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2022.8.19 【全文無料(投げ銭記事)】元教育委員長が暴露…歴史教科書採択の闇

今回は、2019年に出版された、横浜市元教育委員長である今田忠彦氏の著『横浜市が「つくる会」系を選んだ理由 教科書採択の〝熱い夏〟』から歴史教科書採択の闇を書き綴っていこうと思います。


横浜市の教科書採択会議に大量動員された数百名の群衆

2009(平成21)年8月4日、横浜市庁舎周辺は、早朝から数百人の群衆が集まり、騒々しい雰囲気でした。

<(教育委員会)事務局も、不測の事態に備えて多くの職員を動員しており、エレベーターの周辺や会議室前の廊下には、「教育委員会」の腕章を巻いた職員が、混乱防止にそなえ緊張した面持ちで警戒にあたっていた。
通常の会議日とは異なり、報道関係者席もテレビカメラが入り満席で、会議室全体にピリピリした空気が流れていた。
大量動員され、約6百人以上に膨れ上がった傍聴希望者は、臨時に用意した「教育文化センター」の会場で、音声モニターを聞いてもらった。>

横浜市教育委員会(市教委)による歴史教科書採択会議の日でした。

教育委員長の今田忠彦氏は、前回の2005(平成17)年の採択会議では、6人の教育委員の中で唯一人、扶桑社の『新しい歴史教科書』を推していました。

<世の中の状況を見ると、自己中心的な考えの、いわゆる"自己チュウ"人間が多くなっています。
望まれる教育として、道徳教育をしっかり行うことと並行して、正しい歴史認識に基づき、日本人として“誇りと自信”をもてる教育を行っていくべきであり、俗にいう自虐教育は正していくべきだと思います。>

一般国民の常識から見れば、堂々たる正論です。

こういう正論を唯一人でも唱える人物が、今度は教育委員会の長として採択に望むということで、左翼陣営は危機感を抱いていました。

「つくる会」系=悪玉論という“決めつけ”

横浜市は小学校339校、中学校145校、市立高校9校、特別支援学校12校、教職員約1万6000人、児童・生徒数は約27万人、関係する保護者は50万人以上という巨大な都市ですが、その教職員の60%強、1万人ほどが横浜市教職員組合(浜教組)に入っています。

全国的には日教組加入率は減り続け、30%を切ったとされていますが、まだまだ左翼の強い地域でした。

その浜教組が、市民活動家や左翼マスコミと結託しての採択運動は、凄まじいものがありました。

<採択会議が近づいた六月後半。
団体や個人から数十件の請願・陳情が教育委員長、各教育委員宛に寄せられた。
表現内容や書式に多少の違いはあるものの、「扶桑社」「自由社」の教科書は戦争を賛美、美化し、戦争を正当化し、憲法を敵視するものであるとして、その不採択を求めるものである。
四年前よりもっと頻繁だった。
自分たちの見方が全面的に正しいという前提に立ち、〈つくる会〉系=悪玉論で、絶対相入れないという“ある種の決めつけ”を強く感じた。>

地元紙『神奈川新聞』は7月中旬に、
<教科書採択も“夏の陣”>
という大きな見出しを掲げ、次のように報じていました。

<「浜教組」が6月29日、約150人を集めて2社の教科書に反対するシンポジウムを開き、“採択されないよう活動する方針”を確認したこと>

<在日本大韓民国民団(民団)県地方本部が、〈つくる会〉系の教科書は「侵略戦争を正当化し、植民地支配の歴史を歪曲している」として、県内全市町村を訪れ採択をしないよう求める要望書の提出を進めていること>

中には、インターネットで
「今田委員長が自由社の人と会って、すでに内諾を与えている」
などという噂までが流されました。

<まったく身に覚えのないことだった。
まさにフェイクニュース。
驚きと同時に、何とも言えない寂しさと“卑劣な奴がいる”という怒りが、込み上げてきた。>

自分たちのお気に入りの教科書を、黙って採択しなさい

7月には審議会の答申が出ましたが、そこでは「つくる会」系の教科書は、推薦されていませんでした。

審議会とは、約150名の教科書調査員の報告に従って、市教委に答申を出す役割を持っています。

調査員も審議会も、浜教祖の動きを表立っては批判しない人々が選ばれていました。

そして、横浜市の共産党議員団が、
「審議会の答申を最大限尊重しろ」
という申し入れまで行っていました。

「自分たちのお気に入りの教科書を、黙って採択しなさいという
念押しとも取れるものだった」
と、当時の今田委員長は受け止めています。

しかし、今回の教育委員たちは、黙って審議会答申に従うのではなく、今田委員長との活発な意見交換を通じて、“審議会”の答申を尊重しつつも、
「最終決定権者は自分たちだ」
との責任感の下に、自分で各社教科書を読んで勉強をしていました。

採択会議では、次のような意見が出されました。

<「(自由社の教科書は)子どもにとって勉強しやすいと同時に、教師にとって教えやすいものであることが良い。
内容については、検定を通っているわけで、そのあたりは信頼して良いと思う」
「国が検定をするなかで、近隣諸国条項と言うのがあり、そのことについてもクリアをしていて、目録に登載されているわけです。
この基本の部分を私たちは、しっかりと押さえておく必要があると思います」>

教育委員による議論と採決の結果、横浜市の18採択地域のうち、『自由社』発行の教科書を8地区で採択、あとは7地区が『帝国書院』、3地区が『東京書籍』と決まりました。

自宅のポストに手書きの脅迫文

市内の中学校150校のうち71校、1万3000人の生徒が、『自由社』の歴史教科書で学ぶことになりました。

これだけの大規模採択は、全国でも初めてのことです。

今田委員長は、教科書採択問題に新しい歴史を加えることになるという感慨を覚えつつも、この先「大騒ぎになるな」という不安もぎっていました。

採択後、親しい国会議員から、
「お昼のテレビのテロップで流れましたよ」
と聞かされていました。

更に朝日、毎日、読売、産経の全国紙が、当日の夕刊で、
<横浜の8行政区で〈つくる会〉系の教科書が採択された>
と報道。

地元の神奈川新聞の親しい記者は、
「今田さん、道を歩くときは、特に曲がり角など気を付けた方が良いですよ」
と、心配顔でアドバイスしてくれたりもしていました。

その夜、疲れて帰宅すると、自宅のポストに手書きの脅迫文が入っていました。

予想はしていたものの、家にまでやって来て、じかに投函するとは陰険な脅しでした。

各紙はこんな声も掲載しました。

<自由社に決まったと聞き、子供たちの顔が目に浮かんだ。このままでは教育の場が壊されてしまう、とある女性が発言した>(朝日)

<自由社版は子供たちを“戦争する国”の忠実な国民に育てることを狙いとしている、とする抗議文を(教科書採択制度の民主化を求める神奈川の会が)採択し市教委に提出した>(東京)

これら新聞社は、左翼の活動家や市民団体の声のみを、声高に伝えていました。

また、共産党機関紙『しんぶん赤旗』は、
<『横浜市自由社教科書採択』ただちに撤回、やり直しを>
の見出しで、歴史教育者協議会前委員長なる人の、次のような発言を伝えていました。

<教科書編集者の常識から言って欠陥商品ともいうようなものです。
これを現場に押し付ければ、とても子どもたちの教育に責任を持てない状況に成るでしょう。>

文部科学省の検定を通った教科書を、“欠陥商品”呼ばわりするのは、“教科書編集者の常識”の方がよっぽど異常です。

その一方で、横浜市の広聴相談課には、この採択に対して全国から30件近い感謝のメールが寄せられました。

議会での糾弾

9月に市議会が始まると、共産党や組合選出の議員から、厳しい質問が続出しました。

「自由社の教科書は、太平洋戦争における植民地支配や侵略戦争を正当化するような記述も見受けられます。このことは、国連ピースメッセンジャー都市としての横浜の信頼を失いかねないことであり、多くの民族が共生している横浜市に於いて、友好関係を妨げるものと危倶している」

「一部のメディアでは、藤岡信勝氏と今田委員長の間に、自由社を採択するという事前の密約があったと報じられている。この採択は一種の官製談合だという声もある。今回の採択は、横浜市の教育行政の中でかつてない失政であり、大きな汚点を残した。採択のやり直しをすべきだ」

今田氏の書に、当時の様子がこう書かれています。

<私は、本会議場の自席で、質問者の随分と論理の飛躍した事実誤認の主張を、心の晴れない思いで聞いていた。
自分達の歴史観で「自由社」の教科書は、「侵略戦争を美化する特定の歴史観によって編成されたものである」と決めつけ、一方的に主張するだけなのだから。
しかも具体的な記述内容を示さずに、非難・論評するもので、説得力に乏しいものだった。
加えて、反対する人たちに共通しているのは、教育基本法、学習指導要領等、国が採択にあたって準拠すべきと定めている事項との整合性には、まったく触れないことである。>

こういった中、それでも、今田委員長は冷静に反論していきました。

若者達を自分達の陣営に引き込もうとしている

こうした騒ぎは、その次の採択で更に酷くなりました。

今田委員長は徹底した準備で、今度は歴史と共に公民分野もつくる会系の育鵬社の教科書採択にこぎ着けました。

その奮戦ぶりについては、氏の著書を直接お読み頂きたいのですが、ここでは、なぜこれほど日教組、共産党系議員、左翼マスコミが教科書採択に大騒ぎするのか考えてみます。

今田氏自身は、ある講演会で、こう語っています。

<中学校の教科書採択、特に歴史と公民については、法律の建て前はともかく、私の経験に照らして、間違いなくイデオロギー闘争になっていると思います。
選挙運動のように具体的に目に見える形ではありませんが、教科書による意識の刷り込みを通して、長い時間をかけて若者達を自分達の陣営に引き込もうとしているのです。
子どもたちのためにという美名の下に、したたかな選挙運動の要素もあると思います。
結果として、自国への誇りや愛着を感じない多くの若者の出現に繋がっているのではないかと恐れています>

本気度が足りないと言わざるを得ない

共産党の“若者の自陣営引き込み”に対して、自民党は何をしていたのでしょうか? 

今田氏は、次の採択で再び共産党の議員を中心に、教育委員会への攻撃が成された時に、ようやく自民党の議員から、この採択を高く評価する声が上がり、
「やっと市議会が左右に割れた」
と言っています。

<教科書採択については、かつては「浜教組」の動きや左側陣営の攻勢を恐れて、教育委員会事務局内部はもちろん、自民党内ですら長い間タブー視され、議論の俎上に上がってこなかった。
それがやっと議会という公の場で、その是非が議論されるまでに変化したのである。>

なぜ、自民党ですら“タブー視”していたのか?

それは、一般の有権者が自分の子供たちの成績ばかり気にして、人間としての教育に無関心だったからでしょう。

そのために、議員が知らぬふりをしても票を失わず、議会で一人頑張っても票になりません。

有権者が、もっと自分たちの子供の歴史教育に真剣であったら、その意向を受けて、議員たちも立ち上がったはずです。

一般国民が教育を学校に丸投げしている間に、日教組、共産党議員、市民活動家、左翼マスコミなどがその間隙をついて、児童生徒たちを自分たちの陣営に引き込もうと、“意識の刷り込み”を続けているのです。

これは、少数勢力による精神的暴力革命であり、子供の人権と国民主権そのものを踏みにじり、自由民主主義を破壊する行為です。

今田氏の次の言葉を、私たちは真剣に受け止める必要があります。

<教科書問題は、素直に考えれば何も難しい問題ではない。
国民一人ひとりが真面目に国の将来を考え、自分の良心に正直に行動すれば、時間はかかるが自ずと答えの出てくる問題である。
本気度が足りないと言わざるを得ない。>

私たちの子供たち、孫たちを中国、ロシア、北朝鮮のような国に住まわせたくなかったら、現在の私たちが本気になるしかないのです。

最後までお読み頂きまして有り難うございました。
正しい歴史認識を持った次の世代育成のため、投げ銭のご協力を頂けましたら幸甚です!

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