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「火」

 「火を点けろ、燃え残った全てに」というコピーを見たとき、燃えた。この思いこの気もちのぶつけ先が、やっと、という気もちやった。

 劇中でのウォルターのセリフとしては一見すると「燃え残ったコーラル全てを燃やせ」ぐらいの意味に思える。もうちょっと膨らませると「もっと早くカタをつけるべきやった負の遺産をお前が焼き払ってくれ」とかそういうかんじ。でも、それだけやとちょっと勿体ぶった言いかたすぎる。キザというか。

 これは「脳を焼かれた独立傭兵」とちょっと呼応する言いまわしなんではないかと思う。

 621は強化人間手術のおかげで感情はじめ色んな機能(?)が失われてる、とされてる。でも、おそらくウォルターは、集積コーラル到達までの621の「選択」を見て、そこにまだ何かが燃え残ってるのを見てとってる。感情・情熱・心・気もち、何かしらそういったものが残ってるんやと確信してるんやと思う。あるいは、そこに賭けて、それに火を点けようとするウォルターのメタメッセージになってる。

 だから、このセリフは、単にコーラルを焼き尽くせって言ってるんじゃなく、まさしくはじめてあのコピーを目にしたときの(往年の)プレイヤーと621とを重ね合わせるもんでもあるんやと思う。

 火を点けろ 燃え残った全てに

っていうのは、

621、強化人間手術で脳を焼かれたお前の中にも焼き切れずに残ってる感情・情熱・心、そういったもんがまだあるやろう、お前は自分で気付いてないかもしれんけど俺はそれに気付いている、だからそれを解き放て、爆発させろ、このルビコンで

ってことで、これはそのまま

往年のプレイヤー諸氏、お前らの中にはVDから10年経ってもまだ燃え尽きずに残ってる情熱があるやろう、俺たちはそれを知っている、それをどうぞ思う存分爆発させるがいい、この『AC6 FIRES OF RUBICON』で

ってことやと思う。

 だから燃える、熱くなる、感動する。

 もちろん理想的にはコーラルを焼き尽くすのがウォルターにとっても本懐やったんやろけど、ウォルターもあそこでいったん自分が死ぬってことがわかってる(覚悟を決めてる)ってことで、それ以上に自分の死後も(少なくとも短期的には)生き続けるであろう621自身が選択するってことそのものを重く見てたんやろと思う。

(そういうので言うと解放者ルートの「火種を見つけたぞ」っていうセリフは解釈が難しい。「621に火を点けるもの」って意味にも取れるし、「大火をもたらす元凶」って意味にも取れる(そして賽投げルートではまさしくそうなる)。)

 『AC6 FIRES OF RUBICON』には「ルビコンの火」っていうルートはない。「ルビコンの戦火」としての621、全てを焼き尽くすコーラル、「ルビコンの解放者」としての621、ルビコニアンの民族自決運動の本格化、「はじまりの火」としてのコーラル(リリース)、ウォルター、カーラ、スネイル、オールマインド、ラスティ、エア・・・・

 それぞれのルートで語られる「火」の総体こそが、『FIRES OF RUBICON』っていうこのゲームタイトルの指すところなんやと思う。

 だから「ルビコンの火」ルートはない。分岐・選択、そこで目にすること起こることすべて、プレイヤーの心にあったもの・芽生えたものすべてが『FIRES OF RUBICON』ってことなんやと思う。

*****

 続編が出るのはこれまでの慣例からいってもまあ間違いないんじゃないかと思うけど、どの「ルビコンの火」が正史かを決めてしまうような意味での続きもの(『FIRES OF RUBICON』のあとに続く話)は出んのじゃないかなーと思う。どれを正史か決めてしまうと「ルビコンの火」のそれぞれに序列をつけることになってしまう。
 『星を継ぐもの』的なニュアンスの前日譚とかになるんじゃないかなーと勝手に思ってる。

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