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2022.12.13【蔡英文の大敗】裏で何があったのか?

今回は、日本でも話題になった
「台湾の蔡英文総統が党主席を辞任」
について書いていこうと思います。

台湾で行われた統一地方選挙。

はっきり言って民進党は、信じられないような大敗をしました。

というのも、蔡英文政権そのものは、非常に高い支持率を維持しています。

2期目でなお支持率50%超えは台湾では異例なことです。

経済成長率もとても良く、個人国民所得は、今年初めて日本と韓国を抜くほどに高くなりました。

つまり、負ける要素はほとんどなかったのです。

なのに、なぜ大敗してしまったのか?
これには2つの理由があります。

予備選挙の廃止が裏目に…

一つは人選ミスです。

本来、民進党は選挙の前に党内で『予備選挙』を行います。

まず党内で戦わせて、一番強い人を立候補させるのです。

しかし、この方法だと本選挙に入る前に、党内でいさかいが生じることもあるので、今回はそれに配慮して、実質的に蔡英文総統に一任する形となりました。

実はそれが、裏目に出てしまったのです。

蔡総統は、外交と国防の分野ではとても素晴らしいリーダーシップを発揮していますが、党内・地方勢力の派閥や権力分配には全く無関心です。

しかし、地方選挙の場合、地方の派閥、勢力、利益分配にある程度精通しなければ、候補者を立てることは難しいのです。

蔡総統は、そこを無視して人選を無理やり押し付けるような部分がありました。

例えば、新北市長候補だった林佳龍りんかりゅう氏は、元々、台北市で立候補しようと入念に準備していました。

ところが彼を、全く地盤もない新北市に立候補させたのです。

つまり、本来なら勝てる候補者を勝てないところに立候補させてしまいました。

民進党にも色々な派閥があるため、この派閥の支持基盤を見極める必要があります。

これにより民進党は、今回の選挙で一致団結していませんでした。

これは民進党内に敵への油断、驕りと慢心があったと言えます。

若者が離れたネガティブキャンペーン

そして、もう一つの敗因は何か?

今回の選挙では、政策を出して政策論争をするよりも、民進党も国民党もネガティブキャンペーンで、お互いの政党を批判・個人攻撃することばかりしていました。

このようなネガティブキャンペーンに若者は嫌気が差しているので、今回は自分の故郷に帰って投票するような様子もなく、若者にとっては全く魅力のない選挙になっていたのです。

しかし、民進党の支持者層の多くは若者です。
つまり、若者が投票に行かなければ、民進党の票が減ってしまうということです。

2年後の総統選はどうなる?

明らかに今回の失敗によって蔡総統の影響力は弱くなり、これからはポスト蔡英文の時代が始まります。

総統としての任期は残り1年と少しですが、党の主席を辞任したことでレームダック化するでしょう。

そして、今回の責任を問われる中で、内閣改造の可能性もあります。

そうなった場合、2024年の総統選挙では、蔡英文の意中の人物が立候補できなくなる可能性が非常に高くなります。

現時点で、2024年の総統有力候補は3人います。

頼清徳らいせいとく(副総統)
陳建仁ちんけんじん(前副総統)
鄭文燦ていぶんさん(桃園市長)

この3人のうち、陳建仁と鄭文燦の2人は蔡英文の意中の人選です。

しかし、今回の選挙によって、この2人が立候補する可能性は非常に低くなり、現副総統の頼清徳が総統候補になる可能性が高くなりました。

実は皮肉なことに、頼清徳の支持者たちが今回の選挙であまり積極的に動かなかったことも大敗した1つの要因です。

本人がどう思っているかは別として、彼の支持者らは、明らかに今回の選挙で民進党の足を引っ張ったのです。

結果的に、頼清徳にとっては、かなり有利な情勢となりました。

確かにこの3人の中で考えると、頼清徳は良い人選だと思います。

しかし、敵である国民党は今回の選挙で勢いづくはずですから、民進党もこのまま内部闘争をしている余裕は無くなり、一致団結せざる得なくなるでしょう。

そういう意味で、今回の大敗は決して長い目で見れば悪いことではありません。

民進党が、この大敗を反省して一致団結して気を引き締められるかが、今後の鍵になると思います。

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