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日本とアフリカをサステイナブルに繋げるFMGの挑戦

こんにちは!サムライインキュベートのnote編集部です!

今回は、アフリカ・タンザニアで「中古車×金融」の仕組みで現地の人々に働く機会を提供する株式会社FMGのCEO林さんにお話を伺いました。

もともとは中古車流通大手の株式会社IDOMの海外事業として始まった事業でしたが、この度サムライインキュベートが出資をし、IDOMからスピンオフをする形で新たに会社を設立しました。

アフリカの人口は現在の10億人から2050年にはは25億人にまで増え、世界人口(97億人予測)の約4人に1人はアフリカに住む人となると言われており、ビジネスの面で大きな成長の可能性を秘めています。

また、ここ数年で世界的に急速に広まったライドシェアビジネスは、アフリカでも同様に拡大しており、現地の人々に新たな稼ぐ手段を与えました。ライドシェアビジネスが伸びる中で、そこにまつわる自動車や金融といったマーケットも同時に大きな注目を浴びています。

一方で、まだまだ課題も多く存在する現地の状況や立ち上げの背景について、林さんに伺いました。

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(写真左)
株式会社FMG 代表取締役社長 林 亮(はやし りょう)
経歴:早稲田大学 政治経済学部経済学科 一橋大学院 経営学修士。大学院を卒業後、アッカ・ネットワークスに入社。同僚と共に同社からMBO、ワイヤ・アンド・ワイヤレス社の創業を経た後、外資ネット企業の日本事業の立ち上げ。2017年にIDOMへ参画。事業責任者としてアフリカ市場へのエントリー戦略の立案および遂行を担当の後に2020年10月、IDOMからスピンオフ、株式会社FMGの代表に就任。

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ー 今日は宜しくお願いします。まず事業について教えてください

現在、アフリカのタンザニアでライドシェアサービスで収入を得たいが従来の仕組みでは車両を持つことができなかった人々に対して車両レンタルサービスを提供しています。
まずは審査を経て、6ヶ月のレンタル期間の間に信用情報データを蓄積します。そこで問題ないと審査されたドライバーは将来的に車が自分の所有物になるRent to ownの契約に移行ができる様になっています。

ドライバーがレンタルで支払う金額は週で15万〜30万タンザニアシリング(取材当時のレート:7,000〜14,000円)、1ヶ月にすると60万−240万タンザニアリング(取材当時のレート:2.8万〜5.6万円)程です。ドライバーは平均24ヶ月後に車を自己所有できる様になります。
車両はGPSを搭載した専用の機器とシステムで遠隔で管理していて不払いユーザーの車両は利用停止にできる様になっています。ただ、今のところ一度も停止した事例はありません。

ー IDOMとの出会い、事業を始めるきっかけについて教えてください

IDOMに入るまでの経歴でいうと、大学院を出た後、当時勢いのあったブロードバンド・インフラ(入社当時はADSL)を構築していたアッカ・ネットワークスという通信キャリアに入社しました。最終的には数名の上司や同僚とともに事業の一部をMBOし、最終的にはその会社は同業界の通信キャリアにバイアウトするかたちでEXITできました。
そこから2社の外資ネット企業の日本事業の立ち上げに関わりました。1社は、ちょうどその当時、Eコマースが成長期でぐんぐんと伸びていた時期で、楽天さんやアマゾンジャパンさん、総合通販企業さんなどをサポートする事業の立ち上げに3年くらい携わった後、クロスボーダーのC2Cマーケットプレイスの日本事業ローンチと事業拡大に関わりました。

それら2社の立ち上げを経た後、縁があってIDOMに誘われ、2017年に入社しました。元々、C2Cマーケットプレイスの事業を触っていたこともあり、二次流通って面白いな〜と思っていましたが、車の二次流通も中に入って実際に目にすると、そのダイナミクスに惹かれていきました。セカンダリ、つまり二次流通においては、よりリアルな人々の需要が反映され価格が形成されます。需要と供給が動的に変化することを感じることができる、非常に面白い領域です。

IDOM(ガリバー)が展開する中古車流通事業においては、小売が約6割となり、買取台数は年間で約23万台となります。それら買取車両のうち、自社の店舗ネットワークで販売・再流通させる他、業者オークションで償却しています。とても興味深かったのは、IDOMの本社には中古車のスペシャリストが多くいて、国内の流通は末端まで把握がされていたのですが、それと比較すると、オークションに出した車両が最終的にどこに行って、どんな人が車を使うのか?については、それほどトラックされてなかったことです。アフリカをはじめとする新興国に多くいっていることまでは何となく把握されていたのですが、末端で何が起こっているか?は社内でも把握されていませんでした。そこで、アフリカの現地を調査をしてみると、トヨタさんに代表されるメイドインジャパンの日本車が現地の人々に本当にレスペクトされ、高く評価されていることを知り、それ以外にも色々と面白いことが徐々に分かってきて、何か新しいビジネスを構築できるのではないか?という可能性を感じはじめるようになりました。
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(写真:UBERドライバーに引き渡す前の車@FMGの車両保管ヤード)

ー アフリカはどんなマーケットですか?

日本からの中古車輸出の流通について言えば、アフリカで実際に車両を使うユーザーまでのend to endの商流をみてみると、とても多くのプレイヤーが入り乱れる流通多層構造となっていました。売り手の力が圧倒的に強く、結果的に質の良くない中古車が現地に届けられることもあり、どうしても相対的に力の弱い顧客サイドが不利な構造がある、と感じました。

また、アフリカのような地域では、ほとんどの人が銀行口座を保有していないため、事業者側が与信を取ることができず、多くの人が銀行ローンを活用して車を購入することが極めて難しい状況がありました。それでも、車を手にすることで開ける可能性は大きいので、人によっては非常な高金利でお金を何とか工面して車を買っている、ということを聞きました。見方をかえれば、需要と供給との間に、まだ埋められていないギャップがあるのだな、と感じました。

ー 東南アジアではなく、アフリカから始めたのは何故ですか?

よくご質問をいただくのですが、東南アジアは規制上、中古車の輸出が難しい国がほとんどです。アフリカ、特に東アフリカの国はハンドルも右ハンドルで、日本から中古車を輸出でき、そのまま走らせることができるため、IDOMの現業の延長線上にありました。

ー 現地でビジネスをする上で大変なことなどはありますか?

先進国ほど社会インフラが整っていない現地では様々なイベントが発生します。例えば、デング熱のような病気が流行し、ぼくらが車を貸したドライバーさんのなかでもかかってしまう方がいて車を返却してくることなどがありました。そういった、コントロールできない天災などによってビジネスの影響を受けることは織り込なければならないと思います(いまは先進国も含めて、全世界がコロナの影響を受けているので、同じといえば同じですが。。)

事業を開始してから、これまでの間にアップダウンはありましたが、2年強の運営を通して、現地の実需に根ざした底堅い需要があることは強く感じています。やはり、もっともポジティブな材料は、いまのアフリカには「車を使って稼ぎたい人、車を使って自分の人生、家族のQuality of lifeを良くしたい!思っている人々が本当にたくさんいる」ということです。

かつて、高度経済成長期の日本がそうであったように、みなさん豊かになることに対して本当に貪欲で、その前向きなエネルギーを街全体から感じるんです。今までいろいろなハードシングスはありましたけども、その人々の根源的な豊かになりたいという欲求に魅力を感じて、様々な困難をチーム一丸で、前向きに乗り越えて来れました。

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(写真:現地のビジネスイベント「サバサバ」で出展したときの展示車両)

ー アフリカ事業立ち上げて2年強、今回のスピンオフを決断に至った背景を教えてください

事業開始した初期は、Uberドライバーに対して試験的に十数台の車を輸出してみました。そこから更に自分たちの仮説が正しいかどうか、一度、規模を大きくして検証してみようと、輸出ボリュームを数百台へとさらに増やしました。その過程で、自分たちの仮説の正しさと、将来の事業のかたちが段々と見えてきたのですが、同時に、今後の展開については事業構造をよく考えなければならないと感じました。

将来的に顧客の数が増えて、提供する車両台数が数千台、数万台の規模になると、当然、必要な投資額は台数に比例して増えます。つまり、これは資本集約的なビジネである、と。そこで、今後さらにビジネスを拡大させていくためには、経営資源をIDOMの社外から補完していく構造を作らなくてはならない、また中長期的な視点を持って市場を攻略する必要があるためIDOM単独ではなく、オールジャパンの体制で臨む必要ある、と考え始めました。

そんな最中、サムライインキュベートさんとご縁をいただいて、何度かディスカッションを重ねるなかで、日本の大企業が蓄積してきた強みと、スタートアップの自律性や敏捷性、それぞれの良い部分を合わせ活かせるスキームができるかもしれない、と思いました。今回のスピンオフは、まさにそこを念頭に置いて構築しました。IDOMにとっては、過去に前例の無い新しい取り組みであったため、社内の様々な関係者との多くの議論を経て、着地に至ることができました。

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ー 林さんにとって、事業をやっていく上で大切なことは何ですか?

「ビジョン」が大切だと思っています。うまくいく事業のビジョンって、ファウンダーだけのものではなく、ビジョンは事業に関わる人みんなのものであると思います。関わる人みんなが、事業の先に見えるビジョンに本当に共感して、その期待感やワクワク感がいつの間にか関わる人たちの「自分のもの」とものとなったとき、事業は広がり、さらに多くの顧客と繋がっていける、と考えています。
 
 今回、サムライインキュベートさんとご一緒にやっていくことになり、改めて、自分たちのビジョンとして、「Smart, clean and warm distribution(効率的で、透明性の高い、温かい流通)」というビジョンを掲げました。いままさに、自分たちが現地で生み出しているのは、まさにそういうものではないか、と。そのビジョンに色々な人たちが共感し、その旗に向かって動いてくれる事で、私が考えてもいなかった方向へ成長していけるのでは、と期待しています。ビジョンやミッションはシンプルであるほど、物理的な距離や国籍を越えて共感の輪は広がると感じています。実際に、現地のスタッフたちも「これはわたしたちの事業だ」と思ってくれる様になり、色々と自ら動いてくれるようになりました。

これから事業の進捗とともに、ビジョンの解像度も上げて、この事業を共に歩んでいただける投資家の方々、事業パートナーのみなさまとも共有していければと思います。

これから他のエリアに展開することになったとしても、ステークホルダーのみなさんに「この事業はやる意義がある」と感じてもらいたいです。

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(写真:FMGの車でUberドライバーとして活動する顧客)

ー 最後に、今後のFMGについて教えてください。

アフリカでいうと、僕らの顧客であるドライバーさんたちには、もっと所得を上げ、豊かになって欲しいです。SDGsの「8.働きがいも、経済成長も」といった課題を考えるにあたっても、僕らのメインカスタマーである、彼ら彼女たちのような人々が、どんどん数が増えて、どんどんと豊かになって、中間層に育ってくれるといいな〜と思います。

いま僕らが車を提供しているタンザニアのドライバーさんたちで言えば、日本の金銭感覚でいえば、現地では約15〜20万円くらいの金額のお金を毎週支払い続けてくれています。これを1年間続けたドライバーさんはunbankからbankへの道を抜け、これまで銀行口座すら持っていなかった個人が、自分の運命を自分で切り開き、与信を得ることのできる基盤を築いたといえます。与信を積み上げ、稼ぐ能力を証明した人にはさらに豊かになるための武器を提供していきたいです。

決して恵まれた教育を受けてきたわけではない彼らが、生きていく中で身につけた知恵、豊かになりたいという強いモチベーションをエンジンに、ぼくらの車を使って自らの可能性を切り開いてく姿を目のあたりにし、心地よい手応えを感じています。

中期的には、私たちのビジョンの先は新興国にけっして限るものではないとも考えています。課題を抱える人に対して、機会やツールを渡すことで、いまみている市場はアフリカですが、それ以外のエリア、究極的には日本など先進国にも機会はある、と考えています。

▼株式会社FMG 公式HPはこちら

▼日本経済新聞 掲載|2020.10.24

プレスリリース|2020.10.26
アフリカで誰もが安心・安全に車のオーナーになれるサービスを提供する新会社「FMG」を設立