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コミックナタリー15周年企画「この15年に完結したマンガ総選挙」


https://natalie.mu/comic/pp/comic15th

……の事前エントリーにいくつか作品を挙げた際、エントリー理由を書き添える項目があったんですが、なんだか筆が乗って私的レビューになりましたので、それを残しときます。字数制限とかはなかったけど、”もし読者の声的な感じで掲載されたら”という自意識のもと、読みやすかろうと短い文章にしました。(作品の画像は、長シリーズの場合好きな巻にした)
ちなみに『それでも町は廻っている』だけ本投票に上がりました。


2016年完結

『それでも町は廻っている』 石黒正数

高校時代に出会い、私の人生そのものになった作品です。真の“日常”とは、こうも恐ろしくこうも奇妙で、しかし圧倒的に豊かであることを思い知らされます。推理小説さながらにバラバラに散りばめられたピースを読者が自ずから編んでいく、漫然と読むだけでは到達し得ない「考える楽しさ」も知りました。 


2014年完結

『もやしもん』 石川雅之

「菌が肉眼で見える」という特殊能力を持った主人公、というオモシロ設定だけでは語れない魅力のある作品。菌だけではなく「見えないもの/わからないこと」に如何に向き合うか、またそれが生きることを如何に豊かにするかを教えてくれた大事なマンガです。


2018年完結

『月曜日の友達』 阿部共実

マンガにおいて、まさか小説のような「地の文」をここまで効果的に見せることができるのかとただただ驚き、またその語りが中学生の等身大の悩みを文学レベルまで昇華していて感動しっぱなしの作品でした。これは「読む」ことで完成する作品だと思っているので、絶対にアニメ化まして実写化などして欲しくない、と思っています。


2016年完結

『第七女子会彷徨』 つばな

現代版「ドラえもん」のようなテイストだと思って読み始めたらいつの間にか途轍もなく広大な場所へ連れて行かれる作品です。伏線回収、なんて安い言葉では表したくない、とても切実な終盤の展開に胸がギュッとなります。


2009年完結

『もっけ』 熊倉隆敏

「奴らは居ンのが当たり前ェ」。この作品の魅力はこの台詞に集約されていると思います。今でこそ妖怪・怪異を取り扱ったマンガは多いですが、この作品では一切「妖怪」という呼称は登場しません。名付けられるより更に手前の、でも確かに「居る」存在。それらとどう付き合っていくか。本当の多様性の残酷さと面白さを描いている傑作です。


2010年完結

『ハックス!』 今井哲也

「高校生がアニメをつくるマンガ」という、まるで萌え4コマのような主題ですが、青春の苦みを克明に描いた作品だと思います。リアルな口語の台詞とテンポの良さで、「ぼくらのよあけ」「アリスと蔵六」へと続いていく著者の萌芽があちこちに見られて色褪せない魅力があります。


2018年完結

『銀河の死なない子供たちへ』 施川ユウキ

これぞマンガ。マンガにしかできない「死ぬこと/そして生きること」への迫り方だと思います。主人公たちに流れる長大な時間を、コマ単位でザクザクと跳躍していく様だけでも震えます。たった2巻で終わる潔さも、読み手に問いかけや余韻を残すのにとても効果的な働きをしていると思います。


2013年完結(第2部2017年完結)

『はやて×ブレード』 林家志弦

本当に全てのキャラクターに魅力があって、お気に入りキャラたちの大運動会が如き様を見ている間に全18巻が過ぎていってしまいます。おまけに第2部(全6巻)もありますが、正直永遠に見てられる気がします。何よりテンポがすこぶる良いのでシリアスになりすぎず、けれどキャラクターにとって切実な問題にはきちんと向き合う姿勢があり、著者こそがどんな読者よりもキャラたちを愛しているのだなと感じます。


2019年完結

『湯神くんには友達がいない』 佐倉準

「○○さんは○○○」的なタイトルはよくありますが、この作品ほどその類型を壊していっているものは無い気がします。全登場人物がそれぞれの思惑(時に思い込み)で行動し、そのズレを俯瞰するとちゃんとコメディになっている。お手本のような喜劇の構図に感動すら覚えます。キャラではなくそこに「人」がいるのだなと感じられてグッときます。


2021年完結

『悪魔のメムメムちゃん』 四谷啓太郎

かわいくてエッチなキャラで溢れているのに、主人公メムメムちゃんの精神が腐りすぎていて、ド級にハードなギャグマンガになっている凄い作品です。「死刑」の回が忘れられません。人間(悪魔ですが)の業をギャグに昇華するという意味では、赤塚不二夫作品の系譜にあるのかもしれません。


2013年完結

『どうぶつの国』 雷句誠

「金色のガッシュ‼︎」がギリギリ対象外だったので替わりに…なんて言えない、著者の第2の代表作です。どんなにポッと出に見えるキャラクターにも骨太なドラマが用意されていて、涙腺の油断を幾度となく突かれます。このボリュームでありながら意外と14巻で完結しているのも凄い。


2015年完結

『GA 芸術科アートデザインクラス』 きゆづきさとこ

王道の萌え4コマフォーマットで始まった作品が、いつしか登場人物たちが切実な悩みや葛藤を抱えることで独自の輪郭を持ち、萌え4コマらしからぬ余韻をもたらしてくれる味わい深いマンガです。著者曰く「この作品の影響で美術を志した人々に対して向き合った結果」だという終盤の教師陣のやりとりには、その真摯さと誠実さを見て胸が熱くなります。


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