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エムエム総研取締役米田氏に聞く!インサイドセールスは今の売上貢献だけでなく将来の業績を育む職種である

こんにちは。イノベーションの池上です。今回は、多くの企業でセールスデジタルシフト支援実績のあるエムエム総研 取締役の米田光雄さんにインサイドセールスについて聞いてみました。

この記事で分かること
・今、「インサイドセールス」が注目されている理由
・インサイドセールスが日本企業にもたらす価値
・テレアポ部隊にしないためのインサイドセールスのKPI設計
・インサイドセールスに必要なスキル

エムエム総研 取締役 米田光雄さんの紹介

米田 光雄(よねだ みつお)
株式会社エムエム総研 取締役

2011年:エムエム総研入社後、国産大手や外資企業の数多くのインサイドセールス、マーケティング支援に携わる。
2016年:同社執行役員に就任。
2017年:BtoBマーケティングアカデミーの責任者に就任し、自身も講師として現在も教鞭をふるっている。
2020年:取締役就任。アカデミーを通じた人材採用・育成実績は4年で160名を超え、同社のデマンドセンターの責任者も兼務。
2021年7月:BtoBマーケティングアカデミーをデジタルセールス・アカデミーに名称変更すると同時に、同社社員や企業向けに提供していた研修カリキュラムを一般求職者に無償開放する取組みを開始。

インサイドセールスはどれくらい注目されているのか

近年、デジタル技術の発展や、営業プロセスの生産性向上を目的として、インサイドセールスへの注目が高まっていましたが、コロナ禍で飛躍的に加速したという印象です。

dodaの「”新しい時代に求められる営業職”に関する調査」では、「インサイドセールス」「カスタマーサクセス」職の求人が2年半で約7.4倍に増加したという報告もあります。また、ぼくが講師を務める「デジタルセールス・アカデミー(旧BtoBマーケティングアカデミー)」の応募も2019年度から2020年度にかけて約6倍に増加しており、採用企業、求職者のどちらからも注目を集めています。

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インサイドセールスのほとんどは外注だった

ぼくが初めてインサイドセールスに携わったのは2009年頃。
エムエム総研が主にIT外資や大手、成長ベンチャー向けに提供していたアウトバウンドサービスを提供する部隊のコールスタッフとして従事したのがスタートです。

その当時と今を比較すると、「メールや電話を活用して、遠隔で顧客とコミュニケーションをとること」、「営業が生産性高く活動できるような案件を供給すること」といった根本的な部分では、大きな変化はないと感じています。

しかしその頃は、今の様にインサイドセールスを自社内に持つ企業がごく稀であり、外注することが殆どでした。また、当時はMA、CRMやSFAなどのデジタルツールが普及していなかったため、クライアント企業から支給される企業名と電話番号だけのリストに対してアウトバウンドを行っていました。

インサイドセールス部隊を自社に作る企業が増えたワケ

その様な中この10年くらいで大きく変わったのは、日本企業でCRMやSFA、そしてMAといったデータベースが普及したことです。顧客データを管理して運用することが徐々に根付く過程で、インサイドセールスも外注から社内構築型、内製型で取り組む企業が多くなりました。これは、インサイドセールスが顧客データに基づく適切な顧客対応や成果創出を実現していく上でデータベースへのアクセスは不可欠ですが、外注ベンダーがシステムにアクセスすることのハードルの高さや、データ分散が生じてしまうことでのデメリットが影響していると思います。

また、これはそれ以前からの流れではありますが、インターネットが普及し、サービスのコモディティ化が進んだことも要因として考えられます。新しいサービスが生まれても、すぐに類似サービスが出てくる時代になり、またその存在を顧客側が知る術も急速に増えました。これによって、長年のお付き合い的な顧客関係性や製品力だけで勝ち続けることの難易度は上がり続けています。その様な中、マーケティングやセールス領域で競争優位性を創出することのできる企業がより成功を収めるようになりました。そのため、自社にインサイドセールスを含む独自のセールスプロセスを作る必要が出てきたと言えるでしょう。

もちろん一般的に言われる労働人口の縮小や購買行動のデジタル化といった変化も影響を及ぼしていますが、社内構築型で取り組む企業が増えた理由や背景としてはこれらが大きいでしょう。

インサイドセールスはどんな企業に必要か

Saas型のサービスでも、コンサルティングなどの無形サービスでも、高額商品でも、人によるセールスプロセスが必要なものであれば、インサイドセールスの価値を発揮できると思います。人によるセールスプロセスが不要なものとしては、WEB上で購入まで完結するようなものが該当します。有形、低額、買切、局所的利用、低リスク…といった条件を満たしたものはそもそも人によるセールスプロセス自体がますます不要になっていくでしょう。

また、営業組織規模が小さすぎる場合、ターゲット数やリード数が少なすぎる場合は、専任のインサイドセールスは必要ないと思います。分業・協業による生産性向上といった効果はある程度の規模があって発揮されるものなので、人によって役割を分けて専任を立てるタイミング自体は個別の判断が必要です。

インサイドセールスが企業にもたらす価値

営業プロセスにインサイドセールスを設けた場合の3つのメリットについて、詳しく話していきます。

1.営業生産性が上がる
2.マーケティングのROIを最大化できる
3.ナーチャリングを強化できる

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1.営業生産性が上がる
同一人物が全てのプロセスを担うのに比べ、業務範囲を限定することで習熟度を高め易くなり、しっかり機能すれば1+1を2以上にできます。
また、インサイドセールスが事前に精査した案件をフィールドセールスに供給することができれば、受注確度が必然的に上がり受注率も上がります。これまでは10件中、2件の受注率だったものが、3件中、1件になれば、フィールドセールスとしての営業生産性が高まったと言えます。

2.マーケティングのROIを最大化できる
Web広告やイベント出展など、販促部隊やマーケティングチームが見込み顧客を獲得するための施策を行っている企業は少なくありません。しかし、営業は自身の担当顧客や短期的な見込み度の高い企業やポテンシャルの高い企業の対応を優先するため、販促投資が営業活動や受注成果に充分に結びついていないという課題を抱えている企業も多いです。

販促で獲得したリードはそのままでは基本的に有象無象ですので、期間業績目標を持つ営業からすると優先順位が上がらないのはある意味当然と言えます。この間のプロセスにおいてインサイドセールスが機能することで、獲得したリードを無駄にすることなく適切に対応すると同時に、その中から発掘された見込み度の高い顧客を営業に引き渡すことで、販促投資を営業活動や受注成果に繋げていくことが可能となります。

3.ナーチャリングを強化できる
一般的に今月、今四半期、半期など、期間業績目標を担うのが営業ですが、その期間業績を達成、成長させ続けるためには、来期、再来期といった将来取引に繋がり得る見込み顧客を育み続ける必要があります。これを怠ると当然成果がどこかで枯渇します。
この様な見込み顧客を育む活動をナーチャリングと呼びますが、営業が片手間に行ってしまうと重要な期間業績にリスクを負うことになります。また、メール配信やWeb等、販促チームやマーケチームによる活動だけでは、例えばそもそもメールを見ていない、Webに来ないといったリーチできてない見込み顧客に対しては実質的に何もしていないのと同じことになってしまいます。

そこで、すぐに受注につながらない顧客や、一度商談したけど失注した顧客に対して、インサイドセールスが継続的な対応を行うことで、将来の業績を育み続ける活動が強化されます。また、その活動を通じて得られる見込み顧客に関する情報、データは企業にとって重要な武器になります。

インサイドセールスがテレアポ部隊になってしまわないためKPI設計

営業プロセスを分業化し、インサイドセールス部門を立ち上げるときによくある失敗として、「テレアポ部隊になってしまった。」というものがあります。コール数やアポイント取得数を目標に設定した瞬間に、インサイドセールスのミッションがテレアポになってしまいます。テレアポは、アポは増えるかもしれませんが営業生産性には繋がりませんし、将来の顧客を育むことにも繋がりません。そうならないためにも、インサイドセールスのミッションと紐づけた目標設定が必要です。具体的にぼくたちは以下のようなKPIを設定しています。現在の売上と将来の業績をバランスよく考えています。

インサイドセールスの重要成果指標
<短期業績貢献指標>

1.有効商談
アポイントの数ではなく、アポイントに対してフィールドセールスが初回対応をした結果、十分な見込み度があり商談として対応を継続すると決定した件数
2.貢献受注
インサイドセールスが生み出した案件が受注につながった件数や金額
<将来業績貢献指標>
3.有効対話
電話やメールでの相互コミュニケーションができた件数
4.顧客資産
履歴や取得できている情報を基に見込み顧客との関係性を段階評価し、その総数や内訳比率を数値化したもの

インサイドセールスに必要なスキル

今後もますます需要の高まるインサイドセールス職に向いている人の特性を3つ紹介します。

1.対人のコミュニケーションが好きな人
2.論理的思考力がある人
3.他責ではなく自責で考えられる人

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1.対人のコミュニケーションが好きな人
大前提として、顧客へのアプローチや社内連携を通じて多くの人とコミュニケーションを取る職種となるため、人とコミュニケーションを取ることが好きな人が向いていると思います。
但し、自分に対して好意的な人とのコミュニケーションが好きなだけで、関係性の無い人とゼロから会話をすることが好きではない人、そこにチャレンジしたいと思わない人には向かないかもしれません。

2.論理的思考力がある人
インサイドセールスは、自分自身の活動結果がデータで如実に分かります。「いつ・何件アプローチして・何%がどうなったのか」「どんな属性がどんな反応を示しているのか」などのデータに目を向け、新たな仮説を立て、実施検証し、またデータを見て改善を繰り返していくといった、データを活用して成果を高めていくスキルが求められますし、それこそが醍醐味とも言えます。そのため、数値やデータを見て、論理的に物事を考え実行に移せる人やそれを楽しめる人が向いていると思います。

3.他責ではなく自責で考えられる人
インサイドセールスはマーケや営業などの前後の工程、商材やマーケットなど、自分に直接コントロールできない他者や環境が存在する中で活動する職種です。そのため、「マーケティングが獲得してきたリードの質が悪い」や「案件化した後のフィールドセールスの対応が悪い」、「商材がそもそも悪い」、「お客様の反応が悪い」など、成果が出ないときにある意味言い訳をしてしまいやすいポジションと言えます。

その様な中で、環境が揃っていなければ成果が出せないインサイドセールスと、どの様な環境でも自分に矛先を向けて成果創出に臨めるインサイドセールスのどちらが価値が高いかは明らかです。
そのような、主体性をもって行動できる人が明らかに成果を残しています。
もちろん、健全な提案自体は重要ではあるのですが、成果を出せない言い訳としての提案にならない様、個の成果創出に向けたスタンスや行動と、全体改善のための提案は分けて行う必要があります。

インサイドセールスをはじめたいけど、人材がいない、ノウハウがないという課題をお持ちの方はこちらをご覧ください。

この記事のまとめ

今回、エムエム総研 取締役の米田光雄さんに伺ったポイントをまとめます。

この記事のまとめ
今、「インサイドセールス」が注目されている理由

・顧客データを活用するデジタルセールスが日本企業にも根付いてきたこと
・サービスのコモディティ化が進んできたため、セールスプロセスで競争優位性を持たせる必要が出てきたこと

インサイドセールスが日本企業にもたらす価値
・セールスプロセスが必要なプロダクトで、営業規模やリード数があるのであればインサイドセールスは有効
・インサイドセールスが機能すると、営業生産性の向上、マーケティング活動のROI最大化、ナーチャリング強化が期待できる

テレアポ部隊にしないためのインサイドセールスのKPI設計
・コール数、アポイント取得数を目標にした瞬間にテレアポ部隊になる
・インサイドセールスのミッションに紐づけた目標設定が必要
・例えば、有効商談数、受注貢献数、有効対話数、顧客資産など

インサイドセールスに必要なスキル
・対人のコミュニケーションが好きな人、論理的思考力がある人、他責ではなく自責で考えられる人はインサイドセールスで成果を出せる

エムエム総研米田光雄さんも「インサイドセールスの成果を上げる!」とおススメの最先端のセールステックツール「SalesDoc」。エムエム総研インサイドセールスチームの活用事例をぜひご覧ください。

インタビュアー自己紹介

池上 朋子
2021年7月、株式会社イノベーション入社。
セールスイネーブルメントツール「Sales Doc(セールスドック)」のマーケティング担当。
セールステック業界ド新人の視点で「法人営業ってかっこいいな」を伝えていきたいと思っています。
Twitter|@tomoko_ikegami