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バルセロナの心臓と言われた男セルヒオ・ブスケツの終章

まず初めに、皆さんは世界最高の選手といわれて誰を想像しますか?
時代を問わず類い稀な選手は数多く存在してきました。最近ではC.ロナウドやメッシを選ぶ方も多いでしょう。昔でいえば、アンリや怪物ロナウド、ルーニーやベッカム、なども挙げられますよね。彼らに共通しているのは得点を取れる選手だということ。サッカーを知らない人でも、得点を取れる選手はすごい!というわかりやすいスタッツがあるが故に、注目もされるし、メディアでも扱われます。私も昔はそうでした、C.ロナウドに憧れてドリブルを練習してた時代もありました。とにかくサッカーは点を入れるスポーツで、得点を奪える選手が素晴らしいと。もちろんそれはサッカーの一つの楽しみ方ではあります。

しかし今回私がここに記したいことは、サッカーを見る上で大切なのは、そのゴールがどのような過程でそこに辿り着いたのかということです。バルセロナというクラブの素晴らしいところは、そのゴールまでの道筋を明確に持っているという点です。彼らのサッカースタイルは、力技や個人の身体能力によるものではなく、頭を使ったポジショナルプレーと、高速なパス回しを行うことで、より確実に前線の選手にボールを届け、ゴールを量産するというプレースタイルなのです。

それは、誰にでもできる戦術ではなく、バルセロナの下部組織の選手が大切な過程を歩んできたからこそ体現できることであり、それ以外の選手がそのプレースタイルに合わせるのは非常に困難だといわれています。そんなバルセロナのサッカーを体現してきた主要なメンバーが3人います。シャビ、イニエスタそしてセルヒオ・ブスケツです。今回は、今季限りで引退宣言をしたブスケツについて思う存分語っていきたいと思います。


セルヒオ・ブスケツは逆三角形の底に位置するピボーテというポジションを主戦場としています。ピボーテの役割は基本的に中盤での守備のタスクとボールを保持して前線やIHに繋げることです。このピボーテというポジションが、特にバルセロナにとって非常に大切なポジションとなります。バルセロナのサッカーのスタイルというのは、個人でのドリブル突破に依存しない形です。とにかくパスを繋ぎ相手のプレスを回避していきます。とは言っても相手からしてみればピボーテの位置、つまりブスケツの位置でボールを奪取してしまえばあとは、DFとの勝負になるので、そこでボールをとってしまいたいという心理があります。

逆にピボーテからすればそのプレスを剥がしてしまえば、攻撃の起点になる非常に重要なタスクを担っています。その相手を剥がすという点で、ブスケツは素晴らしい選手でした。相手を極限まで惹きつけておいて、足裏を使って相手をいなしたり、重心の逆を取ったりと、見ていて惚れ惚れするプレーばかりでした。また守備においても素晴らしい選手でした。ネガティブトランジションをよく理解していてどのタイミングでどのポジショニングが必要なのかをわかっていたように思えます。その状況判断と、長い手足を存分に使い、相手の攻撃の芽を悉くつぶせていました。

また、ブスケツが最高の選手であるのは、視野の広さにもあると感じています。特に縦に刺すパスのセンスはバルセロナの選手の中でもピカイチでした。体の向きでフェイントをかけ本来開くはずのないコースを作って見せたり、オーバーラップの選手がどのタイミングで相手の最終ラインを越えるのか、どのタイミングでボールが欲しいのかというのを理解していました。そして、そこに正確なパスが出せる。これは現代フットボールにおいても彼を越える選手はいないんじゃないかと思うくらいです。


彼は初めバルセロナに裏口入団したのではないのかといわれるほど、平凡だったそうです。しかしペップグアルディオラによってその才能は発見され、このように成熟していきました。ポジショニングとパスセンス、相手を一枚二枚剥がしてくれる足元の技術、無駄に走ることなくピボーテを1人で完結させることができる唯一無二の選手だと思っています。

私は彼のことを、現代サッカーに殺された名雄だと思っています。現代サッカーにおいて、スピードとフィジカルはなくてはならないものになっています。特に前線の選手も献身的にプレーしますし、どのチームも強度が増してきています。昔のように個人頼みというサッカーからチームとして11人の選手をどう融合するのかを重点的に考えることになります。するとどうしてもピボーテは狙いの的になるし、タスクが増えることになります。全盛期に比べるとミスや、スピードがなくなり、ブスケツのミスからの失点も少なくありませんでした。しかしそれでも彼にしかできないことはたくさんありました。特に縦につけるパスはいつ見ても最高級でした。ジョルディ・アルバへのロブパスや相手のディフェンス間を通す決定的なパス。いつ見ても美しかった。

今季バルセロナを退団した、ブスケツ、アルバ、ピケですがこの中で一番抜けてほしくないピースはやはりブスケツでしたね。彼がいる試合といない試合とでは、中盤での試合の作り方が180度変わってしまいます。彼のような嗅覚と身体能力、サッカーIQを持ち合わせる選手は今後現れないだろうと思っています。

バルセロナの今シーズンの課題はその穴をどう埋めるのかだと思っています。現状ではキミッヒの名前が上がっているみたいですが、個人的にはカンテラの選手にまかせるべきだと思っています。ブスケツがそうであったように、カンテラの選手ならその役目を果たせる選手(例えばニコ)がいるはずですし、彼を目指している選手も必ずいると思います。


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