見出し画像

F1 ”Bチーム”の存在について考える

バルセロナでのプレシーズンテスト初日から話題をさらったのが「ピンクのメルセデス」こと。レーシングポイント。昨年のチャンピオンマシンであるメルセデスW10に酷似したデザインで、メルセデスに次ぐタイムを叩きだして物議を醸しました。

画像1

今のF1にとって、これらBチームの存在について考えてみたいと思います。


■ワークスとカスタマー
 豊富な資金を元にパワーユニットからシャシーまで独自に開発するワークスチームと、ワークスチームからパワーユニットを購入するカスタマーチームに大きく分けられます。カスタマーチームは限られた予算の中で、いかに効率よくマシンを開発し速い車を作れるかが重要なポイント。

現在の体制図はこんな感じです。

画像2

-メルセデス陣営
 メルセデスのPUを搭載しているのは、ウィリアムズとレーシングポイントの2チーム。ウィリアムズは独自開発にこだわり続けていますが、多くの共通パーツを使用しながら、同じ風洞も利用するレーシングポイントは、正にメルセデスのBチームと言えます。

-フェラーリ陣営
 フェラーリのPUを搭載しているのは、ハースとアルファロメオの2チーム。ハース、アルファロメオ共に多くのパーツをフェラーリと共有している事から、共に実質Bチームと言っても良いでしょう。

-レッドブル×ホンダ陣営
ホンダPUを搭載するのは、レッドブルとアルファタウリ。そもそもレッドブルのBチームとして立ちあがったトロロッソを起源としている兄弟チーム。

-ルノー陣営
唯一ルノーPUを搭載する、本家ルノーとマクラーレンは他の陣営とは関係が異なります。
 ワークスチームよりも好成績を残しているマクラーレンはマシン開発におけるデータも共有したいというルノーのオファーを断り、2021年からはメルセデスPU搭載を決めてしまいました。ルノーは実質Bチームを持たない唯一のワークスになってしまいました。

画像3

■カスタマーチーム Bチーム化の必然性
 莫大な予算を持たないカスタマーチームは、PU以外にもサスペンションやドライブシャフトなど共通化可能なパーツの供給を受けることができます。
更に、パーツだけでなくワークスチームの風洞設備を使用する事が可能な契約になっているチームも存在します。
 そもそも、ワンパッケージで造られているワークスマシンからパーツを提供されている限り、最も効率良く速いマシンを作る戦略は、全体設計の方向性を理解して模倣する事。なのでワークスに近しいマシンが出来てくるのは今の流れからは当然だと思います。

■ファンにとってはどうなの?
 トップ3チームを真似したマシンばかりが出てくる事に対して賛否ありますが、個人的には全然ありだと思っています。トップ3チームが抜け出るのは今のレギュレーション下ではしょうがない。
 そんな中、第2集団の争いが見られることも面白いし、メルセデスを模倣したレーシングポイントがフェラーリを喰ってしまうなんて事があったらそれはそれで面白い。
 まさかまさか本家を喰ってしまうBチームが現れるなんてことも。あるかも知れないですしね。

■このままでいいのか?
 これを考えるうえで、まず必要なのは「FIAがどう考えているのか?」
FIAとしては、「高額なコストをかけたチームだけが成功をおさめ、そうではないチームが全く相手にならない」という世界を望んではいない。
 そこで、ボディーワークの単純化、予算制限(年間189億円)、共通パーツの導入など。少ないコストで、より接近したレースが行われる。潜在的な新規参戦の可能性を残しながら、既存のワークスチームが経済的な打撃により急遽撤退するという自体を避けたいと考えています。
 このことを前提にした時、この問いに対する答えはNOに変わります。
予算制限がかけられる次の5年間。基本的な方向性が定まった後には独自の進化を遂げる可能性があります。そうなった時に模倣するだけのチームと、今のマクラーレンやウィリアムズのように独自開発をするチームの戦いが起こって・・・。
 もしかしたらマクラーレンやウィリアムズが躍進するなんて可能性も、今よりは高まるのではないかと思っています。

■総括
F1に限らず、我々の周りでも他者を模倣し続けたブランドが一時期躍進したとしても、いずれ集落してしまうように。いつか必ずオリジナルな部分を輝かせないといけない瞬間は来る。時には世界中が右だといった時、リスクを承知で左に行く時もあるし。競合が右だ、左だと言っている時に、上に進むブランドもある。そうしてイノベーションを起こして勢力図をひっくり返す。そんなことがレギュレーション変更もなく行われています。

 幸いF1にはFIAという支配者がいて、ある程度の周期でレギュレーションを変える。限られた時間の中で、「トレンドに乗った開発をするのか」、「あるチームを模倣するのか」「独自の開発にチャレンジするのか」が問われる。失敗したとしても、また模倣するところから始めたり。レギュレーションが変わればまたゼロリセット。

こんな力学の中、来年からレギュレーションが大幅に変わる今年、多くの模倣Bチームが出てくるのは避けられないし、次なる進化のための必要なステップだと思っています。

=お楽しみいただけましたか?=
お楽しみいただけましたら是非フォローお願いします。
サポート機能でサポートいただけるとテンション上がります

SNSもやっているのでぜひフォローしてくださいね!
Twitter:@sameal3104

よろしければサポートお願いします。 サポートはF1や自動車に関する取材等に使わせていただきます