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よしおかさくら詩集

6
2015〜2016 現代詩
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記事一覧

魚類

人類の事は魚類が担当となった彼らは無口だが身を躱すのが素早くて歴史は長いひどくぼんやりとする頭を抱えた私に反対する理由は無くまた妥当ではないかと賢き辺りも頷いた気配もあり決定したようだ他の哺乳類についても揉める事無くまとめて甲殻類が担当するようだ採決は次々と行われたが爬虫類まで来て初めて沈黙が訪れた相対するべき昆虫類が戸惑っているようだった複眼をそれぞれぐるぐる回している二千年前までは立場が逆転し

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水ようかんの嘘

柔らかくなくてはいけないコクのある甘味でなくては分離してもいけない更にそしてつやつやでなくてはそのように思っていたのは実は間違いだった

そもそもは息子が丁稚奉公して暮れの休みに持ち帰ったぴかぴかの羊羹をなんとか両隣りさんにもお分けしたいと試行錯誤する母親の気持ちだしかし妄想だ
初めて齧った時金の延べ棒のように思ったはずだ砂糖と小豆をたっぷりと使い小豆は柔らかく煮て漉してあるのだから寒天でしっ

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うたかた

うたかたについて考え始めて
半月が過ぎた
なにもわからない
気がつくとわたしも泡沫になっていて
ぱくぱくと口を開け閉めする金魚に狙われている

海の自由を海藻が束縛して
魚たちには思想を仕舞う場所がない
常に大きな影に怯えて過ごすのだ

日差しのかかる水を泳げば
わたしも光になったみたい
一瞬も永遠も無い

金魚鉢の前に戻ると彼らは
素直に近づいて来る
素直に
前を見つめている

月と飛行機

月と飛行機

月は涙をこぼした石の礫となって光ってすぐに消えてしまったが涙だったもちろん飛行機には届かないどちらかといえば礫となった時点で飛行機には脅威であったはずだ飛行機にとってすればいつも視界にある美しい光であり方角と時間を見るに有難い月にとってすれば自由に移動する胸が焼きつくようなしかし愉快でもありこれはなんという感情だったかとにかく涙を落とさずにはいられない遠すぎて速すぎて見えないことの全てで礫が当たっ

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植物の献身

植物の献身

枯れた葉はさっさと間引いて
生き残る為になら次々と死んでいく
ひとは歯をよく磨いたら
一日が始まるみたい
朝の光が嬉しいそれだけでいいのに
複雑で覚えきれないよ

あれらは作られた美しさだ
何度伝えても届かない
あなたも同じでしょう
そもそも地球上の物質はとやり込められる始末
作られた美しさに作られてはいない表情を浮かべて
なんと 絢爛豪華な素晴らしさ?だ
短命な薔薇の切り花になってまで

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