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1万冊以上の事前注文をいただくために、私たちが10年間続けていること


こんにちは。はじめまして。

編集部の大川美帆です。

突然、当たり前の話をしますが

本というものは、
全国の本屋さんに、
「うちの店に置こう」
って思っていただけるからこそ、
日の目を見ることができます。

1年に発売される本は
全部で7万5千点くらい、
1日に発売される本は、200点以上。

そんな、
次々と押し寄せる本の荒波の中、
本屋さんに本を置いていただくというだけで、
そりゃ、もう、たいへんなことです。

だからなんとかして
全国の本屋さんに
「うちの店に置こう」
と思っていただこうと、出版関係者はみんな必死なわけですが…

今回は、
全国の本屋さんに少しでも、
「うちの店に置こう」
と思っていただくために、
かれこれ10年以上続いている

サンクチュアリ出版伝統の

新刊営業ロールプレイング

について、お話ししたいと思います。



みなさんは知ってますか?

サンクチュアリ出版の営業部は鬼
だっていうことを。


うちの営業部は、
スーツを着て、敬語で話して、
善良な市民ですみたいな振る舞いをしてますが、
じつは完全主義の鬼集団なんです。


鬼だから、
本を売るためとあらばどこにでも出没するし、
常識も壊すし、手段だって選びません。


たとえばこの記事…


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朝日新聞に出た記事(令和元年初日)

「本は本屋さんで」という常識すらも破って、
カフェや家電量販店、ディスカウントショップなどにも、
本を置こうとします。


その一方で、

(これじゃ、本屋さんから注文をもらえない)

と感じたら、

制作途中の本にもストップをかけ、

入稿直前の本にも「タイトルを変えたい」と申し出る。

そんな鬼の営業部とのかかわりのうち、

私のような「編集者」と、
営業部とのパイプ役を務める「パイプマン」が

恐怖で最もふるえあがるのが、

例の

「新刊営業ロールプレイング」

という会議なんです。


新刊営業ロールプレイングが

どういう会議なのかを、ざっとまとめると、


①パイプマンが、新刊の内容を説明する。②スタッフの中から、書店員役をひとり立てる。③書店員役に向かって、営業マンが実際に営業トークする。④営業トークの内容を、参加者全員で聞く。⑤みんなで、よってたかって、営業トークのダメ出しをする。⑥ダメ出しが修正できなければ、仕切り直し。⑦ダメ出しがなければ、営業スタート。⑧営業の感触が悪かったら、新刊営業ロールプレイングに逆戻り。


という修羅の場なのですが。

毎回、この会議が終わるたびに参加者全員、
(特にパイプマンと編集者は)
ストレスで頬がこけ、顔は青白く、しばらく口数も少なくなり、
たぶん体重も2、3キロ落ちていると思います。


私が医者になったら、患者にはまず

「新刊営業ロールプレイングをやめなさい」

と伝えるでしょう。


…ともあれ、

私が作った愛すべき本、
『私でもスパイスカレー作れました』
も、いよいよこの

「新刊営業ロールプレイング」

の場に出されることとなりました……。



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この本はひとことで言うと、
「料理初心者でもかんたんに、スパイスからカレーが作れるようになるマンガ」
です。

私は“ひとことで言う”練習を何度もしました。

営業部長から必ず
「この本をひとことで言うとなに?」と聞かれるから。

ひとことで言えと言われると、
いつもなぜかひとことでは言い表せない思いがどんどんあふれてきちゃうので、
「料理初心者でもかんたんに、スパイスからカレーが作れるようになるマンガ」というフレーズを、新刊営業ミーティングの前日に、何度も復唱しました。


そして、
この本のパイプマン(営業部とのパイプ役・担当営業マン)は、イシカワさん。

炎上するほどの勢いもなく、ちょこちょこ「なんだあいつ」と陰口を叩かれている…

この記事を書いた人です。



イシカワさんももちろん、鬼の営業部の一員ですが、
鬼といっても、ドリフの雷さまでいったら仲本工事みたいなポジションでしょうか。
誤解されがちだけど、実際はかなりいい人。


大川:イシカワさんどうしましょう。私、新刊営業ロールプレイングが怖いです。


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イシカワ:大川さん、大丈夫ですよ。ぼくがいますから。

大川:ぜんぜん大丈夫じゃないですよ。イシカワさんだから不安なんです。前回の記事も私、共感できませんでしたし。

イシカワ:そのうち共感できる日がきますよ。
それよりぼく、新刊営業ロールプレイングの当日にカレー作ってきますね。
この本だけでおいしいカレーが作れる」っていうことを営業部全員、実際に舌で理解していただきましょう。そうすれば説得力も増します。

大川:そんなにうまくいくでしょうか?

イシカワ:わかりません。
でも、料理初心者でもかんたんに、スパイスからカレーが作れるという、あの本の力を、ぼくは信じているんです。



不安はぬぐえないまま

新刊営業ミーティング当日に…




緊張した雰囲気の中、会議スペースに関係者たちが集まります。




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営業部長・市川聡
サンクチュアリ出版・鬼の営業部の指揮官。
関わった本のほとんどが重版すると言われ、
“ミスターパーフェクト”の異名をとる。



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営業サブリーダー・津川美羽
女性向け実用書のヒット請負人。
主婦やOLニーズのつねに一歩先を読み続ける。



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営業部・二瓶義基
現場に何度も足を運び、見えないニーズを探り当てる。
「粘りのニヘイ」の愛称で、スタッフから絶大な信頼を集める。



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営業部・吉田大典
作品の魅力を見つけ、言語化する能力に長ける。
次期、営業部を引っ張る若手のホープ。




対するは…



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イシカワさんの作ったスパイスカレー。
タッパーに入って、冷たくて、見た目はあれだけど、
味はかなりおいしい。



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※スパイスと、塩と、レッドペパー。
味にうるさい営業部員のために
塩味、辛味、カレー味すべてに対応。
(※クミン、コリアンダー、ターメリックを混ぜたもの)



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トップバリューのパックごはん。
少量の米を炊飯器で炊くくらいなら、
こっちのほうが美味しいという説もある。




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そして私、大川。
みんな食べてくれるかな…




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カレーの説明をするイシカワさん。



市川営業部長:カレーを作る本だからね。もしもこのカレーが美味しくなかったら、厳しいよね。

イシカワ:あ、はい。

二瓶:イシカワくんの作ったカレー?

イシカワ:あ、はい。

津川:イシカワくんって、料理得意なの?

イシカワ:あ、はい。いや、まあ、たまにする程度で。

大川:(がんばれイシカワさん…!)




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どれどれ?




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ん?






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おかわり!




「こんなにおいしく作れるんだ!」




大川:(ああ! よかった!!)


試食がうまくいったところで、いよいよ営業ロールプレイング開始。

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これは本邦初公開の営業用の資料一式。
「注文書」と「装丁」と「中見本数ページ」


書店員役は、営業部長の市川さん。
すでにカレーを食べていたときの笑顔は消えて、真剣モードです。


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客層がOLメインの某駅近書店のベテラン書店員さんになりきり


営業部長:つまり、この本をひとことで言うと?

イシカワ:あ、はい。料理初心者でもかんたんに、スパイスからカレーが作れるようになるマンガです。

営業部長:おお、いまスパイスカレー流行ってるもんね。かんたんに作れるなら、たしかにいいね。

イシカワ:あ、はい。料理初心者でもかんたんに、です。スパイスからカレーが作れるようになれるんです。

営業部長:そうですか。じゃうちは30冊もらうおかな。

イシカワ:ありがとうございます! 料理初心者でもかんたんですから。ぜひスパイスからカレー作ってみてください!

大川:(同じこと言ってる? でもなんかうまくいって、よかった!)




…とまあ、そんなこんなで、今回は無事に

新刊営業ロールプレイングを終えることができました。

サンクチュアリ出版は
あんまり料理のレシピ本を出さないし、
ましてや
スパイスカレーの本なんて
はじめて出すものだから、
どういう反応になるかドキドキだったけど、
結果的に
著者のカリー子ちゃんが考案した
スパイスカレーがめちゃめちゃおいしかったから、
営業部のみなさんもノリノリになってくれたようです。


で、その後、
営業活動もうまくいったようで、

『私でもスパイスカレー作れました』

は、なんと初版1万7千部になりました。
パチパチパチ!


おそらく
スパイスカレーをテーマにした本としては、
日本一期待されてる? 本じゃないでしょうか。


この記事を読んだ方は、ぜひ買ってくださいね!


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ごちそうさまでした! (写真奥はあつあげかれー)


テキスト 大川美帆(おおかわみほ)1991年生まれ。北海道出身。サンクチュアリ出版編集部。趣味はカメラとスキー。コーラ中毒。主な担当本は『カメラはじめます!』など。


編集 橋本圭右(はしもとけいすけ)1974年東京生まれ。サンクチュアリ出版編集長。宣伝部長。主に山と電車とファミレスで活動。編集した本。好きなものはゲーム、ジムニー、ベイスターズなど。


(画像提供:iStock.com/oneinchpunch)

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