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Alinea Ep.Ⅶ

覚悟 忍耐 超越 感謝...そして、その先へ...


2年でCIAを卒業した僕は、OPTというワーキングビザを手にれた訳だが、このビザでは1年しか働くことができない。

シェフ アケッツの当時のパートナーシェフである シェフEric(エリック)が、ワーキングビザ習得の為に動いてくれた。

だが、アメリカでのビザ習得は容易でなく、最後まで希望を捨てないで期待していたが、それも虚しく散ることとなった。

色々な事を学ばせてくれて、様々な経験をさせてくれた。

今思うと、よくあんな働き方したもんだと思うが、当時は楽しくて仕方がなかった上、逃げ場が無いというのが良かったんだと思う。

やるしかない

退職をシェフに告げるが、1つ問題が...
自分の持ち場の仕込みを引き継がせなければいけない。
退職を告げてからというものの、何人もの研修生がやってきたが、僕の教え方が悪く、何度シェフに怒られたことだろぅ

何かを任せ、失敗されやり直す苛立ちや、時間の勿体無さから、結局最初から自分でやってしまうという行動に出てしまい。
それでは、何も始まらないとシェフに怒られる毎日。

っふと気付く。
僕自身も最初はできなかった。

確かによく分からない事を聞いてくる人もいる
「どうやったら、立方体に切れるの?」かとか。
真っ直ぐ切る以外ないだろう...(笑)

そんな中、最終日がやってきた。
数ヶ月延長し、違法滞在にはなっているが、本当はもう少しいたかった。
だけれども、NetflixChef’s Tableのロケが始まる為、違法滞在の僕が滞在し続けることはできなかった。
世界デビューを逃したのは痛い...

無事、引き継ぎも終わり、いよいよ最終日。
最後に、お客様のテーブルへデザートマットの仕上げに向かい、キッチンを片付け。
掃除も終わり、ミーティングでシェフから別れを告げられる。

アリネアでは、最後、ちゃんと退職する者にはシェフから何かのアルコールと寄せ書きをされた本をプレゼントされる。
そして、物凄く気に入られたスタッフは、コックコートにも寄せ書きを書かれて渡される。

最終日、シェフ アケッツは不在だった。
スタッフ全員と写真を撮り、ベーグル、サイモン達からバーボンと寄せ書きを施された本を頂いた。


そして、部屋に戻り片付けをし始めて1週間後、僕の母親がシカゴへと駆けつけ、一緒にNEXTへと食事へ行った。

当時は「ビストロ」がテーマの時期。
本当はアラカルトで頼むはずで、一応何を注文するか答えたんだが、全メニューがテーブルの上に並んでいった(笑)


現在、LAでレストランDIALOGUEのシェフを務める、当時NEXTの総料理長Dave Beranから全ての料理、ワインはオーナーシェフ アケッツからプレゼントだと...
御馳走なり、僕は心が震えた。
僕以上に母親の方が驚き、感激していただろう。

その後、Aviaryで1杯飲み、翌日アリネアのディナーを御馳走に伺った。

メニューにないソワニエ(VIP)料理が数多く並び、母親と2人で感激しながら楽しみ、最後のデザートマットはシェフ アケッツが仕上げてくれた。

食後、キッチンへと案内されると寄せ書きをされたコックコート共にチームの皆が出迎えてくれ、僕は泣きそうだった..

泣きそうな中、みんなと写真を撮り。
アリネアへ別れを告げた。

退職後、最後の1ヶ月だけだったが仲良かったメインの部門シェフと共に、Grace(現在閉店)へ食事に伺った。
Graceは、アリネアの初代料理長 Curtis(カーティス)がシェフを勤め、オープンして2年でミシュラン3星を獲得した絶好調のレストランだった。

ここでも、すばらしいサービスをしていただき、僕のベストレストランの1つであるほど素晴らしいディナーだった。

残念ながら現在は閉店してしまっているが、近日新しいレストランをオープンするとの情報が入っている。
要チェックだ。

アリネアで働くという事は、技術や履歴書を積む以上に大切なことがある。
シェフもそう言う。

それは、
「What Alinea is...」

アリネアで働くということは、とてつもなくキツく、厳しく辛い事。
その中で、1番感じるのは、自らをどれだけ追い込み続けれるか。
常に自分を追い込み続け、走り続ける事ができる者のみ、アリネアで認められ、働く意味を感じ取れる。

レストランをオープンして数年後、舌癌のステージ4と診断され、運良くキモセラピー(化学療法)により完治し、数年かけ失った味覚をも取り戻したオーナーシェフ グラント・アケッツ。
治療中も仕込み、治療、営業、治療と壮絶な生活を送られてきたシェフの下だからこそ、僕は負けるわけにはいかなかった。

尊敬してやまない、シェフ アケッツ、ベーグル、サイモン、ダン、エリック、そしてアリネア。

小さい存在でしかない僕ができる師匠への恩返しは、師匠を超えるべく存在を目指し、成ることだろう。

同じ立ち位置で、いつか手を交わすその日まで、僕はアリネアへは行かない。
それが1つのケジメだ。

先日、食べる風船を発明した元アリネアの総料理長ベーグルが東京へ訪れ、飲みへ誘ってくれた。
顔を合わせた瞬間、感極まりそうだった...

退職して5年もの歳月が経ってるにも関わらず連絡をくれ、飲み交わしてくれる。


ありがとう。

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