朗読舞踊劇 Tales of love「お七 -最初で最後の恋-」

1番の目当てはヨシキさんのお芝居でしたが、実は演出の中屋敷さんの別作品を拝見していたり、宝塚時代の大空ゆうひさんを拝見していたり、題材のお七は別作品で内容を聞き齧っていたり…と気になるポイント山盛りでした。
観てよかったぁぁぁ最高でした!


まずはヨシキさん周りの感想。
※以降ネタバレ有

メイン役の吉三郎が出てくるまで結構時間があり、その前に下女お杉(お七の乳母的な存在)として大活躍。
吉三郎に会いたくて会いたくて震えちゃうお七に、大人の視点から歯止めをかけつつも内緒で手紙を取り次いだり、恋は恋として楽しんでいいけど結婚相手には向かないよ〜などとお七の恋心も将来も見据えたアドバイスをしたり。
お七への愛に溢れた、頼りになる存在。

吉三郎とは明確にトーンも語り口も違うのに、全く無理なく聴かせる技術よ…すごいなぁ…!!
語り口で年齢感と世話好きでおしゃべりな性格が滲み出るのが素敵でした。惚れ惚れ。
お七が処刑されるとき、お杉はなにを思うんだろう…。
今回の作品で幸せになって欲しい人ナンバーワン。

そしてお奉行様の重厚感も好き。
声の響きといい、少し堅めの喋り方といい、こういうしっかりした古典を出来る役者さんってめちゃくちゃ好きだ〜〜!!
序盤は厳しさ強めでしたが、終盤でお七に恩赦を与えようとしたり、厳正さのなかに温かさも感じる役でした。

あとはお七の父親と呉服屋の番頭さん、合計5役!
ほんっとに変幻自在ですね〜!!

さてさてメインの吉三郎の感想です。
最初のシーンが、お七が吉三郎に恋するシーン。
「涼やかなお声」と称される通りの一言目、
「八百屋八右衛門ご息女の、お七様でいらっしゃいますか」。
…インパクト大でした。
登場までだいぶ待ち焦がれたので、我々もお七と一緒に恋に落ちちゃったよ(笑)
そこも見越しての構成なんでしょうか…

そこからは、好青年で不器用で、お七を不幸にしたくないのに一目逢いたいという気持ちに揺れて…という吉三郎くんが愛しくてしょうがないです。
お七について語る吉三郎は、品のある言葉で真摯にお七を称えていて、恋の熱とお七への心酔を感じました。
良い。好き。

朗読劇のいいところは、情景描写や脳内台詞まで全部本人が演じているのを長尺で観られるところですね〜!
長台詞の組み立て方に、演者のセンスが見えるのがたまらない。
台詞上でセオリーな部分とリアルさを求める部分って塩梅は個人の好みだと思うんだけど、欲しいところでは王道を取りつつ、ふとしたときに本音が漏れたようなハッとさせる響きがくるヨシキさんのお芝居、めっちゃくちゃ好きです。

お寺の和尚様との問答でお七との関係を問われ、何が罪で、どう生きるべきかに苦悩する吉三郎くんはとっても心に刺さりました。
生まれも複雑で色々背負ってるので、自分ではお七様を幸せにできないと語る吉三郎くん。
今までは自分が生きるため必要に迫られて道を選択してきた吉三郎が、初めて自分の気持ちに従った大きな選択がお七との逢瀬だったんだと思うと…。
他の人がどう評価するかはわからないけど、一つこれだけは譲れないという存在に出会えたことは、吉三郎の人生を美しくしたのだと思う。

悲恋モノでは男性側はクズ男に描かれがちだけど、好感度高いままの吉三郎くんでした。
観終わったときの心情として、もやもやを抱えずにカタルシスに浸って帰路につけるので、個人的にこういう作りは嬉しい(笑)

あと…
吉三郎は権力あるお方と念者・若衆の関係だったというカミングアウト…
当時の風習を思えばそんなに特殊ではないのかもしれないけど、そういう予感なしに吉三郎の話を聞きはじめたので「大変だったねぇぇぇ😭」という気持ちになりました。とはいえ嫌々ではなく忠誠心や真心もあっての関係性だったのかもしれないけど。
めっちゃ滾る設定…
そこの関係性のスピンオフ気になるな〜!!!!!!!!!
お七との何やかんやはきっと念者のお方にも知られたと思うけど、その後そのお方は何を思い、吉三郎にどう接するのだろう。
その人が真心ある人で、吉三郎の心の傷に寄り添いながらも、永遠にお七には勝てないという葛藤を抱えてたらめちゃめちゃいいな…
戯言失礼しました。


そして作品全体の感想。


お七が舞台上に2人いたり演じ分けが多かったり、時間軸が複雑だったりしたけど、それらがわかりやすい上にそれらを効果的に魅せていく演出だった。特にお七二人の重なり方は素敵だったなぁ。
脚本はどこまでが原作設定でどこが今回の追加要素なのか分からないんだけど、大きな事件を扱いながらもそこへのプロセスが丁寧かつ納得できる条件が揃っていて、どんどんのめり込めました!お杉とお七の会話、お七と吉三郎の会話ではロミオとジュリエットに想いを馳せ、お奉行様に申し開きする過程で観客にも情報を伝える手法はミュージカル「エリザベート」を思い出しました。
言い回しの古さとわかりやすさが絶妙で、古典作品をこういう風に噛み砕いてくれるのとっても嬉しい〜!!
照明はお着物の色が映えていて、きっと日舞関連で観劇した方も納得の見え方だったのでは。セリフのない日舞の場面でも照明の切り替えで場面を感じることができて、初心者にも優しい設計。終盤の客席壁にあたる照明や、ラストの天使のはしごのような照明がとても素敵でした。
演奏では、尺八などはしっかり古典なんだけど、違う楽器もたくさんあって現代的なリズム感も入ってきてた!現代人に親しみやすい古典楽器の演奏☺️
やはり和物には和物の音があると落ち着くというか、心に染み付いた「日本感」が呼び起こされる感じが心地よかった。
大空ゆうひさん、ヨシキさんの衣装はいくつもの役を兼ねるときに馴染むシンプルさもありつつ、世界観にも染まっていて素敵でした。
トップスはかっちりめの白シャツに、着物のような形状でアレンジが加えられたもの。ボトムスは黒の一見スカートに見えるようなもの。もしかしたらワイドパンツかな?お二人とも、男女両方の役があったので性別不詳な衣装が素敵でした。
全ての要素が世界観に没入させてくれて、総合芸術だな〜〜〜と感動しました。

まとめ

この作品、主題が「恋」という言葉だけでは少し感触が違うのかも。
お七と吉三郎にとっての恋とは、やっと見つけた生きる意味であり、人生の命題であり、自分の生きる道そのものだったのだと思う。
自分の人生の命題に何を据えるのかが美学なんだろうな。
それを思うと、たとえ愚かと言われても、お七の散り様は美しいと言わざるを得ない。
(でも放火はダメ、ゼッタイ。笑)

私はお七みたいな生き方は絶対できないから、こうして作品の中で心の熱さを擬似体験してカタルシスを味わうのが幸せでした。
心が潤ってうるうる。
古典作品っていいな〜。こういうのまたぜひ観たい!

おかげさまで明日からの怒涛の日々もがんばれそうです。
エンタメは生きる源。
公演に携わる全ての皆さん、素敵な時間をありがとうございました✨

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