VRゴーグルとARグラス④

今回は、PCモニタ代わり用途に関して書いていこうと思います。とはいえ、VRゴーグルとARグラスの比較よりも、機種による比較になってしまうかもしれません。私の場合だと、Quest3とVITURE Oneの比較、という事です。何故ならば、機能や性能が大きく関わってくるはずだからです。という訳で、読んでいただける場合も、VRゴーグルの一例であるQuest3と、ARグラスの一例であるVITURE Oneの比較だと思ってください。

ちなみに、そもそもの話ですが、私は普通のモニタのが見易いです。圧倒的に。YouTubeで、Quest3を普段の作業モニタに使ってる、みたいな話を時々見ますが、正直、謎です。ですから、推測を含めた話になります。ご了承ください。

さて、まずは、VRゴーグルとかARグラスとか関係なく、PCのディスプレイの話、全般についての話から順に書いていきます。
皆さんは、Windowsを使っていますか? Macを使っていますか? ノートですか? デスクトップですか? 画面サイズはどれくらいですか? と、ディスプレイ環境には、いろいろな要素が絡んできます。映像コンテンツでは気にしていない事が、PCでは重要になってきます。これは、映像コンテンツが、それなりのルールに則って製作されているからだと思います。すなわち、細かすぎると見えない、小さな文字は読めない、という前提で製作されている訳ですが、PCで表示する文字は小さいです。映像コンテンツでは使われない小さいサイズを使います。ですから、これを読むためのディスプレイが必要になります。
前の記事でPPDに関して触れました。PPDが大きいほうが詳細です。画面が綺麗に見える事でしょう。ですが、PCではPPDが大きい事が問題になったりします。詳細すぎるのが問題。ピクセルピッチが小さい=ドット粒が小さい事が問題。Macを使っている人には謎な話かもしれません。Windowsを使っている人にはピンとくるかもしれません。Macは、物理的なディスプレイサイズとデスクトップ画面の広さを、完全ではないでしょうけど、比例させています。広いデスクトップ画面が欲しければ、物理的に大きなディスプレイを用意しろ、という事です。当たり前だ、と思うかもしれませんが、Windowsでは、物理ディスプレイサイズとデスクトップ画面の広さが比例しているとは言えないです。FHD(1920x1080)のPCモニタを例にすると、21.5インチ、23.8インチ、27インチ、あたりが使われていますが、基本的にデスクトップ画面の広さは同じです。27インチでは文字が大きく見えて読み易いです。ただし、ドット粒が大きいので、粗いです。逆に21.5インチだと、ドット粒が小さくて綺麗に見えますが、文字が小さすぎて読みにくいです。これがノートPCになると、15.6インチや13.3インチでも同じようにFHDが主流です。当然、更に文字が小さくなり、若い人でもキツくなってくるでしょう。ノートPC使ってるけど、そんな事ないよ、と思った人は、拡大表示を使っている可能性があります。市販のノートPCは標準設定でそうなっているのが多いですし。125%とか150%とか。Windowsのシステムの設定です。
ただ、私のような古い人間は100%表示以外で違和感を感じたりします。その場合、詳細すぎるディスプレイは、むしろ困る訳です。PPDで言うと40以下に抑えないと困ります。PPDが55のVITURE Oneは詳細すぎる訳です。システム設定で125%や150%を使えば対処は可能ですが、表示範囲が狭くなります。デスクトップ画面が狭くなる訳です。しかも違和感もあるという事です。VRゴーグルやARグラスでなく、ノートPCやモニタであれば、表示拡大率はいじらずに、顔を近づけるという対処法があります(当たり前だ)。こうすれば、ドット粒が大きく見える、つまり、PPDが小さくなります。ですが、VRゴーグルやARグラスの場合は、顔を近づける事はできません。擬似的には可能ですが、これには6DoFの機能が必要です。

今までの投稿でも、3DoFと6DoFという言葉を使っていたりしますが、説明してありませんでした。その言葉でネット検索すれば、すぐに調べられるし、今までの話では重要な事ではなかったので。今回も、しっかりとは説明しません。すみません。図解ならば解り易いでしょうけど、自身で用意するのはたいへんですし、ネットで拾ってくると著作権とか心配です。検索すれば解り易い説明がすぐに見つかりますから、それでお願いします。
ざっくりと言葉にすると、回転移動の自由度を確保してあるのが3DoF、加えて平行移動の自由度を確保してあるのが6DoFです。なんのこっちゃ。ちなみに、自由度なしを0DoFと言ったりしますが、正式にはそんな言葉は無いのかも。
回転移動は、右を向く・左を向く、上を向く・下を向く、首を右に倒す・左に倒す、です。世の中が3次元ですから、軸が3軸ある訳で、3DoFです。どの投稿だったか、VITURE Oneは2DoFだと書いた事があります。2DoFなんて言葉はおかしいのかもしれませんが、首を右に倒す・左に倒す、が抜けてます。3DoF自体がベータ機能らしいし、2DoFが仕様なのかもしれません(2DoFなんて言葉が無いだけで)。仕様である可能性があると思うのには理由もありますが、後述(a)としましょう。
平行移動のほうは、やはり3つの軸方向にに平行移動。左右に位置ズレ、上下に位置ズレ、前後に位置ズレ、です。3DoFにこれが加わると6DoFです。前後の位置ズレを認識してくれるので、擬似的に画面に近付く事ができる訳です。
実際には、画面に物理的に近付く事はできないので、PPDは下がりません。内部的に表示を拡大して、近付いて大きく見えるように感じさせています。それ故、粗くならないので、考えようによっては、物理的にモニタに近付くよりも、良い対処かもしれません。もっとも、6DoFに対応したQuest3はPPDが25ですから、元が粗すぎます。文字が小さい状態は小さくて読めないだけでなく、同時に粗くて読めない、近付いて初めてまともに見える、といった感じです。VITURE Oneは逆にPPDが大きすぎて(詳細すぎて)文字が小さいので読めない訳ですが、6DoF非対応で擬似的に近付く事ができないので対処できません。

ここまでで、ひとまず結論が出ますね。
Quest3はPCモニタ代わりに使う事が可能ですが、VITURE Oneは現実的ではありません。とはいえ、これは私の場合の結論です。VITURE Oneの、あの文字サイズでも問題なく読める、という人や、システム設定で150%くらいにするから問題ないよ、という人もいるかもしれません。「あの文字サイズ」では判断できないでしょうけど、FHDの場合で、画面の高さ(縦方向の長さ)の2.8~2.9倍の距離から見た状態、というのが目安です。個人的には、読めなくないけど読みにくい大きさです。ん?と思ったときに近付いて読む事ができないので、結果的に不充分という感じです。
ただ、この6DoF対応以前に、視野角や画素数がQuest3のほうが大きいので、どちらが適しているかと言えば、やはりQuest3だろう、と思います。
あくまで代替環境として許容できる程度ですが。普段の作業環境に使っているという話は、なかなか理解し難いです。普段ノートPCを使っていて、デスクが狭いので大きなモニタを置くことができない、という人が、物理的なスペースを確保できないけど、デスクトップ画面を広くできる、という事なのかもしれません。あと、似たような別パターンも考えられますが、後述(b)します。幸い、私は、普段使っているモニタがそこそこ広いので、そちらのほうが便利に感じます。

唐突ですが、デュアルモニタを勧める人っていますよね。個人的にはデュアルやマルチが良いとは思えません。モニタ1枚ごとでアプリを全画面表示できて便利だって場合は理解できますけど、起動するアプリがウィンドウモードで良い場合は、モニタは1枚で良いと思いますし、私の場合は1枚にするメリットがかなり大きいです。なので、もし、他人にデュアルモニタを勧める人が、デスクトップ画面を広くすると作業効率が上がる、という意味で勧めているのだとしたら、デュアルはそれを実現する手段のひとつだと明確にして欲しいものです。結果、私のような結論に至る人にとっては、デュアルやマルチは間違った方策になりかねませんから。
モニタを1枚にするメリットは、1枚で良い事です。当たり前ですね。補足します。私は複数のPCを稼働させています。例えば、2週間くらい処理し続ける、みたいな事をしているときに、試したいアプリがあって環境もいじるから再起動したい、というときに2週間待てないので、PCが複数台あると便利なのです。そして、モニタは1台で良いのです。稼働しているPCが複数あっても、自分自身が作業しているPCは1台だけですから。なので、切替器を使っています。デュアルやマルチだと、ここのハードルがかなり高くなるのです。1枚だと楽です。デスク周りには数台のモニタがありますが、緊急用みたいな感じです。通常は1枚しか使いません。そして、確かにデスクトップ画面が広いほうが使い易いです。私の場合は、42.5インチの4Kモニタを使っています。最近では減ってきている21.5インチFHDつまり小さめFHDモニタが、4枚くっついているイメージです。
その環境と比べて、Quest3の仮想デスクトップが便利とは思えない、という事です。私の場合は、出先でのモニタ代わりを想定しています。自家用車移動であっても、42.5インチモニタを積んで出掛けるのはたいへんですし。

先ほど「ひとまず」結論が、と書きました。VRゴーグルとARグラスで、大きな違いがある事に、まだ触れていません。一応それにも触れておきます。
別投稿でも、VITURE Oneには、DisplayPort Alt.モード対応USB Type-Cがあると書きました。つまり、PCの画面出力を受けて、単なるモニタとして使う事ができる訳です。対して、Quest3は画面入力の機能がありません。どうやってPC画面を表示するのかと言えば、PCの画面を動画として生成して、その動画をストリーミングする、という仕組みになっています。コロナ禍に普及したリモートデスクトップと同じ様な仕組みですね。PC側に入れたアプリで動画を生成して送り出し、Quest3側に入れたアプリで受け取って操作し、操作内容をPCに送る、という感じです。アプリによっては、PC画面に関わる操作は全てPC側でしかできない(リモートデスクトップではなく、その場にPCがあることを想定していて、キーボードやマウスなどの入力デバイスがPCに接続されている必要がある)ものもあり、その場合は相互通信でなく一方通行なのかな、と思います。メリットは実画面以外に仮想画面を増やせる事。私が嫌うデュアルとかマルチを、物理モニタがなくとも実現できる訳ですが、これが故に通常作業環境としても便利だという人がいるのかもしれません。後述(b)と書いた件ですね。デメリットは、PC側の要求スペック。送り出す動画を生成しなければならないので、それを可能とする性能が余ってなければなりません。
まあ、概ね、VRゴーグルというかQuest3に軍配というのは変わらないと思います。

後述(a)としていた、2DoFの話。
3D動画の再生の話でも書きましたが、VITURE Oneには3Dモードがあります。右眼用の画面と左眼用の画面が横並びになった3840x1080の状態です。これが、2DoFが仕様である可能性があると思う理由です。3DoFを実現するには、首を右に傾けた時、画面は左に傾けて表示させる事で、見かけ上水平を保っているように見せる事ができなければなりませんが、これをするためには、右眼用の画面と左眼用の画面を別々に制御する必要があります(くっついて傾くのではなく、それぞれ傾く必要がある)。ですが、別投稿で、16:9以外の縦横比の3D動画をまともに再生できない、と書いたのと同様に、現時点で、右眼用の画面と左眼用の画面は横並びでくっついた状態での制御になっています。3D動画再生の件で、今後に期待とも書きましたが、3DoFがベータ機能という書き方になっている事から、なんとかする気があるのかな、という期待もある訳です。
ちなみに、この期待は3D動画再生環境に関しての期待です。ARグラスは画面が小さいので、3DoF機能があっても、すぐに見切れてしまい、その価値を活かすシーンが思い当たりません。強いて言えば、2DoFだと、画面が空中に固定されているように見えません(グラグラします)が、3DoFになることで、Quest3のように、画面がピタッと空中に留まって見えるようになれば、新たな発見があるかもしれません。

思ったよりも長くなってしまいました。文字を読み易い、読みにくい、といった主観での判断になるので、自分なりに判断基準も含めて書いたつもりです。参考になれば幸いです。

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