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ぼくらが家族で旅に出る理由。

旅について書こう、と思うと、脊髄反射で「ぼくらが…」と始まってしまう世代のわたしだが、まさにあの歌があちこちで流れていた頃のわたしは、ひとりでご飯を食べることと、公共交通機関を利用することが大の苦手で、旅を好んでするほうではなかった。

しかし「母は強し」とはよく言ったもの。
長男が生まれ母となってから、長男の要求に応えるべくいろんなところへ行けるようになった。

彼は、赤ちゃんのときから不思議なくらいに電車が好きだった。

ぐずっていても「電車に乗るよ」と語りかけて外に出れば、もうワクワクと目を輝かせる。乗ったら乗ったで睡魔に飲み込まれてしまうまで、目をまんまるにして、「ガタンゴトン」とよく表現される電車の音を、のどの奥なのか鼻の奥なのかよくわからない場所から、文字では表現しにくい音で発しご機嫌だった。

そんな彼の影響で、ちょっとした日帰り旅や、家族で出かける旅行には、なるべく電車で行くか電車に乗るタイミングをつくる、ということがメインテーマになっていった。

夫の好きな城めぐりと、わたしが喜ぶご当地グルメは、電車旅とは相性がよく、全員の希望を取り込みやすかった。

しかし、3歳違いで誕生した次男はそうはいかなかった。赤ちゃんのときから、いや、おなかにいるときから、ずっとずっと付き合わされていたことが苦痛だったのか、極力電車乗りたがらない人だ。乗ってもすぐに退屈してしまう。

困った挙句、次男の好きなヒーローや美味しいおやつを絡めつつ、まだ乗ってない路線や乗ってない電車に乗るというプランを編み出した。

けっこう遠くまで来てるのに、わざわざその地のハウジングセンターへ行き、ヒーローショーをみる、なんてこともあった。

ヒーロー系絡みの電車を見に行くこともあった。

家族旅行なのに往路は電車班と車班に分かれて到着駅で合流ということもあった。

そう、ぼくらは 「各々の好奇心をなるべく一緒に満たす」 ために家族で旅に出る。

これはお互いの好きなものを知り、尊重し合えるというとても良い点がある反面、ちょっと不機嫌になればお互いを否定し、けなし続けるという、おそろしくマイナスな点もある。

でも、あの時は違った。

夫が仕事でひとり海外に行ってしまっていたとき。

「パパが向こうで待ってるからみんなで会いに行く」という共通の確固たる目的で、長時間の電車も飛行機も、好みでないおやつも、やったことない渡航手続きあれこれも(←これ、わたし)各々苦手なことも文句言わず乗り越えることができたっけ。

ひとりよりも、みんなで目的に向かえばとても心強いし、楽しさも達成感も何倍にもなるって知った旅だった。

ぼくらは、ときとして 「ひとりでは困難な目的を果たす」 ために家族で旅に出る。

この10年くらいで、大小さまざまないろんな旅をしたけど、だんだんお互いに共感したり譲ることができるようになってきている長男&次男と、二人がいてくれればなんでも嬉しい三男と、みんなで旅に出る機会もそんなにたくさんあるわけではない。
それを思うと、正直いろいろ消耗もするけれど、旅に出ることに前のめりでいたい気持ちになる。


そのうちに長男は一人旅にも出るようになるだろう。

今でも旅のプランをすすんで考えている長男に、プランニングや移動の心配はあまりしていない。遅延や乗り間違いなどのハプニングくらいならわたしよりもずっと冷静に楽しんで対応できるだろう。

ただひとつだけ心配事がある。

彼は、おみやげ選びに時間がかかる。
迷いすぎて気持ち悪くなるほどに決められない。

その土地のものにこだわったり、ここでしか買えない、これを見るたびに嬉しくなる、喜んでもらえる、、、などおみやげにかける期待値というかハードルが高すぎてまったく決めれない。

いまやネットであらゆるものが買える時代、そんなにこだわらなくても、と思うが、かく言うわたしも、まったく同じ性質の持ち主のため、苦労して苦労して結局よく分からないものを買う、というお決まりパターンを回避できない。

次男の「おみやげとかこつけて、ただ自分の欲しいものを買う」という図太いまでの精神を、少し分けてあげたいほど。←わりとどこでも手に入るぬいぐるみや、たまたまおみやげ屋さんにもあったけど普通のおもちゃ屋でねだっては却下されるもの、ガチャガチャ、など今だ!とばかりに手に入れる。

でも、それでいいんだな。
旅に出ていること自体が、そこで体験する全てがすでにおみやげなんだから、どんなおみやげを買おうと、それはすでに旅の一部で、旅のおみやげなんだ。

まあ、そうとは思うが、
可能であればおみやげ選び訓練をして、長男が来年の修学旅行でペナントや提灯(って今もあるのかな…)を買ってこないよう祈るのみ。

次男は祈っても「剣」を買ってくることが今から安易に想像できる。

旅は、個性そのもの、なのかもしれない。

かわいい子には旅を。
そして、かわいい子の旅を、わたしは近くから遠くから見守りたい。

今はけっこう、旅が好きだ。

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