新生NewsPicksの編集長さん! 難しいことはわかりませんが、「出版の未来」がどうなるのか教えてください のつづき



サンクチュアリ出版編集長
の橋本圭右です。

前回までのあらすじ。


常識破りのプロモーションを展開し、
『多動力』『メモの魔力』
『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』
など立て続けにヒットを飛ばしている
NewsPicks Books✕幻冬舎。

そしてこのたび
NewsPicks出版部門の
「新レーベル」として、
出版界の熱い注目を一身に浴びながら
ド派手に誕生したNewsPicksパブリッシング。

その編集長の座についたすごい人、

元ダイヤモンド社の井上慎平氏は、

いまどういう状況にあり、なにを考えているのか?

直撃取材をしたところ、

1、じつはまだ本の流通をはじめ、出版のことはあんまりよくわかってない。フライングぎみ?
2、職場は時代の最先端をいくIT企業。なんとなく前時代的な出版チームは肩身が狭い。アウェー感がある?
3、ただ、出版にかける想いだけは強い。本屋さんの「棚」や「ジャンル」にとらわれない本作りをしたい。出版を変えたい。実用性ではなく、問題提起を打ち出したい。

とのこと。


うむ。なんというか…

今をときめく
NewsPicksの編集長なんですから、
それはもう、アカデミックヒルズの最上階の住人であって、
計算の立たないような行動は絶対に避けるだろう
というイメージがあったんですが…

実際は、

行動が衝動的というか、
少年マンガの主人公的というか、
弊社の先代社長の高橋歩さん的というか、

そんなんでいいの?

と眉をひそめたところまでが前回。

もうちょっと詳しく話を聞いてみましょう。


橋本  結局どういう本を出そうとしているのか、うまくイメージできないんですが、NewsPicks新レーベルが想定している年齢層というのは、慎平くんと同年代の30代前半ですか?

井上   結果的に同年代が多くなるかもしれない。20から30後半、狙いとしては20から30後半くらいでいきたいんですけど。人口のボリューム的には40くらいの人も多くなるんちゃうかな。50、60の人にも届くかもしれない。一番は30代ですけど。

橋本   それはビジネス書の守備範囲全部ですね。

井上  けっこう世代差はあるなと思ってて。

橋本 そうですか。
たとえば『「学力」の経済学』のときなんかは、ちょっとターゲットとしては慎平くんよりも年上だったわけじゃない?
子どもがいて、その子どもが小学生くらいの人ですよね。
ゲームをさせていいのかどうか、ご褒美で釣るのはどうとかって、一番興味のある人たち。
そういう本を「問題提起」として出したいと思ったのは、やっぱりそういう疑問を持っていたから? 

学力に好影響・悪影響を与えると信じ込んでいるものが多々あるけど、おかしいんじゃないかって?

井上  ちょっとだけ前のインタビューでも喋ったんですけど、

※“僕のモチベーションの根源は突き詰めると「怒り」なんですよね。”(井上談)

僕はいつも怒ってて。
学校の先生が死ぬほど嫌いやったんです、小学校のときも。クソみたいなことを言うてきおる先生おるじゃないですか。
「子どもとはこうあるべき」みたいな像を押し付けてきて、すごい自分たちは気持ち良くなってるみたいな。
あの構図が超嫌で、なんとかならんかなと。僕が教育に対して怒っていたら、同じく教育に対して怒っている人がいて、それが中室さん(『「学力」の経済学』の著者)だったんです。

ただ中室さんは教師がどうというよりも、子供の目がキラキラしているかどうかとか、そういうよくわからん基準で教育方針を決めるな! って、普通の人とは違う怒り方をしていたので、興味を惹かれた。
それ確かにおかしいですねって。
それだけです。
だから、読者のニーズとかは、いちおう考えているんですけど、いつも後付けといえば後付けで。
けっきょく、自分が怒っている対象がまずあって、同じように怒っている人を探している感じです。

橋本  マジだったんですね。あの箕輪さんとの対談記事に、“僕のモチベーションの根源は突き詰めると「怒り」なんですよね。”って書いてあって、「え、うそーん」って思いましたよ。
慎平くんって穏やかそうじゃない。イケメン住職みがあるっていうか。なんだか穏やかそうな人が、そんなに普段カリカリしてるなんて、信じがたい。

井上  プンスカプンスカしていますよ。出版業界にもすごいプンスカしてるし。プンスカしてないと、僕本をつくれないんですよ。

橋本   そこで記事の話に戻りますが、やっぱり今の流通だと限界があって、粗製乱造状態になっている。
つまらないから、返本される。返本されるから、ますます、つまらない本が出版されるという悪循環に入っていると、おっしゃってました。
その悪循環から抜け出すための慎平くんなりの具体的なアクションとして、今回のNewsPicks新レーベル編集長就任につながった、と。
そこでNewsPicksで慎平くんがこれからやろうとしていることと、既存の出版社のやり方と、一番の大きな違いってなんですか?

井上  普通の出版社って、本を出してみないと、売れるか売れないのかわからない。
僕がいた前の2社もそうですけど、
面白そうな企画をつくってみて、売れるか売れないわからないながらに本屋の店頭に置いてみて、
そうしたらたまたま通りかかった人が「面白そうだ」と思ってくれたら売れるし、「あんまりやな」と思われたら売れへんし、みたいな。

そうじゃなくて。
「あの出版社のあいつらは、ああいう奴らだよね、ああいうキャラよね」というのをまず知ってもらいたい。
それで買ってもらえるかどうかはわからないですけど、本を出したときに、「あいつらは、こういうことをやりたいんやな」って事前のキャッチボールがちゃんと出版社とお客さんの間でできている状態が理想です。
レーベルというのがいい。
レーベルとお客さんの間でそういう信頼関係、友情関係がある。出たとこ勝負じゃない。それが一番デカい違いかな。

橋本  箕輪厚介編集長がやってらっしゃる、オンラインサロンだったりとかも、出版社とお客さんの間で作っている信頼関係ですよね。
それとはまた違うスタイル、というのを模索しているんですか?

井上  そうですね。箕輪さんはそれを個人でやっているんです。
「俺が時代だ! 俺についてこい!」と宣言して、10万人のフォロワーをガーッと引っ張っていくみたいな。
あんなん僕にもできたらいいですけど、ちょっと我々みたいな一般人にあんなんは個人でやろうと思っても、できへん。
それやったら、レーベルのコンセプトとして変わろうと思って。
たとえばアパレルとか雑貨やったら、「コンセプトとして好きになってもらう」という見せ方が多いじゃないですか。
この店の出すのはこういう感じものだから安心、好き、応援したい。みたいな。それを出版社でやりかったという感じです。

橋本  「ほぼ日」みたいなことですか?

井上  「ほぼ日」よりも、「北欧、暮らしの道具店」のほうが近い感じです。
「ほぼ日」も、糸井さんがいてこそ、じゃないですか。
同じWeb、ECでいうなら、「北欧、暮らしの道具店」は、トップの青木さんが好きやから買っている、という人は少ないと思うし。
でもなんかあの世界観が好き、みたいな。
難しいんですけどね。ちゃんとやらんと。すごいウソ臭くなりそうなんで。コンセプトは「希望」とか言っちゃって。「ケッ」と思う、もうひとりの自分もいます。

橋本  なんでですか。僕は感動しましたよ。
コンセプトは「希望」。
なかなか言えるもんじゃありません。

井上  うざいじゃないですか。

橋本  いやいや。大人が純朴な目をして「希望」と言う。この時代には響きますよ。

井上  お前よう照れんと言えるなと思っとる自分もいるわけですよ。

橋本   SNSで真新しい言葉が飛び交っているところに、そういうまっすぐな言葉はかえって目立ちます。

慎平くんの行動はいろいろ、時代に逆行してる感じがする。
いまの、たとえば「どうすればすぐに頭が良くなるか」「どうすれば簡単に仕事で成功できるか」を求めるような読者傾向と逆行して、
「教育に対するその考え方はいかがなものか?」「その仕事を続けていいのだろうか?」って疑問提起をする。

さらに言えば、「この本を読むとどんな良いことがあるのか?」っていうメリットの言語化が重要視される中で、あえてこの「希望」という、あいまいの極みとも言えるキーワードをボンと放り込んだ。

井上  何も言ってないですね。

橋本  本当ですよ。「希望」とか「幸福」とかって、うちの会社では禁句ですよ。企画会議とか書店営業とかで、「この本は、希望を与える本です」とか言っちゃったら、おしまいですもん。下手すりゃ、しばらく口利いてもらえなくなる。あいつ疲れてるのかな? って。

井上  どうとでも解釈できる言葉ですもんね。

橋本   でも慎平くんがそういうことを堂々と言っているのが、僕の中でショックだったんです。
もしかしたら俺が古いんじゃないか。俺の想像もつかないような、ものすごく新しい流れがきているんじゃないかって。

井上  言っている僕自身もいろいろ思うんですけどね。
「希望」ってうざいなという自分もいる。もう一人、それは結果的にできるものだと思う自分もいる。
「自由」とかいうキーワードと一緒で、自由自由と言っているやつはダサいじゃないですか。あんまり自由じゃないじゃないですか。

橋本  弊社、弊社。

井上  しくじった。言葉のチョイスを間違えた。

※編集注…サンクチュアリ出版は創業当時「20代、自分、自由」をコンセプトにしていました。

橋本  いや、べつにいいですよ。

井上  「自由」も「希望」も、そんなわざわざ言うようなもんじゃないやろうという思いもあります。
でも、出版社って3,000社くらいあるじゃないですか。
だから1社くらいそういう変わったところがあってもええかな、みたいな。

橋本  まあなんにしても今後、井上ブランドをつくっていくんでしょう?
自分がカリスマ編集長として立つわけではない。
けど、組織としての知名度と好感度と信頼度がどんどんアップさせて、どんどんサポーターを集める。
そんな、今まで出版界の誰もが見たこともないようなインフラをつくってやろう! そんな意気込みですよね。

井上  そういわれると、そうなのでしょうか。
でも、どうやったら好感度ってアップするんですか?
僕は坊主だということ以外、特徴ないですけど

橋本  いやいや。知りません。これから御社がやっていかれることでしょう。楽しみにしています。

井上  本当は箕輪さんと対比されるの嫌やなと思ってて。
だから、まあなんか違うことやらんとしゃあないか、という感じなんです。

橋本  もしうまくいかなかったら、「そんなコンセプトは知らん」ってしらばっくれればいいですよ。そのときはこのnoteの記事も削除してさしあげます。もちろん、有料になりますが。

井上  有料ですか。

橋本  いずれにしてもコンセプトなんて、言ったもん勝ちじゃないですか。
なんとなく「希望」とか言っておけば、
なるほどこれが「希望」ということなのかと、受け手側が勝手に解釈してくれるかもしれない。わかんないけど。
でもそれは言葉で説明するよりも、
これから出すコンテンツで証明していくしかなさそうですね。

井上  コンテンツで見せていくしかないですね。
たぶんその話を、インタビューアーさんから聞かれたら「見せます」と答えればいいんですが。

同じ作り手であるケイスケさんに伝えるのは、けっこう難しいな。
レーベルの縛りを強くして、「ああ、これはたしかに誰が見ても“希望”ですね」みたいな本を、立て続けに出してもつまらないでしょう。
バランスをどう取るかが難しい。
「マジ“希望”とかいって寒いし」というビジネスマンにもちゃんと喜んでもらいたいし。

橋本  なるほど。
急にこちら側の話になって申し訳ないのですが…。
サンクチュアリ出版の先代社長の、高橋歩さんっているじゃないですか。
僕はもう、彼がサンクチュアリ出版を手放した後に入社してるので、思想的にも、制作的にも、なんのかかわりもなかったんですが、
なんとなく、彼からはじまった会社だから、彼の匂いはほんのり残したいとは思ったんです。

だから、サンクチュアリ出版というか、僕いち個人としては、いちおう「自由」というキーワードでずっと本を作っているつもりで。

ただ、その「自由」というキーワードをめちゃめちゃ拡大解釈しています。
旅をしよう、放浪をしよう、みたいな自由もあれば、会社員生活を楽しもう、暮らしの悩みを断ち切ろう、という自由もあるだろうと。
拡大解釈しまくりながら、僕なりにコンセプトは続けているつもりです。

井上  なるほど。その感じに近づけられたらいいな。
それぞれの人が思う、それぞれの希望がありますからね。
押し付けられるものでもないですし。確かにいろいろ用意できるといいですよね。

橋本  物は言いようです。

井上  物は言いようですね。
でも、また同じようなことを言いますが、「この本さえ読んどきゃ、あなただけうまくいくよ」みたいな本めっちゃ多いじゃないですか。
あれは嫌やなと思っています。ああいう本たちに対するアンチテーゼとしての本を出したいなという気持ちがあります。

橋本  大多数の人が「この本さえ読んどきゃ、あなただけうまくいくよ」という本を求めるのは、ごく自然なこと。
でもそういった風潮に対するアンチテーゼの本でありながら、ちゃんと売れる本をつくっているというのが奇跡的。
マーケティングに歯向かった本って、なかなか売れないじゃないですか。

井上  そうは言いつつも、(役に立ちますよ…)と小声でささやきながら、本を作っている節もあるんですけどね。

橋本  そのさじ加減が絶妙なんでしょうか。
『「学力」の経済学』は、使える実用書の空気を出しつつ、アカデミックな本に仕上がっている。
何をもって「教養」か「アカデミック」かよくわからないけど、無理やり翻訳するんだったら、<直接、生活の役には立たないけれど、長い人生では大事なことかも>。
人生のいつかどこかで役に立つかしれない。あるいは人生を豊かにするかもしれない。そういったテーマを、「今すぐ知りたい」ものに見せるセンスがすばらしいですね。

アカデミックと言えば、NewsPicksのアカデミア会員(月額5000円の割増会員)って何人なんでしたっけ?

井上  5,000人くらいです。
その5,000人の中には「箕輪さん大好き!」の人もいれば、「今回の対談すごい良かったです」の人もいれば、
「もう本とかまじいらんから会費安くしてくれよ」みたいな人もいる。
いろいろな考えの人がいる中に、これから僕たちの本を送り届けていくことになります。

橋本  そのあたりはうまくいきそうなんですか? 自己啓発寄りの本を好むお客さんと、最新のビジネストレンドを追いかけるお客さんって、微妙に違う気がするんですけど。
なんなら、お互いがお互い、反目し合っている面もあるというか。
そういう事情は考慮に入れているんですか、ターゲットとしては。

井上  そうですね。ただ自己啓発路線のお客さんって、言ってしまえば箕輪さん編集本のファンなんです。
その点でいうと、箕輪さんファンのことは僕、全然気にしていません。
箕輪さんの本がめっちゃ売れたとしても、アカデミア会員はそんなに増えないから。箕輪さんの本を毎月1,500円で買えばいいだけの話ですから。
だから、たとえ箕輪さんが作るような本から、出版物のトーンが一気に変わったとしても、アカデミア会員さんがめちゃ減っちゃうとか、たぶんないから、気にせんで良くて。

じゃあ、今のNewsPicks読者側だけを向いて本を作ればいいか? と言われると、そうでもない。
僕がただ思いっきり作りたい本を作ったら、それはそれで、たぶんNewsPicks読者には求められていない本になる気がします。
おっしゃるとおり、最先端のビジネストレンドみたいな情報を求めている人の割合がけっこう高いから。

だから(ほんまにこの本を作りたい!)という衝動にまかせた企画もやれば、12カ月12冊の中には、(最先端のビジネストレンドを求めている人も満足してもらおう)とサービス精神にのっとった企画もやる。

まあ、僕のことはまだええんです。
正直いって、富川さん(もうひとりの編集者)の作るような教養本を、どうやって受け入れてもらうかが難しい。
今では売れているからこそ『サピエンス全史』も読んでもらえるだろうけど、普通はいきなり『サピエンス全史』みたいな類のごっつい本が送りつけられてきたら焦りません?
本を送り出す前から、「今、この本を読むのがいいんだな」と認識してもらえるような、そういうコミュニケーションはちゃんとしていかなあかんなと思っています。

橋本  NewsPicksブランドの本だから読みたい、井上慎平の思想についていきたい、富川さんが手に入れる情報を共有してほしい、という人たちを、これからいかに増やしていくかということですよね。
そしてそのコミュニティづくりを、既存のNewsPicksの枠組みとは違うところでやっていくと。

井上  そうです。確かにそうですね。
僕は(このレーベルの本やから買いたい)と思ってもらいたいんやな。
そして、そういう人を増やしていかなきゃいけないんやな。
ただ、その方法論がわからないままに立ち上がってしまう。

橋本  よくもまあ、ノープランで。

井上  ノープランなのに、インタビューでようあんなことを言えるなと。

橋本  あのインタビュー記事は、かなりの数の人が読んだと思いますけど。

井上  どうしましょう? やり方が全然わからない。僕はどうやって「希望」というコンセプトを実現させたらいいですか。

橋本  知らないですよ。僕らは「本屋さんの店頭でいかにして手に取っていただくか?」「欲しいと思っていただくか?」という、その試行錯誤というか、せめぎ合いをしている派ですから。
慎平くんはそれを真っ向から否定したわけですから、お手並み拝見というところです。

井上  ほんまそうですよね。
たぶんみんなが思っているのよりも全然ノープランです。なんかもう歯車が動き出しちゃった感じがある。
明日「ウィークリーオチアイ」という、落合陽一さんの番組に出なきゃいけないんですが、道化としてやっていくしかないですよね。

まだもうすこし、つづきます。


橋本圭右(はしもとけいすけ)
1974年東京生まれ。サンクチュアリ出版編集長。宣伝部長。主に山と電車とファミレスで活動。編集した本。好きなものはゲーム、ジムニー、ベイスターズなど。



この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

気に入ってくれたら、サポートをお願いします!

ウレシイ! ウレシイ!
12

聞き出せ!

本の世界には、よくわからないことが多い。私たちが知りたいことだけを、調べたり、聞いたりして、次々と発信。

コメント1件

ここの本って文字でかくて行間スカスカで「ああ、馬鹿が読む本なんだな」って感じでとてもいいですよね
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。