題である。
これはこのクイズの答えにある。
サンリオで最も古いキャラクター、その答えはコロちゃんである。
コロちゃん。
これを答えて欲しかったとしたらクイズとしてかなり難しすぎる。
彼氏が「マイメロ」「キティちゃん」をあげていることからサンリオに明るくないという前提でいくと、このクイズは少々難易度が高すぎる。
ちなみにコロちゃんはほっぺにコロッケがついていて、お腹が空くと食べちゃうらしい。
たしかにこのクイズのあとの答えがコロちゃんで、解説で自給自足の永久機関と化したクマが出てきたらカップルの会話としては違和感を覚える。
(バニー&マッティも同期)
つまりこれもきっとちがう。
ではなにか。
ここでわたしは気づいた。
この質問には答えがないのではないかと。
彼女が答えのある質問をしたという先入観に囚われていたが、そんなことはないのではないか。
答えのない質問。禅問答である。
つまり「ねえねえ、ひろくんさー、雑巾にしたら絞りやすそうなサンリオキャラってなんだとおもう?」だ。
サンリオ×お掃除、もしくはサンリオ×虐待といった新たなステージ。
絞りたいサンリオキャラ。
一番人気はシナモロールではないか。あの耳を引きちぎりたいという性癖の持ち主が、こぞってシナモンを奪い合うのだ。
また掃除という観点においても、シナモロールの白は汚れが見えやすく、非常に役立つと考えられる。
マイメロディも同じくそうだろう。あの耳というのは人の加虐性を刺激しうる。
また掃除という観点においても耳は高いところや狭いところの埃をとりやすいという点において有用であるといえる。
しかしこの仮説にも問題点がある。それは彼女の返事にある。
これもまた文章では伝わりづらかったであろうが、彼女の「違う」は即答であった。
答えがない問題であればこんなにすぐに「違う」と考え方を否定してしまえるだろうか。
絞りたいサンリオキャラがマイメロディだったとしたら、それはそんなにすぐに「違う」と否定してしまうことではないような気がする。
「なるほど、ひろくんはマイメロを絞りたいのね、私はね」
と、こうなるはずである。
ちがうと言われてすぐに「キティ」を出してしまう彼氏の方にも問題がある。
絞りたいという思いを否定されたからといってすぐに他のサンリオキャラを絞り出すような男は碌な男ではない。絶対浮気する。
もっとマイメロの絞りたさを力説しなければ割に合わない。
ということは、やはり冒頭で述べたように「わたしの好きなサンリオキャラ」といったクソおもんない会話を繰り広げていたのだろうか。
そんなわけない、東京はもっとユーモアに溢れていなくてはいけないはずだ。
日本の芸術の街は東京であるはずだ。
そんな芸術の街に住みたくて上京したわたしの夢を、このカップルが壊そうというのか?
いや、ここからわかるのはひとつだけ。
人の好きなものなんてみんな興味ない、だ。
私もここで好きなものの話をしてみようとか思ったこともあるが、まじでそんなの誰も興味ないんだよ。
このカップルですら彼女の好きなサンリオキャラに興味がないのだから。
サンリオ知らない男と否定する女、さいあくの街だ。
でもこないだ、noteに好きなもの書いてる人がいて、それが私の趣味と少し同じだったとき、少し嬉しかった。
だからなにか書くときは、みんなに勧めるとか私の好きなもの見て!じゃなくて、同じ趣味の人に共感してもらうことを目的とした物書きを心がけたい。
このサンリオカップルから、誰も自分のことになんか興味ねぇから、ということを学んだ。
ちなみに一番絞っちゃいけないサンリオキャラは笑う女。
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