ゴフマン「無視された状況」

アーヴィング・ゴフマン 「無視された状況」(Goffman, E. 1964. “The Neglected Situation.”)の全訳をしたので売ります。100円です。

日常的な相互行為の研究を推進したゴフマンの、これまで未邦訳だった論文です。短いながらも、ゴフマンの視点のエッセンスを要約したような内容で、重要な論点を提示しています。

ゴフマン社会学は、今ではエスノメソドロジー・会話分析との相違点について論じられることが多いですが、この論文からは今でいう「マルチモーダル会話分析」に近いような関心をゴフマンがもっていたことが分かります。じっさい、この論文は複数の会話分析の文献の中で、会話分析の視点と対比される形で紹介されることが多いです(例えば、串田秀也・平本毅・林誠,2017,『会話分析入門』勁草書房)。


軽く内容を紹介します。本論文でゴフマンは、それまでの身振りの研究、社会的属性(例えば、年齢、性別、階級など)の研究のどちらも、「社会的状況」という重要な概念を「無視」しているということを指摘しています。

ゴフマンは社会的状況を、「二人以上の人が互いに居合わせていることがわかる時は必ず発生する、相互監視可能性の環境」と定義します。

身振りの意味は、その動作単独ではなく、必ずその近接した物理的環境との関係において意味を持ちます。例えば、「指さし」という身振りは、単にどの指がどのような形をしているかだけではなく、指を指す方向、その先にあるものと合わせて一つの意味を持つということです。

もう一方の社会的属性と状況との関連について、次のような例を考えてみましょう。ある人は、例えば家庭では「父親」という属性を持つものとして、他の人(妻、子ども)の前に存在している一方で、別の場面では彼は「大卒者」という社会的属性を持つ者として他人の前に現前するかもしれません。ある人は複数の社会的属性をもつけれども、それぞれの属性はそれにふさわしい場面でしか意味を持ちえません。要するに、ある特定の社会的属性は、それが意味を持つような社会的状況と合わせて考慮に入れなければならないということです。


この論文の内容は以下の書籍と深い関連性をもっています。合わせて読むとゴフマンの主張についてより深い理解を得られるでしょう。
Goffman, E. 1963. Behavior in Public Places: Notes on Social Organization of Gatherings. The Free Press. = 丸木恵祐・本名信行訳,1980,『集まりの構造:新しい日常行動論を求めて』誠信書房


【書誌情報】
原著:Goffman, E. 1964. "The Neglected Situation." American Anthropologist 66:6, part II, pp. 133-136.

タイトル:無視された状況

本文:5ページ(約5000字)

ファイル:PDFで660KB

ヴァージョン:1.0(2019年8月23日)

初版:2019年8月23日

この翻訳は、いわゆる翻訳権の 10 年留保にもとづいたものです(日本国の旧著作権法第 7 条および現行著作権法附則第 8 条)。原著の日本語への翻訳権は消滅していますが、この翻訳の著作権は訳者にあります。

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