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気の合う2人―高校1年春―

桜が舞う季節に、まさか出会うとは
思わなかった。そんな私たちの物語、、、
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「夏希~、ご飯よー」

肌寒い春。夏希は、部屋で歌っていた。

しかも、かなりのでっかい声で。

「夏希、ご飯やぞー」

夏希は、びっくりして一瞬身体を震わせた。

「うわっ、びっくりした。お父さん
びっくりさせんでよー」

達也は笑っていた。

夏希は、1階に降りた。

夜ご飯は、お寿司に、肉サラダに

夏希の好物ばかりだった。

ふと、母親のあいを見た。

「なっちゃん、今日も1日過ごせたよ。
明日からね、夏希が高校1年生なんよー」

あいは、台所に置かれている写真立てを

見て語りかけていた。

写真立ては5つ置かれており、

1つは、亡き親友の夏海と、あいの夏海の

高校生の時の入学式の写真。

もう1つは、夏海がギターを弾いている写真。

省略して、夏海の笑顔の写真が大きい写真立てに飾られていた。

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「ねぇ、お母さん」

「どした?」

「’夏海さん’ってどんな人やったん?」

テレビを見るリビングで夏希があいに聞いた。

その時、達也が割り込んできた。

「健ちゃんが惚れた女、優しい子やった」

「ちょっと、達也~割り込まないでー」

「はいはい」

達也は、ビールを持って、テラスへと出た。

「夏希、なっちゃんは、歌が大好きで
誰に対しても優しい子やった」

あいは、ソファーから立ち上がり、

夏海の写っている写真を持った。

「なっちゃん、、、」

夏希は、あいの後ろ姿が寂しく感じた。

その時、玄関のインターホンがなった。

夜の8時だった。

「こんな時間に誰やろ?」

健太が有村家に来ていた。

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「夏希、高校入学おめでとう!」

健太は、高校入学祝いに、お菓子がたくさん

入った袋を夏希に渡した。

健太は、高校の体育の教師をしていた。

バスケ部の副顧問をしている。

「健太おじさん、ちょっと聞いていい?」

「どした?」

健太は、ソファーに座った。

「夏海さんのこと、今でも想ってる?」

健太の顔つきが変わった。

「今でも想っちょる。」

夏希は泣きそうだった。

健太は独身だ。結婚するつもりも

ないらしい。

「健太おじさん」

「ん?」

「夏海さんと、キスとかした?」

「えっ、確か、なっちゃん言よったような」

あいは、笑いそうだった。

健太の頬が赤く染った。

「、、、今やけん言うけど、1回目は教室、
2回目は病院でした。」

「「おおーー!!!!!」」

あいと夏希は叫んだ。

「うわっ、はず、、。」

健太は、写真立てを見た。

「キスした時、夏海、顔赤くて
もっと触れたいって思って、
夏海を抱きしめて、夏海の手を握って
思いっきり抱きしめた、、。」

「山村、それ聞いたことない」

あいが大爆笑した。

「健太おじさん、夏海さんのこと
大好きなんだね」

ふと、健太が顔色を変えた。

「夏海が生きてたら、、、」

健太の顔は辛そうだった。

その時、夏希の顔を見た。

「夏希、もう10年以上も置いとる
動画なんやけど、見てくれんかな?」

「どうした?」

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健太が夏希に見せたのは、制服を着て
健太の部屋でアコギを弾き語っている夏海の
動画だった。

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「夏海、上手いな」

「健太、ずっと歌っていたいな」

「ずーっと歌っていたい」

「健太、ずーっと一緒にいようね」

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夏希は泣いた。

あいは、泣きながらその動画を見ていた。

「なっちゃん、、、」

健太は、スマホを閉じてそばに置いた。

「、、、夏希、高校生活楽しめよ!
部活入るん?」

夏希は、迷っていた。

夏希は、ふと言った。

「ギター始めようかな」

「ちょっと夏希、なんか歌え」

「えっ」

健太の顔が真剣だった。

「りょーっかい!健太おじさん!」

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夜中12時。夏希は眠れなかった。

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「めっちゃ歌上手いやん、ほんま
夏海みたいやん」

「普段からめっちゃ歌いよったもんね」

「夏希ー、なっちゃんも喜んどるわい。」

「、、、、、夏希、ちょっと後に
なるんやけど、ギタープレゼントしちゃる。」

「山村ー!ありがとう!」

「夏希ー!なっちゃんみたい!」

(夏海さん、、、)

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夏希は眠りについた。

夏海は夢を見た。

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健太、高校の先生しよんやね。

私のこと、ずっと想ってくれてありがとう。

健太に会いたい。

小さい頃からずっと好きだった。

健太とずっと一緒にいたかった。

健太、ありがとう。

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夏希は目が覚めた。

まだ午前4時だった。

夏希の目からは涙が溢れていた。

「うっ、、、」

夏希は静かに泣いた。

川村夏海、健太の初恋の人は

脳腫瘍で17歳という若さで

この世を去った。

夏希は、夏海の辛かった気持ちが分かるような

気がした。

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「なぁ、あい」

「どした?」

朝食の時間、達也がびっくりしたように

口を開いた。

「有馬くん覚えとる?」

「有馬くん!?覚えとる!!!」

「有馬くんの娘の ’みゆちゃん’ 夏希と
同じ高校に進学するらしくて、
昨日夜遅くにLINE来たんよ」

「えっ!!??あの人、娘いるの??」

あいは、大爆笑した。

「みゆちゃん、めっちゃ歌上手いらしくて
アコギ弾きよるらしくて
昨日さー、LINEで
【たっつん、みゆ、夏海ちゃんの
生まれ変わりかもしれんな】って来て
笑いそうになった。」

夏希は食パンをモグモグ食べていた。

「あっ、夏希、健ちゃんからの
プレゼント~、玄関に置いちょるから
見てみー」

達也はニコニコしながら言った。

「、、、ギター?」

夏希は立ち上がって、玄関に向かった。

玄関には、新品のギターのハードケースが
置かれていた。

達也が玄関に来て、夏希に話した。

「健ちゃん、後になるって言いながら
この日のために準備しとったって
早朝から家来て言よったでー」

夏希は恐る恐るギターケースの開いて
中を見た。

そこには、メーカーはYAMAHAの
ギターが入っていた。

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夏希は、真新しいセーラー服の制服を着て
学校へと向かった。

夏希は、満開に咲いている桜並木を
歩いていた。

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夏希はLINEで

「健太おじさん、ほんまにありがとう❤」

「高校生活楽しめよー!」

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夏希は嬉しくてたまらなかった。

夏希は、リュックを背負って、早々と学校に

向かった。

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学校まで近くなった商店街の出口に

夏希はいた。

そこで、スーツに身を包んでいる

有馬に会った。

「もしかして、たっつんのお嬢ちゃん?」

「、、、はい」

「俺、有馬!」

夏希は今朝、達也が言っていたことを

思い出していた。

「あー、あの有馬さん!!!」

「たっつんから聞いたんやけどね
俺の娘と同じ高校に進学すると
思うけん、よろしく!じゃあ急ぐから!」

有馬は走って行った。


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夏希は学校に着いた。

新入生のクラス名簿を見た。

全8組ある。夏希は、’5組’ だった。

ふと名簿をじっくり見ると、

’有馬みゆ’ という文字が見え、

みゆも5組だった。

「有馬さんの娘さんも5組か、、。」

夏希は不思議な気持ちになった。


その時、女子達がヒソヒソ話をしていた。

「あの子めっちゃ可愛い」

「えー誰?」

「確か、’有馬さん’ ?」

夏希は女子達が見ている方を見た。

夏希はびっくりした。

有馬みゆは、ものすごく綺麗な子だった。

長い髪に、目がクリクリで、小顔で

可愛すぎる子だった。

みゆを見ていたその時、

「ねー、新入生よね?」

「あっ、はい!!!」

「入学式帰り、どっか遊びに行こうよー」

夏希は腕を掴まれた。、

「い、いや」

その時、みゆが男の手をひっぱたいた。

「気安く、女の子に触んじゃねーよ」

夏希はびっくりした。

「なっ、なんだよ!?」

男はその場から立ち去った。

夏希は、その場に思わず座り込んだ。

「大丈夫やった?」

「う、うん」

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「有馬、かっけー」

「みゆちゃん、めちゃくちゃイケメン」

「有馬さんつよーい」

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「有馬みゆです」

入学式が終わり、教室でホームルームが

始まった。クラス全員で自己紹介をして

いくことになった。

「特技はギターで、好きなことは歌う
ことです。父親が、ここの学校の
バスケ部のOBで、それで、父親の
知り合いだった人の話を聞いて、
中学2年の時に、アコースティックギター
を始めました。夢は ’歌手’になることです。」


夏希はびっくりした。

その後、有馬みゆと、デュエットを組むとは
夢にも思わなかった。

🍀
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続く






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