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58.不要不急の音楽ライブに行ってきた

「世の中で『自粛』が求められて、ひとりの時間が長くなって。そんな時に、『自分って何者なんだろう』って考えました」

04 Limited Sazabys のボーカル・GENくんは、舞台上でライトを背負いながら、そう言った。


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2021年2月11日。
私は福岡マリンメッセで開催されたONAKAMA 2021という音楽ライブに行った。

万全の対策がなされているとはいえ、緊急事態宣言の中、なかなか屋内ライブ開催に踏み切れるバンドはいない。

そもそも、繰り返すコロナ流行の波・緊急事態宣言に不安を抱きながらも、ライブ開催を予定することすら、選ばれたミュージシャンにしかできない。

ONAKAMA2021に出場した3バンド、THE ORAL CIGARETTES, 04 Limited Sazabys, BLUE ENCOUNTは、その選ばれたミュージシャンだ。

邦ロックになじみのある人なら大抵その名前を聞いたことあるだろう、その人気。

だから、GENくんの冒頭の一言を聞いた時、私は衝撃的だった。

「こんなに売れている彼らでも、悩むんだ」
「こんな彼らを悩ませてしまうほど、コロナによるダメージは大きかったのだ」


GENくんは冒頭の言葉に加え、こう続けている。

「1人で考える暇がありすぎちゃうと色んなこと考えちゃって落ち込んじゃうんだろ!!だから考えすぎる暇がないように音楽があるんだよ!」

正直、去年の5月ごろ、軒並みライブが中止になった時、「しばらく音楽と疎遠になるだろう」と感じた。

だが、そんなことはなかった。

私にとって音楽やロックは、時に何かに向き合い考えるきっかけであり、時にGENくんの言うように、脳が考えすぎてしまう隙間を埋めるためのものだった。

そして、彼らの音だけでなく、言葉を聞き、肌でその想いを感じることは、紛れもなく私の生きがいだった。

「今回のライブを発表した時も、心ない言葉を何度もかけられました。『不要不急なことはやめてくれ』。確かに、誰かにとって音楽ライブは不要不急なのかもしれない。でも、俺たちにとっては、こうやってみんなと同じ空間を共有して演奏することは1分1秒を争うぐらい必要不可欠なものなんです」

そうMCで語ったのは、BLUE ENCOUNTのボーカル田邊さんだった。

もちろん、彼らアーティストやマネージャー、ライブの音響やライトを生業にしている人にとって、ライブ活動は生命線と言える。

でもきっと、田邊さんが伝えたかったのはそういうことだけじゃないはずだ。

ファンの顔が見えること。
自分たちの想いの丈をありったけぶつけられること。

ライブにはいろいろな側面があって、だからこそ生でやる価値がある。

そして、彼ら音楽を仕事にしている人だけでなく、ファンである私たちにとってもライブは必要不可欠な、かけがえのない存在だ。

彼らに生きる勇気をもらうこと、そして「また会おう」とお互い誓い合うこと。それこそが生きる意味になっている。

「コロナ禍でたくさんの選択をすることが出てきたと思う。でも、死ぬ・死なないの『死ぬ』の選択は選択じゃなく、諦めやで。俺もコロナで『死ぬ』を選ぶ人の気持ちがわかったから…。だからこそ、『死なない』って選択をして欲しい。ONAKAMAの音楽がみんなにも力を与えられますように」

THE ORAL CIGARETTESのボーカル・山中拓也の言葉。

生で空間を共有しあう音楽ライブに「生きる意味」を感じられる人は少なくないはずで、そういう人がいなくならない限り、音楽は死なない。私はそう信じている。

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最後に、自分語りをさせて欲しい。

私はロックは「曲がらない強い意志」だと思っている。

その意志は強く真っ直ぐであるから強く光り、誰かの憧れとなり、希望や勇気となる。その一方、誰かには忌み嫌われ、誤解されやすいものでもあると思う。

去年の春先、あるライブハウスでクラスターが発生してから、「音楽ライブにはクラスターがつきもの」という誤解がうまれ、それをまだ信じ込んでいる人が多い。

だが、今は万全の対策がなさている。

1ファンとしては不満な部分もあるものの、生でミュージシャンの姿と言葉を拝めるなら、我慢できる範囲のことだ。


去年夏の屋外ライブで、MONOEYESというバンドのボーカルを務める細美さんが「思い通りにライブが楽しめないのなんて、コロナ前も変わらないだろ」と言っていた。

ロック自体も、コロナ前から誤解を生みやすく「軽音部は禁止」なんて高校もある。

だから理解されなくていいとかではなく、ロック自体にそういう誤解を生みやすい特性があるのだから、知らない人に対してちゃんと伝えていく必要があると思った。

今回のライブで田邊さんが「誰かがやってくれるだろうじゃなくて、俺ら自身から手を上げてライブを守って行こう!」と声を上げていた。だから、私は今このnoteを書いている。

他の誰でもない、私にとって、ライブは生きる意味だ。

アーティストの言葉を聞き、その場にいるファンと想いを共有する。それが、何よりも生きがいだ。

だから、「ライブはダメだ」なんて決めつけないで欲しい。

そしてもし、好きなアーティストがいるなら、グッズだけでも買うとか、配信があるなら観てみるとか、そういう小さな応援をしてみて欲しい。

私にとって必要不可欠な音楽ライブを、守らせてください。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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