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32.「自己分析はするな」|人事が語らないホンネ話 #Zoom戦略会議

「みんなが会いやすい大人には会うな」「自己分析はするな」「面接で夢を語る学生はこわい」…。

そんなパンチラインぞろいのホンネ話をしてくださったのは、パーソルグループ 新卒採用統括責任者 はたらクリエイティブディレクターの佐藤裕さん。

今までイベントで「ホンネ」といいつつ、そこまで強いものを見てこなかった私だが、「これは本当に今まで聞いてこなかった話ばかりだ…」と感じたため、今回はそこに注力して書いていきたい。

今回も毎度お世話になっている株式会社VMK主催の #Zoom戦略会議 シリーズだ。いつもお世話になっております。

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■利害関係のない社会人に会え

裕さんは自己紹介をする前にこうおっしゃった。

「社会人の自己紹介を聞くときは、相手は何をやっていて、何ができるのか、自分に対するメリットは?というところをしっかり聞いていてほしい
だましに来ようとする社会人も世の中にはたくさんいるし、社会に出ると人を見分ける力も必要になってくる。
だから、今のうちから見極められるように訓練しておいてほしい」

そこから自己紹介が始まり、ものすごい肩書に圧倒された。笑

肩書を書ききることはしないが、芸人の友近さんとご友人だったり、以前は最年少営業部長を任された経験もあるなど、現在の肩書に限らず、友人関係や今までの経験も素晴らしい方だった。


年間1万5,000人もの学生に会うという裕さんは、「みんなが出会いやすい社会人とは会うな」とおっしゃった。

みんなが出会いやすい社会人というのは例えば、新卒採用担当の人事や学生向けオンラインサロンの運営、マッチャ―などの就活生向けサービスを使っている社会人。

このような人たちとは、お互いが「接触機会を増やしたい」という部分で利害が一致してしまう。学生と触れ合う機会を増やすことで、自社の採用を増やしたり、お金に換えようとしているのだ。
中には、そういった目的でない人もいるが、「就活生を助けた」という気持ちよさのためであることが多く、そういった人はキャリアに関する知識が豊富ではないことがほとんどだという。

このような利害関係のある人やキャリアの知識が少ない人と会うことにより、インプットされる知識が偏ってしまい、余計に世界が狭まる可能性もある。


ではそうならないために、利害関係のない大人と会うにはどうすればいいのだろうか?「会いにくい大人に会う」のはそれなりにハードルが高そうだ。

もし「会いにくい大人」に会いたいならば、就活に関係のないオンラインサロンに入り、そこにいる社会人と繋がるのがおすすめだそうだ。裕さんも来月学生と利害関係のない社会人が集まるようなオンラインサロンを開設するそうなので、興味のある人は注目してもいいかもしれない。

もしくは、バイトでそういった大人が集まる場所を選ぶのもいい。

裕さんは「もし裕さんが今のまま22卒に戻れたらどうしますか」という質問に、「エグゼクティブ(=上級管理職)の通うバーでバーテンダーのバイトをするかな」とおっしゃった。

優秀な社会人の集まるバーでバイトをしていると、最初は全く話についていけないらしい。
しかしそこで、話についていこうとして勉強したり、いろいろ教えてもらうことで社会に対する知識が深まっていくという。


こうして社会人と会うことで、世の中に対する「わからない」を無くしていくのが大切だそうだ。

先ほど言った、「会いやすい大人」たちは、世の中の裏側はなかなか見せず、学生に都合のいいことを言う人が多い。
その方が、企業への応募者やサロンの入会者が増えるから。

だから、利害関係のない人を選ぶことで、社会の裏側を知り、自分の認識実情のとギャップを減らすことが、学生にとって大切になってくるというのだ。



■自己分析はするな

この話をする前に、「自己分析」と「自己理解」についてしっかり分けておきたい。

「自己分析」とは、自分の過去を振り返って、自分の思考傾向や価値観の軸などを見つけ出す行為のこと。
それに対して、裕さんの言う「自己理解」とは、自分の癖や価値観になった原因となるストーリーを見つけ出していく行為のこと。


裕さんが必要ないと言うのは「自己分析」のこと。すなわち、過去の行動から未来の思考傾向を探し「軸」として決めてしまう行為のことを指している。

裕さんが「自己分析は必要ない」と言う理由は、自己分析ができた歴史にある。

自己分析ができたのは、まだインターネットが普及していないころ。
当時は就活するとなると、某人材会社から段ボールいっぱいのハガキが送られてきたそうだ。
しかし当時は、インターネットが普及していないこともあり、情報源は親と新聞とテレビ。自然と大企業にハガキは集まっていった。

それを快く思わない中小企業のためにその人材会社が作り出したのが自己分析だったという。
いくつかの質問に答えると、系統が振り分けられた。すると、学生は「自分に合っているらしい」ということで、中小企業にもハガキを出すようになっていったという。

それから20年あまりたち、今となっては学生側が自己分析を科学するようになった。

5年後の価値観が今の価値観と変わらないと信じ込み、企業に就職する。
しかし、価値観が変わらないことなんて変化の激しい今の時代にはありえないこと。もし本当に5年後の価値観が今と変わらないなら、社会に適応していけないだろう。

バブルの時代は、軸を決め切った企業選びでもまだ問題なかった。
なぜなら、当時の社会の価値観が「仕事はガマンするもの」だったし、終身雇用が約束されていたから。
だから自分の価値観と違っていても我慢して60歳まで勤め上げればよかった。

しかし今の時代は、終身雇用もないし、転職があたりまえの時代になってきている。「好きなことを仕事に」と言われるように、仕事はガマンするものでもなくなった。

すると、5年後の価値観と今までの価値観が変わらないという理想が、早期離職を生む要因になってくる。

だから、自己分析は必要ないというのだ。


ここで、「自己理解」についての話も触れておきたい。

自己理解をするためのステップは簡単で、今自分の持っている価値観や好き・嫌い、習慣や癖などを書きだす。そして、それに至ったストーリーも一緒に書きだすということだ。

例えば私は、大阪出身なのにすごく沖縄が好きで沖縄のために活動している。
「なぜ沖縄が好きなんですか?」と私が聞かれたときに「海が青くて素敵だから」とか、「沖縄独特の文化や音楽が好きで」と言われても、ピンとこない。
それはきっと、同じように「海が好き」「文化が好き」と言っている人でも、沖縄に移住するほどでなかったり、沖縄のために活動するほどでない人もたくさんいるからだ。「私らしさ」がないのも、説得力に欠ける一つの理由だろう。

しかしこれに、私自身の経験を入れてみるとどうだろうか。
私は沖縄県外の海に遊びに行っていたときは、浜辺の石が大きくてすごく痛い思いをしたり、海に入ると足元が見えなくて怖い思いをして、心から海を楽しいと思ったことはなかった。というか、砂浜がすごくきれいで、海も透き通っている沖縄の海に入って初めて今まで海を楽しめていなかった自分に気づくことができた。今では沖縄の海が大好きだ。
それから、高校生の時から沖縄には年に1回来るぐらい、家族ぐるみで沖縄が好きだったのだが、旅行に来ると毎回言っていたライブ居酒屋があった。そこではお兄さんとお姉さんが沖縄の音楽を演奏してくれる。その愉快な音を聞きながら食べるご飯も、最後はみんなで立って踊るカチャーシーも好きになって、沖縄の文化って本当に素敵だなあと思った。

ただ単に「綺麗だから」「本土にはない独特の文化だから」と言われるよりずっと説得力が増したのではないだろうか。

このような、価値観に対するエピソードを出していくことを、専門用語で「棚卸し」と言うらしい。
これは、自分がどういう人間かを説明する時に必要だし、面接でも聞かれることなのでやっておいた方がいいそうだ



■やりたいことはみつけないで社会に出ろ

これは、私にとって1番衝撃的な話だった。

「やりたいことを見つけないで社会に出て、やりたいことをやれるだけの筋力をつけて、25,6歳で本当にやりたいことを見つけたほうが、楽しい」

と、裕さんはおっしゃった。


よく、採用面接では「あなたの夢は?」と聞かれる。
しかし、夢を語る学生を人事は「怖い」と思うらしいのだ。

「日本を変えたい」と、安倍晋三でもできていないことを、まだ社会に出て働いたこともない学生が本気で語っているのが怖いらしい。

「会社の理念に共感して志望しました」なんていらない、と裕さんは言う。
その理由はさっきも言ったように、価値観は変わってしまうものだから。

今どれだけ経営理念に共感し、企業が解決したい課題と、自分の中の課題感が一致していたとしても、それは後々変わってしまう可能性がある。

それより、自分が未来のことを本気で想像し、それに対して必要な能力は何かを逆算して、それを身に着けられる職に就いたほうがいい。


もしも今、あなたが1人で1か月後にロシアに移住しろと命令されたとする。これは国からの命令で、絶対だ。本気で考えてみてほしい。あなたはどうするだろうか?

おそらくこのnoteを閉じて、ロシア語の教材について調べたり、ロシアの暮らしについて検索するだろう。
きっと寒いだろうから、防寒具を買いに出るかもしれない。
焦らなくていい。ロシア行きはもしもの話だ。noteの続きを読んでほしい。笑

どれだけ「ロシア行き」を現実的に考えられたかによって、行動に移す+ことは変わるだろう。
「現地に行ってから状況をみて必要なものも知識も揃えます」と言うタイプは、「AI技術が発展してからAIにできないことを考えます」と言っているのと同じだ。それじゃ遅い。

1か月後のロシア行きと同じくらい、AIが今ある職業を代わっていき、ただの作業だけの職がなくなっていくような未来が本気で想像できるだろうか。
もしできたならば、ロシア語の勉強を始めたり防寒具を揃える様に、自分に必要な知識を逆算することができるだろう。

このように必要な能力を逆算し身に着けていく事を、裕さんは「筋力をつける」と比喩していた。

学生は、まだ見たこともない社会に夢をいだくよりは、社会に出てから地に足のついた現実的な「やりたいこと」を見つけていく方がいい。
そしてその「やりたいこと」が見つかった時に備えてできるだけの筋力をつけておこう。


「やりたいことをやりたいよな」

これは、ある時裕さんが、パーソルの社長さんに言われた言葉だそうだ。

あたりまえのことだが、これが痛く刺さる大人も多いらしい。
やりたいことをやりたいと思ってもできない。なぜなら、それをやるだけの筋力がないから。

やりたいと思っても、それをできるだけの能力や知識やお金がない。そういう状況にならないために、その筋力をつけるための道を選んでいくのがいいのではないか。

私も、今後に必要な筋力とは何かを考えていきたいと思う。


佐藤裕さんへ

昨日は貴重なお時間をいただき、講演ありがとうございました。
途中は取り乱して不格好なところをお見せしてしまい、申し訳ありません。
イベント中全体を通して聞いたことのない話が多く、大変学びの多い2時間となりました。とても楽しませていただきました。
話していただいた内容を、これから私なりに消化していき、キャリアについてより深く考え、また社会についてより深く学んでいきたいと思います。
これからもよろしくお願いいたします。


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