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「不思議な薬箱を開く時・薬種・薬剤編」

いらっしゃいませ。
歴史の片隅に息づく神秘の伝統薬をご紹介致します。

「不思議な薬箱を開く時・薬種・薬剤編」へ、ようこそ。
今回は、どの様なお薬が登場致しますか。
ささ、薬店内へ、どうぞ、お入りくださいませ。

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「人面瘡治療薬法」について・3

前回は、中東方面における「人面瘡」の有効投薬剤の説明をさせていただきました。
今回は、北イタリアは、ヴェネチアで発見された医療記録書をご紹介しましょう。
その資料に記されておりました症例と有効薬剤のご紹介です。

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たくさんの症例と対処の為の治療法と薬剤が、
チェコ語で書かれていました。
「Farmaceutické právo」
ファルマチオツケ・プラーヴォ
「医療法」という、大量の羊皮紙でした。

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数多の病例を連ねてあるのですが、
「Otok・nádor」
オトック・ナードル
「腫れ物・腫瘍」の項に、
「醜怪な老人の顔に酷似している不気味な腫れ物」という、
症例があったそうです。

此の腫れ物は、時として蠢き、患者に激痛を与える、
小指の先程の穴から血を吹くが、
その様は、老人が吐血をしているように見える、と。

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Stará žena
スタラ・ァジェーナ(老女)
Starý muž
スタリ・ムシュ(老人)

この資料に残された「人面瘡」は、
男女の2種がある、とされています。

チェコ語で書かれているということは、
この資料を残した医者と患者は、チェコ人かもしれません。

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患者と治療経過については、
海洋貿易の商人が、
インド方面から帰港して1週間後、
右横腹に、硬い疣状の腫れ物が見つかり、
放っておいたところ、次第に大きくなった、
そして、腫れ物は醜く変化してゆき、
ついには、人の顔のようになったそうです。

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「Metoda formulace」
メトゥダ・フォルモラツェ
製剤法

接骨木の木皮・・・・・・10枚
リチヌス精油・・・・・・小匙2杯
マチン精油・・・・・・・小匙2杯
アスプヴァイパー毒のシロップ・・・・・小匙2杯
タイパン毒のシロップ・・・・・・・・・小匙1杯

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服用法

*接骨木の木皮を黒く粘液状になるまで煎じる
*泡立たぬように全ての薬種を混合し煮詰める
*種無しパンに染み込ませて腫れ物の口に押し込む

備考欄と諸注意

言わずもがなの、猛毒揃いですね。
手袋、マスク、隙間のない防護服が必要でしょう。
一度、製剤に使用した部屋は、焼却するか、出入り禁止として、
半永久的に封鎖することをお勧めします。

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効果の程としては、
絶大との記録がございます。
ただ、前回の中東での人面瘡治療に際して記録されていなかった症例が見つかりました。

枯れて灰色の軽石のようになった腫れ物が、
瘡蓋のように変化したので、
患者から剥ぎ取ろうとしたところ、
臍の緒のような紐状の肉糸で患者と繋がっていたというのです。
医者が引き抜くと、患者は悲鳴を上げて昏倒し、
そのまま、絶命したということです。
何が災いしたのか、当時の医学では不明のままであったようですが、
鋏で切断した場合も、患者は死亡した、と、記録されています。

中東の「人面瘡」よりも、たちの悪い症例のようですね。

人種によって、症状に相違があるのかもしれません。

では、次回は、中国の「人面瘡」治療のご紹介です。

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