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僕がヤフーを辞めた4つの理由

6年間勤めたヤフー株式会社を退職します。在籍は2019年の1月末までですが、12/5(水)が最終出社日でした。今は絶賛有給消化中(全57日のうち4日目)です。

これはいわゆる退職エントリーではありますが、別にここからヤフーの悪口を並べるつもりはありません。どちらかというとその退職するに至る根本にあった僕のデザイナーとしての仕事のスタンスやキャリアの考え方、ちょっと生臭いお金のお話をできればと思います。

はじめに結論だけ言いますと「別にヤフーを辞めなきゃいけない理由はなかった」です。転職や退職を目的としていたわけではなく、市場価値をより高める続ける方法を考え、結果的として退職という手段に行き着いただけです。

大きく考えたのはこの4つです。

・ヤフーでの実績をきちんと積めた
・自分の成長の鈍化を感じた
・自分の学んだことを更に活かせる場に行きたかった
・市場価値をより高め続けるための戦略

ヤフーでの実績をきちんと積めた

僕はデザイナーとしてさまざまなサービスに関わらさせてもらいました。実績というと少しおこがましいですが、非常に貴重な体験と経験、そして偉大な先人たちの知恵に触れる機会があったことは僕の確かな自信につながっています。

そこから得られる感想として、まずヤフーは非常に良い会社です。制度は整っていますしそれに応える人がいます。

さらに「人」「金」「数」の横綱相撲ができてしまいます。PayPayの100億円あげちゃうキャンペーンなどはその最たるものでしょう。こういう「大人げないヤフーの本気」みたいのが僕は大好物です。

幸運にも自分はヤフーの中でとても良いポジションと、ヤフーでしかできないプロダクトづくりの一端を担わせてもらえました。

・Yahoo!検索
・Yahoo!知恵袋
・Yahoo!しごと検索
・Yahoo!乗換案内
・Yahoo!ブラウザー
・buzzHOME
・Yahoo!ニュース

直近ではこのあたりのプロダクトのデザイン責任者とデザイン部長を経験する機会に恵まれました。

またプレイヤーとしてもUIデザインの「黒帯」(いわゆるエバンジェリスト)としてYahoo! JAPANのUIデザインを代表する立場として活動をしたり、全社横断のデザインシステムの開発に参加したりと、マネジメントとプレイヤーを思う存分楽しませてもらい本当に感謝しています。

もちろん違った感想を持つ人も多くいるとは思うのですが、僕は比較的自由に楽しいことをさせてもらっていたため、立場や報酬の不満は感じていませんでした。

自分の成長の鈍化を感じた

しかしヤフーでいろいろな仕事をしていくなかで自分の成長速度の鈍化を感じました。すなわち市場価値の上昇の鈍化です。

会社に慣れてある程度仕事をこなすことはできるようになりましたが、新たな刺激が徐々に薄まっていく気がしていました。また、社内での価値は少しずつ高まり続けますが、その一方で社内の人に助けてもらえることによる力や、社内独自技術に対する依存度が高まり「今世の中に求められる人材と乖離が出てきているのではないか」という危機感を感じたのです。

誤解のないように言っておくと、これはヤフーだから生まれるというものではありません。むしろこういった社内独自の制度や技術は多少なりとも必要です。その会社の力を活かすには求められるスキルなのは間違いありません。

また、逆パターンのグラフを描く人もいるでしょう。あくまで僕自身が良い環境にいてある程度の裁量をいただけたらこそ、その裁量を活かすために自らが進んで手に入れたスキルでもあります。

なのでそのスキルを高めることに対して抵抗はありませんでしたが、より社外に出たときの市場価値も高めていきたいと感じたのです。

自分の学んだことを更に活かせる場に行きたかった

とはいえヤフーの社内で更に市場価値を高める方法というのがなかったわけではありません。例えば今までに自分が経験してこなかったECの領域やそれこそPayPayのような決済サービスを学ぶというのも非常に良い選択肢だったと思います。しかし今回はあえてヤフーを出る選択しました。

これは僕の仕事の生存戦略なのですが、「その組織にない技術を自分が身につける」「自分が持っている技術を持っていない組織に行く」という考えからです。

そもそも器用貧乏体質ですので、ある程度まではいろいろな領域で成果を出せるという自信があります。(あくまである程度)

僕が社外から興味を持ってもらえそうなスキルはこんな感じ。

・組織戦略にひも付いたデザインからのアプローチの提案
・ビジョンを実現するためのデザイン組織づくり
・ものごと実現するためのユーザー体験設計
・ビジネス×デザイン×テクノロジーによるプロダクト設計/マネジメント
・数千万ユーザーを支えるデザインの考え方
・数十人のデザイナーを抱えるデザイン組織のマネジメントの考え方
・KGIを見据えたUI設計とデザイン
・気持ちいい/愛されるUIデザイン
・その他一般的なデザインとコーディングスキル

これらは別に「これを任せろ」ってほどのレベルではありませんし、ホントは「UIデザインのもっとこんなとこ好きなんよ٩(๑´0`๑)۶」とか言いたいのですが、あくまで売りやすい技術という意味では控えめに。

どこでも最近見かけるようになったBusiness × Engineering × Designの話。これらのスキルの掛け算がその人の希少性を生むわけですが、僕の最近興味があるのは赤点線の事業 × デザインの部分。

これらにヤフーならではの大規模サービス × マネジメントをかけ合わせてみるとそこそこの希少性が見いだせてきます。ここで僕が選んだのは「今より大きなサービス」「今より大きな組織」ではなく、「今より小さなサービス」「今より小さな組織」でヤフーで得た経験を微力ながらでも活かすことでした。それにより組織の中での希少性をより生み価値を得られると考えたのです。

また逆にヤフーの中では得られないその組織ならではのナレッジも吸収でき、お互いにwin-winな関係性を築けるでしょう。

市場価値をより高め続けるための戦略

僕自身はずっとUIデザインを自分のスペシャリティとして置いており、今のところそのスタンスを変えるつもりはありません。しかしその一方でそのスペシャリティを一つの道具だと割り切りもしています。UIデザインがたまたま好きだった、たまたま少し得意だっただけです。

残念ながらUIデザインだけを極めていっても、その市場価格はある程度キャップはあるでしょう。具体的数字を出すと、事業会社のインハウスデザイナーでは600〜800万くらいが一般的な上限ではないでしょうか。(宇野調べ/もちろん例外はあります)

そもそもそのキャップまで行くだけでも大変な努力と能力であることは間違いありませんが、それ以上の金額をもらおうと思うと、よりコアなUIデザインに踏み込んでいくか、他の能力と掛け算をしていくかです。僕は後者を選びました。

とはいえ別にUIデザインと経営をいきなり掛け合わせろという話ではなく、UIデザイン × 定性調査でもいいですし、UIデザイン × クリエイティブディレクションやUIデザイン × アプリフロントエンドでもいいでしょう。UIデザインというものはそもそも研究ではないので、単独では成しえないというのが僕の持論です。そういった意味では掛け算を無意識にしている人も多いでしょう。

これはざっくり僕の直近10年(前職在籍時も含みます)の年収がどのように動いているかです。実際は賞与係数などの関係により増減があります。

順調に上がっているように見えますが、実際はたくさん失敗をしていますし怒られました。。なのでこれは正常進化をした結果ではありません。能力の掛け算をして評価をもらえたタイミングでの上昇です。

1流になれなくても超2流にはなれる!

こちらは先日のDesignshipで登壇されていた佐々木智也さんの「フルスタックより強い、オールラウンドデザイナーのつくりかた」という講演の中でのお話です。

まさしく僕の生き方はこれそのものです。僕はUIデザインだけでは超一流にはなれませんが、他の技術や経験との掛け算により少し珍しいくらいの存在にはなれていると思います。

今回はその掛け算の幅をより広げるために次のステップを踏み出す決意をし、結果として退職という手段を選んだというお話でした。

今後のこと

先に書いたように1月末までヤフーに籍を残した状態です。以前からお手伝いをさせていただいている会社さんや講演、執筆などのお仕事をしつつゆっくりと過ごそうと思います。

僕の次回作は2月から開始の予定ですので、その際にはまた「なぜその選択なのか」を書ければと思います。

頂いたサポートは次なるUIデザインやその記事に役立たせて頂ければと思います!