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Reddit NFTに見るNFTマスアダプテーションへの道

RedditのNFTが話題です。
この事例が面白いなと思ったのは、これまでに盛り上がったNFTのプロジェクトとは明らかに違う形で話題に上ったためです。

ちょっと前段として、日本のNFTはとにかく売れてない、という話があります。

ちょっと前にいろんな人たちがスポーツ選手のNFTとか出して、「誰が買うんかな?」と思いましたが、そういうのはやっぱ誰も買わないんですね。

これは、乱暴に言うと、あるものを「NFTである」という付加価値だけ売るのは無理ゲーってことではないでしょうか。というか、「NFTである」というのはそもそも付加価値にすらなってないと。

しばらく「NFT」が魔法の言葉のように祭り上げられるモードもありましたが、「普通に売って売れないものはNFTにしても売れない」という、当たり前の事実を突きつけられた、解けるべき魔法がちゃんと解けた状態だと思います。

さて、ここからReddit NFTの話。彗星のごとく現れ、NFT界隈の話題をかっさらいました。

Redditとは、アメリカ版の「2ちゃんねる(現:5ちゃんねる)」・・・とよく言われますが、2ちゃんの特色である「匿名性」があまりない=twitter程度の匿名性なので、2ちゃん形式で使うtwitterみたいな捉え方の方がよいかもです。
・ここはけっこう大事で、2ちゃんレベルの「匿名性」が全面に出たサービスだったら、ここまでアバターNFTの需要は起きなかったかもしれません
・なお、Redditの説明はここに詳しい

Redditでは「Snoo(スヌー)」と呼ばれるキャラクターをアバターとして使います。このアバターは着せ替えとか、カスタマイズが自由にできます(一部の有料パーツを除き、基本タダ)。
・ただ、ユーザーのアバターはtwitterのように自由な画像を選べるのではなく、この元のSnooにいろいろな衣装を着せることでカスタマイズする、という形になってます。つまり、Snooを使うことが強制されている、という状態が前提としてあります。


今回Redditが売ったのは「Collective Avatars」と呼ばれる、クリエイターがデザインした特別なSnoo。そして、これがNFTになっています。

もともとはパーツの組み合わせでしか個性ができなかったところに、様々なクリエイターによるデザイン性の高いアバターが提供されたのです。
・Collective AvatarsはRedditと提携したアーティスト(30名ほど)だけが現状販売可能。新規のアーティストも受け付けているが、今は人気で順番待ち状態。
・Collective Avatarsを使っていると、Redditのプロフィール欄が豪華になったり、自分のコメントを目立たせたりといったこともできる
・なお、Reddit上でCollective Avatarsの二次売買はできない。OpenSeaなど外部マケプレの活用が必須

このNFTがOpenSea上で高額を付けたため、投機層も注目し、人気が過熱。
中でも、poieeeyee氏によるSpookyシリーズは人気のようで、この金のSnooは18ETHで取引されたとのこと。

ここまでだと、ふーん、やっぱファンの多い有名サービスのNFTは強いよね~という感想ですが、そういう「NFT事業者」の視点で見るより、Web2事業者(今回でいうReddit)の視点から今回の事象をとらえた方が学びが深いように思いました。

ポイントをまとめると、
①    「NFTであること」の付加価値ではなく、ユーザーが欲しがる魅力的なユーティリティをNFTというフォーマットで提供する、という形をとった
-       言ってしまえば、たぶんNFTじゃなくてもちゃんと売れたものを売った
②    徹底して、NFTであることを感じさせないUI・UXを実現
-      公式が全く「NFT」という言葉を使わない
-       ウォレットを作る、ということも意識させない
③    投機勢は鼻から相手にしない(既存ユーザー以外にwhitelist撒いたりしない)

これによって、最初にNFTを手にした純粋なRedditユーザーはNFT自体の価値に全然気づいておらず、後から高価なものだと知らされて驚く、ということが起きました。
・注目されるNFTプロジェクトはどれも必然的に投機筋が最初から入ってしまうものでしたが、今回はそれが全く起きていません。
また、NFTがリリースされたのは7月でありながら、NFT界隈で話題になったのは10月ごろだったことからも、当初全くNFTと関係ない一般的なRedditユーザーの間だけで盛り上がっていたということが伺えます。

これはReddit運営としては、極めてうまくやり切ったといいますか、反発をほぼ招くことなく、既存ユーザーを自然にWeb3にオンボーディングさせた、これまでにない成功事例といえるのではないでしょうか。

冒頭の話に戻ると、NFTを売るという話になると、NFT事業者の人たちが「NFTであること」をどう価値づけするかで延々と悩み、結果コケるみたいなことが繰り返されておりますが、今後のNFTのマスアダプションの本命はそっちじゃないのではないかと。

むしろ、既に動いているサービスと、多くの既存ユーザーを抱えているWeb2の事業者が純粋にサービスを進化させていく過程で、そのフォーマットをそれとなくNFTに置き換えていく(もちろん、それをやる上での必然性は必要ですが)形で進んでいくのではないか、と思いました。


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