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「影響力のある人たちに、本を紹介してもらうためにはどうしたらいいか?」を考えすぎた末路


サンクチュアリ出版 広報部・宣伝チームの岩田梨恵子です。
今年で入社11年目、元ミーハー担当、今では2児のママ担当です。

さて「出版社の広報ってどんな仕事なの?」ってよく聞かれるのですが、ざっくりいうと「本屋さん以外の場所で本を宣伝するお仕事をしてます(ただし広告は除く)」って感じです。
雑誌やテレビ、新聞で書籍を紹介してもらえるように売り込んだり。
インフルエンサーさんに本を送って紹介してもらったり。
PRイベントを開催したり、Webのキャンペーンを企画したり、SNSで情報発信したりしています。

本を目立たせるためだったら、犯罪以外だったら何でもやるぜ! というくらいの気概が求められるハードなお仕事なんですが、その一方、出版社のPR手法として定番中の定番なのが「献本」です。
「献本」は、著名人やマスコミに本を一方的、あるいは承諾を得て、送りつけ、紹介していただくことを期待する、というもの。
出版社は基本的に「献本好き(?)」。私もこの献本が大好きでした。
なぜ好きだったかというと、ただ送付状に宛名を書いてひたすら佐川急便で送るという単純作業ながら、生真面目な顔をして「想定読者と重なる各種メディアと、著者の活動と関連性の高いインフルエンサーにリーチするよう、計500冊献本しました」なんて報告すれば、なんとなく仕事しました感をかもしだせるから。

んで、社内から「ぜひ芸能人に紹介してもらいたいね」という声があがれば芸能事務所に片っ端から献本、「病院の待合室に置いてもらえたら、たくさんの人の目に触れるのでは?」というアイディアが出れば、全国の病院に片っ端から献本。がんばったもんです。

私は愚かでした。

ばらまき献本を11年も続けて、ようやく気づきました。

「あんま意味ねーな」って。

これまでの成果はゼロかそれに等しいもの。

そりゃあそうですよね、どこだかよくわからない人間からいきなり郵便物が送りつけられてきて、中を開けば、見慣れない本と、ワードでタイプされた「SNSで紹介してください!(要約すると)」っていう無礼な手紙。

んなもん、だれが関心を持ってやるか! って思う。
きっと芸能人なんて、事務所のバイトさん止まりで本人の手元まで届いてないだろう…。
どうせメディアなんて、1日に何十冊もの本が全国の出版社から送られてくるので、とても目を通しきれないんだろうな…。ブツブツ。

そんなわけで、広報部は「ばらまき献本」を禁止することにしました。
営業の誰かが「じゃあ、たとえば著名人に献本とかしてさ~~…」なんて言い出そうものなら、食い気味に「禁止っ!」。「じゃあ、たとえ…」「禁止!」くらいの勢いです。最近あまり話しかけられなくなったのは、そのせいかもしれません。

紹介していただける確率を地道にアップさせた地道すぎる秘密


そのかわりにはじめたのが「ひと手間献本」です。

「ひと手間献本」ってなんでしょう。

ひと手間かけるんです。

エクセルにまとめた献本リストに向かってダダダッと本の絨毯爆撃をするのではなく、受け取った人が、ちょっとびっくりしたり、ほっこりしたり、嬉しくなってもらえたりするような、アナログ的に手をかけた献本のことなんです。

当たり前のことなんですが、とにかく気持ちをこめようと決めました。

たとえばブロガーさんに献本するときは、ただ送りつけるだけではなく、ちゃんとその人のブログの内容を読んで、その感想を手書きで書いた手紙を添えて送るようにしたり。

ママさんインスタグラマーに絵本を送るときは、ちいさなお子さんも喜んでもらえるように、本を梱包する箱のかわりに、手作りのびっくり箱を工作したり。

ある時は、冒険の雰囲気を出すために、ドラクエ風の宝箱(本の定価の3倍くらいした)の中に本を入れて送ってみたり。

わかりやすく、バカバカしいくらい「あなたのために、この本のために、ここまでしました!」というアピールをすることで、
無視できずに、ほんのちょっとでも笑ってくれたらいいな、ついでに「ちょっとくらい読んでみようかな」と好奇心を出してくれたらいいなと考えたのです。
じつはこの「ひと手間献本」をはじめたところ、いきなり目に見えて反響がありまして、ただ紹介してくださるだけではなく、「こんなサプライズ付きで本を送ってもらった!」と、ひと手間献本のこと自体をSNSで紹介してくださったり、心のこもった感想を書いてくださったりするようになったのです。

こんなにたくさんのご家族が…


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Instagram #ぜったいにおしちゃダメ

人気インスタグラママーも


マネーの虎というTV番組で「冷徹なる虎」と呼ばれていた、あの南原竜樹社長も…



そのあとすぐにメルカリで売られていましたが(笑)



さすが冷徹なる虎。


なんにしても、ひと手間をかけてよかった。

大切なのはひと手間だ。


というわけで気を良くした我々は、さらにひと手間のハードルをあげたのです。


というわけで毎回
「どんなひと手間献本をするか?」
というアイディア出しを広報会議でおこなっているのですが、2月発売の『今あるもので「あか抜けた」部屋になる。』という本の「ひと手間献本」について、こんな感じの話になりました。

橋本圭右(編集長)「今回はインテリアの本か。インテリアならやっぱり、“部屋”をテーマにするのがいいんじゃない? たとえば、箱の中がミニチュアの部屋になってるとか」
南澤香織(後輩)「あ、いいですね~。シルバニアファミリーのミニチュア家具とか入れて送ります?」
岩田梨恵子(私)「いいね。でもシルバニアファミリーのミニチュア家具って結構高いんだよね」
南澤香織「あ! Amazonでこんなキット売ってますよ!!」


そう言って、みなみちゃんこと南澤香織がAmazonで見つけてくれたのが、コレ。

※これは違う商品です。実際に買ったやつが見つからなかった。

か、かわいい~~~~!!
しかも、フルキットで2000円!?安い!!
わざわざ手作りして送ったら喜んでもらえそうじゃない? 

よし早速ポチっ!

かくして、ドールハウスキットは翌日には会社にやってきました。


開けてみると…


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ん?

なんか…

思ってたんと違う…。

「キット」というくらいだから、ぱぱぱっと組み立てて、ちょこちょこっと家具を並べればいいだけのものをイメージしてたのですが。
入ってたのは非常に細かくバラバラ状態にされた、板とか布とか針金とかの部品の数々。

こっ…こいつぁちょっとハードルが高くないですかい…?
開けた箱をそっと閉じ、編集長にメールを送りました。

岩田「ちょっと、思ってたのと違いました。これは無理だと思います」
編集長「え? そんなこと言わずにせっかくだから、試しに組み立ててみない?」
岩田「マジすか…(でも編集長は手先器用そうだし、こういうの得意なのかしら…?)」


ってなわけで、ある冬の日の朝。
まともな社会人だったら忙しく働いている時間、だいの大人3名がミニチュア家具キットを囲み、腕を組んでいました。

最初に沈黙を破ったのは、編集長でした。

編集長「ミニチュアキットって、なんかちがうね? なんか思ってたイメージとぜんぜんかけ離れてる
岩田「だからっ!! メールで言ったじゃないですかっ!! 写真まで添付して訴えたのにっ!!」
編集長「最近、ちょっと老眼きてるからなあ」
岩田「老眼、関係ないでしょ! さては写真、見てなかったな(怒)」
南澤「まあまあ、全部完成させるのは無理だとしても、とりあえず簡単そうな机とかソファとか、1、2個だけでもやってみません?」

渋々やってみました。

ところがのっけからつまずきます。
説明書が全部英語だからです。そもそも英語っていうだけでもわかりにくい上に、説明ではなく、雰囲気重視なところがあって困る。


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「Glue as shown」(こんなふうにくっつけましょう)


こんなふうにくっつけましょう。

「え? ホワット? 待って待って、こんなふうにって、どんなふうに?」
「このほっそい部品同士を、どうボンドだけでくっつけるわけ?」
「固まるまで指でずっと押さえてろっていうの? 指もくっつくよ!」
「こんな薄い板を、ミリ単位でカットしないといけないの?」
「老眼でよく見えない」
「老眼は我慢してください!」

全員でブツブツ言いながらも、進めること15分。

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ここで編集長に異変が生じます。

編集長「あ、あれっ?」
南澤「どうしました??」
編集長「なんかこの針金、圧倒的に必要な長さに足りてないんだけど…」
岩田「え? 間違ってカットしちゃったんじゃないんですか??」
編集長「どっか、飛んでっちゃったのかもしれない」
岩田「え~! なくしちゃったんですか! もう!」

急遽、岩田が金物屋に、足りない針金を買いに走ります。
そして無事針金をゲットしてもどってきたときには、すでに開始から1時間が経過。
みんなが外資系の企業に厳しい交渉を挑んだり、シビアな目で見積もり額を確認しているような時間に、ミニチュア家具づくり。我々は一体なにをしているんだろう。

途中経過はこの通りでした。


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…って、チェストの外側部分だけかい!!
ってか、鉛筆で引いた線が表に見えちゃっててめちゃくちゃ汚いじゃないですか!

なんだかこれは先行きがとても怪しいぞ…という空気が漂う中、無事針金が手に入ったのでテーブル作りを再開します。
が…。

編集長「あれっ? このテーブル全然脚が立たない。生まれたての子鹿みたい」

・・・・・・・。

「仕方ないよね」とつぶやきながら、紙粘土にテーブルの脚をぶっ刺して無理やり立たせるという荒業を使い、ボンドで固めます。


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き、き、き、汚な!!
これじゃ開校以来代々使われている図工室の作業台だよ。

うちの編集長って……もしかして思ってたよりも不器用……。


そして2時間悪戦苦闘した上に、ようやく出来上がったのがこちら!


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…コホン。

編集長が作ったチェストはぱっと見は可愛いけど、よくよく見るとなんだかガタガタしているし、ボンドがうまくくっついてない部分はペラペラしているし、素人が作りました感全開。テーブル(図工室風)にいたっては、ちょっと人にあげるのがはばかられるレベルの仕上がりだったので、即刻退場。

このままじゃ「ひと手間献本」が成立しない…(焦)。
ってことで、(急遽、一応美術系出身の)ワタクシ岩田が、紙粘土と100均グッズを駆使してソファや観葉植物などのミニチュアを作って添えて、なんとか格好をつけたのでした。



編集長「これくらいの素人感があったほうが気持ちが伝わるはず」
岩田・南澤「はい…」


その後、ドールハウスキットの箱が再び開けられることはありませんでした。


とまあ、こんな感じではございますが、今後

<<サンクチュアリ出版のひと手間献本を受け取ってみたい>>

という勇気あるインフルエンサーさんがいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご連絡くださいね♪


テキスト 岩田 梨恵子(いわた りえこ)
1980年佐賀県生まれ。サンクチュアリ出版宣伝チーム。2人の子どものワンオペ育児に奮闘中。いかに日々の家事と仕事を手抜き…効率化できるか? 日々模索しています。
編集 橋本圭右(はしもとけいすけ)
1974年東京生まれ。サンクチュアリ出版編集長。主に山と電車とファミレスで活動。編集した本。好きなものはゲーム、ジムニー、ベイスターズなど。


【画像提供】
iStock.com/bee32
iStock.com/recep-bg


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