salty valley

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  • 2017年3月場所

    3月場所を振り返って。 波乱、盤石、安定、波乱、逆転、奇跡。 様々な要素がこれでもかと詰め込まれた15日間。 長年にわたって相撲を見続けてきたものにとって、これほどの場所はなかったのではないだろうか。 何も語らずにはいられないので、独白としてここに語らせていただく。長文ですので、おヒマな時にご興味のある方だけお読みください。何章かに分けて記載致します。 (文章内における敬称(〜関)は省略させていただいております)

最近の記事

エピローグ(1172字)

NHKのドキュメンタリー番組「新横綱・稀勢の里 激闘15日間の記録」 を見た。 稀勢の里、本人がこの3月場所を振り返っていた。 改めて稀勢の里の生真面目な人柄がよくわかる30分である。 客観的な側面でしか人は見ることができない。 そうした時に、周りは勝手に自分たちの思うような土俵上でのドラマを読み取る。 正しいかどうかは二の次に、「こう見ればもっと相撲が面白くなる」というような自己満足にも近い見方がほとんどである。 稀勢の里のコメントも全部が全部本心・率直な気持ちを言葉

    • 最終章〜稀勢の里の奇跡〜(3216字)

      稀勢の里(12勝2敗)と、照ノ富士(13勝1敗)の一番は結びの一番の一つ前に組まれた。 照ノ富士が勝てば、照ノ富士の優勝。 稀勢の里が勝てば、優勝決定戦に。 優勝決定戦での勝者が、優勝。 照ノ富士はとにかく一勝すれば優勝できる。一敗の猶予がある。 一方稀勢の里は2連勝が優勝への道しかない。一敗も許されない。 好角家の間では昨日の結果も踏まえて、照ノ富士有利の声が大半を占めていた。 ただ、「何かが起きて欲しい」という土俵上でしか起こり得ないドラマ性にも期待して

      • 第5章〜誰もが主人公〜(2419字)

        今場所は稀勢の里が12日目まで連勝を重ね、単独トップであり続けた。 白鵬が序盤に休場、日馬富士・鶴竜も10日目時点で3つの黒星で差をつけられ13日目には優勝の可能性すら無くなっていた。 そこに星一つの差で追っていたのが大関照ノ富士である。 かつては稀勢の里に先んじて賜杯を手にした彼が、虎視眈々と稀勢の里に迫ってきた。 前日に照ノ富士の兄弟子日馬富士によって黒星をつけられ、まずい怪我をしてしまった稀勢の里。14日目には結びの一番で前述の通り、鶴竜に(当然)あっさりと

        • 第4章〜初優勝から横綱昇進〜(2764字)

          2017年1月場所。稀勢の里にとって運命の場所であった。再び「全勝優勝くらいのハイレベルな優勝」を綱獲りの条件に出されながら、場所前の不調論をよそに稀勢の里は再び勝ち続けた。9日目にかど番の大関琴奨菊に黒星を喫すも、上位陣の休場などの流れも重なり14日目まで単独トップの13勝1敗。星一つ差で白鵬が追う展開。ファンは今日白鵬が勝って、明日は直接対決で優勝が決まるだろうな、と予想していただろう。しかし、この日初顔合わせの貴の岩に白鵬が破れる波乱。千秋楽を待たずして、稀勢の里の優勝

        エピローグ(1172字)

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        • 2017年3月場所
          7本

        記事

          第3章〜稀勢の里の軌跡〜(2375字)

          遡ること13年前、朝青龍全盛の相撲界に期待の新星が現れた。 平成の大横綱、貴乃花の最年少記録に次ぐ2番目の若さ(18歳3カ月)で新入幕を果たした力士、「萩原」改め「稀勢の里」。 十両への昇進も貴乃花に次ぐ記録(17歳9カ月)である。 この頃から大相撲ファンの心はくすぐられている。当時のライバルはヨーロッパ初の力士で長身の琴欧洲(現:鳴戸親方)や小兵・業師の豊ノ島で、かつての「若・貴・曙時代」の再来と胸熱くして見ていたファンは私の他に少なくないと思う。 正にその名の通り

          第3章〜稀勢の里の軌跡〜(2375字)

          第2章〜相撲人気の復活に賭けて〜(1667字)

          八百長問題発覚以後、低迷し戦後最低にまで落ち込んだ相撲人気。 相撲協会の様々なテコ入れや改革によってファンへの新たなサービスやアプローチを展開してきた。 更に近年では琴奨菊や豪栄道の日本出身力士の優勝なども相撲人気の復活に力を添えたことは間違いないのではないだろうか。 もちろんモンゴル出身力士達の活躍も忘れてはならない。 絶対的な横綱として、君臨し続けている白鵬。彼の負ける姿を取組前にはとても想像できない。低迷期に一人横綱として相撲界を支え続けてきた大相撲の支柱である

          第2章〜相撲人気の復活に賭けて〜(1667字)

          第1章〜相撲人気の隆盛と衰退〜(1161字)

          今回の春場所を語るには、大相撲人気の変遷について語らねばならないと思う。 (私の経験と主観に基づいておりますので、ご理解のほど。) 子どもの頃夕飯時、気づけばチャンネルはNHKに合わされており身体の大きな力士たちの一対一の闘いを映し出していた。 千代の富士、北勝海、大乃国、小錦、旭富士、霧島、寺尾、北天佑、琴錦、朝潮、、、、個性あふれる力士たちの取り組みに手に汗握りながら贔屓の力士を応援していた。 昭和から平成に移ると貴乃花、若乃花、曙、武蔵丸、貴ノ浪、魁皇、千代大海

          第1章〜相撲人気の隆盛と衰退〜(1161字)