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アジア人一緒くた問題でアイデンティティクライシスに陥った話

私はアメリカの建設会社のエンジニアです。設計や現場ではなくて施工計画や見積もりの方の人です。この業界は外国人が基本的に多く、移民の痛みや苦労は説明なしでわかる人が多数派で、私にとってはとても居心地がいいです。月曜日が全然嫌じゃ無く仕事の内容も面白いです。最初にここで働いたのは20年近く前、出戻りで通算8年います。

事の発端は1年前。当時は私はまだ子育ての関係でパート契約で安売り状態でしたが仕事は社員並みにこなしていました。

そこに新卒がやってきたんです。修士出たばかりの。
珍しく中国人の女性。小柄で私(147㎝)より数センチ高いかなくらい。アジア系女性が極端に少ない業界。なかなかの根性ある奴かもしれない、と嬉しくなりました。

で一緒に働き始めましたが、新卒だから右も左も分からないじゃないですか。アメリカの会社はそんなに丁寧に指導なんてしてくれないから大変だろうなと思って、親切にしていたのに、私を見下しているのかなんなのか、まず私に質問せず、男性社員に質問するんですよ。そしてその人が答えられなくて私が答えても、また他の男性社員に質問するんです。それどころか私のどうでもいい小さなエラーを見つけては、上司に報告しやがる。笑

しかもキャラがいわゆる「オタサーの姫」。ガチのゲーマー。自分を天才だと思っている。勉強はできるんだろうけどね。建設会社にフワフワの服で来て「ガールズパワー!」みたいなことを言う。

めんどくせえ。
日本の高校や大学時代にもこういうタイプ見てきたけどさ。サムネのイラストのような活発少女だった私にとっては、
めんどくせえ。

そしてふと思ったんです。私はこの人の10倍の仕事をこなしているのにパート契約だから福利厚生無しで給料も低い。
これはおかしいだろ。そして夫と相談して決めました。
フルタイム社員に戻る。リモート勤務の夫が兼業主夫やる。
翌日、上司に相談すると、1秒でオッケー出ました。
もう待ってましたとばかりに。笑
実は上司もちょっとこの新人の扱いに疲れている感じでした。

良かった。これで私もバカにされなくなるだろう。

ところがですよ。この上司が私と新人を呼び間違えるようになったんです。これはね。本当にイラっとくる。
小柄なアジア人女性である以外には、年齢、経験、社会的バックグラウンドが全く違う人ですよ。そして顔も体型も髪型も似ていない。

私はオタサーの姫を取り巻く男子に「怖え。ビッチに違いねえ。」と言われて「間違いねえ。」と答える奴だっつの。笑

ところがアジア人じゃない人にとっては一緒くたで、実は「Interchangeable Asian」というキーワードで検索するとわかると思いますが、アメリカ生まれのアジア系アメリカ人でさえ、有名人でさえ、こういう事がしょっちゅう起こるんです。特に女性。その人の個性を尊重してないって事。要するに「アジア人」というのが先に来てしまうんですね。そして歴史的な理由で重要だと思っていないって事。

結果、アジア系アメリカ人が企業で重要なポジションに就くことは今でも難しく、「バンブー・シーリング(竹の天井)」とか言われています。

上司だけでなく、他の社員の一部も間違えていました。
悪気はない。そう思ってもモヤモヤが止まりません。

彼女もだいぶ堪えていたようでした。まあ年齢がお母さんとあまり変わらない人と一緒くたにされているわけですしね。笑

私からしたら、若い子と一緒くたはいいけれど笑、逆に言えばこのベテランのオバチャンを軽視すんなよっていう怒りです。

それでもアジア人あるあるだから仕方が無いとしばらく我慢していましたが、中には「ID、そっちの使ってもバレないんじゃん?」とか「あれ?どっちがどっち?」とか言ってくるやつらが出てきました。人によっては私たちを比較することにも気が付きました。他にも男性で同じようなポジションの人は何人もいるのに、それとは比較せず、アジア人女性同士を比較するわけです。

これはもう限度を超えています。

こういった扱いにはさすがに2人同時に抗議し、ようやく打ち解けました。私は敵じゃない味方だとわかってもらえたようです。新卒だから新しい環境で身構えていたのかもしれないですね。

会社の人事にこの問題を相談しました。まあ白人は深くは理解できていないっぽかったですが、黒人女性は理解してくれました。同じような経験するんでしょう。その後、会社が定期的にやる社員教育の中に、その人の見た目や人種、出身、年齢、宗教、ジェンダーなどのバックグラウンドで決めつけたり、機会を与えないというのはいけませんというビデオを含めるという形で、一応一件落着しました。

でも、私の精神は結構ボロボロになりました。
ただでさえ、この世の中の女性差別はまだまだ根強いのに、若い女性にまで見下されたり、アジア人一緒くたで「どーでもいい族」だったり。この自己認識と世間の扱いの差よ。

私は一体何なのかと。

あ。ユーチューバーだったでござる。笑

というわけで、だいぶ立ち直ったのですが、結局その中国人の女性はやめてしまいました。この問題を通してだいぶ仲良くなったんですけれどねえ。

うざかったあの子がいなくなったというのに、なぜか寂しくなりました。

で、その後、会社の人たちが最近ちょっと私に優しくなったんですよ。人事が用意したビデオのお陰?
それとも自分たちの酷い扱いのせいで、仕事こなしている私が辞めたら大変だと焦ってる?

なんかこれはこれで怖えよ!笑

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