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121夜 This Last Night In Sodom / SOFT CELL

80年代を20代として過ごした私は、いわゆるアイドル的な人気のあるアーティストよりも、こういう立ち位置のバンドの方にシンパシーを感じていました。
同級生に、ソフト・セルが好きだという人はいなかったと思います。
話題にも出しませんでしたので、実際のところは分かりませんが・・・。

日本で言えば、GLAY や LUNA SEA じゃなくて 黒夢 が好き、みたいな感じでしょうか。(例えで出すバンドが、すでに古いですね。まあ、実際に、黒夢が好きです。)

バンドとしては、アンダーグラウンドなエレ・ポップ、というカテゴリーに分類されると思います。
実際、彼らが知られるようになったのは、ポップなヒット曲があったからです。
ただ、私が魅かれたのは、ヴォーカルのマーク・アーモンドの醸し出す両性具有的でレプリカントのような、この世に居場所のない感じでした。
音楽も、オルタナティブの暴力的な衝動にエレクトリックの無機的な武器を持たせた、というように解釈していました。
なので、アルバムとしては、この「ソドムの夜」が一番気に入っています。

アンチ・モラルでアナーキーである半面、理解と共感を求める矛盾を抱え、孤独に押しつぶされながら、日の当たらない隅っこに潜むような、いじけ虫だった頃です。
日の当たるところにいる ワム!の実力を認めながらも、羨望の目で見ることの後ろめたさが嫌悪に似た感情を育てていました。
ミッキー・マウスが嫌いだったのも、この頃の屈折した感性のせいです。きっと。
(人生も残り少なくなってきた今となっては、ワム!もミッキー・マウスも好きですよ。)

名曲があるわけでもなく、トゲトゲしてヒリヒリする曲ばかりなので、好きなアルバムを1枚だけ聴いて一日をリセットする、というコンセプトのウチの店にはちょっと不向きだったかもしれません。
でも、こういう音楽に孤独を癒されるという時期や精神状態というのはあるのです。たしかに、あったのです。