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世界の童話をアレンジしたら(一)

絵: 『星空をペガサスと牛が飛んでいく』八戸市立湊中学校生徒

イソップ寓話を残酷なグリム兄弟風に、グリム童話を詩的で感傷的なアンデルセン風に、アンデルセン童話を教訓的でユーモラスなイソップ風にアレンジしたらどうなるか?

「北風と太陽」、「アリとキリギリス」、「白雪姫」、「人魚姫」、「マッチ売りの少女」、どれが誰の作品か分からない人が多いのではないでしょうか?著作権もなくなっているでしょうし、勝手に変えても問題ないでしょう。

実際にどう変わるか試してみます。でも、その前に童話とは何かについて説明します。

童話とは、様々な国や地域で伝承されたり、創作されたりした子ども向けの物語です。童話では自然や動物を擬人化したり、魔法を使ったり、現実とは異なる世界や登場人物が描かれて、様々な教訓や感動、想像力や夢を与えてくれます。また、時代や地域による文化や価値観の違い、作者の感性や想像力の違いからも、作品のイメージや解釈、感想が変わります。つまり、童話とは、いい加減で多様なものなのです。

それでは世界三大童話作家とその代表作を紹介します。

まず、紀元前6世紀頃、古代ギリシャのイソップは、動物や植物などを登場させて人間の道徳や社会を風刺した短い寓話を書きました。イソップの寓話は人間の性格や社会の問題などが投影されており、教訓的でユーモラスなものが多く、現代でも広く読まれています。例えば、「北風と太陽」では、力ずくで相手を動かそうとしても逆効果になり、優しく説得するほうが効果的であることを教えてくれます。「アリとキリギリス」では、将来に備えることの大切さを教えてくれます。
代表作には「北風と太陽」、「ウサギとカメ」、「アリとキリギリス」などがあります。

次に18〜19世紀、ドイツの民話学者であるグリム兄弟は、ドイツ各地で収集した民話や伝説を編纂して出版しました。グリム兄弟の童話は、民衆の生活や文化を反映し、正義や勇気を象徴する一方、恐ろしい場面や残酷な描写が多く含まれています。元々が子供向けではなく、其々の時代背景や社会的・文化的意味を研究するための学術書だったからだそうです。
例えば、「シンデレラ」では、継母の娘たちは王子様に靴を合わせるために自分の足の一部を切り落とし、物語の終わりには白い鳥が彼女たちの目をつついて盲目にしてしまいます。「白雪姫」では、邪悪な女王は白雪姫にひどい仕打ちをした罪で、真っ赤に熱した鉄の靴を履かされ、死ぬまで踊らされます。初版の残酷さは、後の版で子供向けに改変されてきたそうです。
代表作には「シンデレラ」、「白雪姫」、「赤ずきん」などがあります。

最後はデンマークのハンス・クリスチャン・アンデルセン、自らの感性や人生観、生い立ちや内面を詩的に表現した童話作家です。アンデルセンの童話は、美しくも悲しい恋愛や人生を描き、読者の心に深く響きます。
アンデルセンは貧しい家庭に生まれ、自分の容姿にもコンプレックスを抱いて、夢や恋に破れ続けた悲惨な人生を送ったそうです。そのため、彼の作品には悲劇的な結末や社会批判、優しさへの憧れが多く見られます。例えば、「マッチ売りの少女」では、貧困と無関心の社会に対する嘆きと、死を通しての幸せへの憧れを詩的に表現しています。
代表作には「人魚姫」、「マッチ売りの少女」、「雪の女王」などがあります 。


それでは実際にアレンジしてみましょう。

イソップ寓話を残酷なグリム兄弟風にアレンジしたら、どうなるのでしょうか?

「アリとキリギリス」(グリム兄弟風にアレンジ)

夏の間、キリギリスはバイオリンを弾き、歌って遊んでいましたが、秋になると不安になって、一生懸命に働いて食べ物を貯めているアリに聞きました。

キリギリス: 「冬が来るまえに、僕も働いて食べ物を貯めないと不味いよね」
アリ: 「僕たちは秋に君の歌を聞くのが大好きなんだ。心配するな。冬になったら何とかなるさ」

やがて冬が来て、雪が降り積もりました。キリギリスは食べ物がなくて空腹に苦しみました。そこで、アリの家に行って食べ物を分けてくれるように頼みました。

アリ: 「おまえは秋に何をしていたんだ?働いて食べ物を貯めなかったのか?」
キリギリス: 「僕は君たちのために歌っていたのに」

そう言って、キリギリスはアリの巣にも入れて貰えず、雪に埋もれて亡くなり、アリたちは春を迎えるご馳走ができたと喜びました。

陰惨すぎるので、結末をアンデルセン風にアレンジすると、秋になってキリギリスは恋に堕ち、アリたちと恋人のために、朝から晩までバイオリンを弾いて歌い続け、天寿をまっとうし、最期はアリたちに看取られて亡くなりました。アリたちは歌のお礼に、キリギリスたちの卵を巣に運び、キリギリスの子どもたちが春になって生まれるまで、大切に見守りました。

もう一つ、イソップ寓話の「北風と太陽」もグリム兄弟風にアレンジしてみましょう。

元々の話では、北風と太陽が、どちらが強いかを決めるために、旅人の上着を脱がせることに挑戦します。北風は強く吹いて、旅人の上着を奪おうとしますが、旅人は上着をしっかりと身につけます。太陽は優しく照らして、旅人を暖めます。旅人は暑くなって、上着を脱ぎます。この話の教訓は、「優しさは力よりも効果的だ」とか、「暴力は逆効果だ」ということです。

グリム兄弟風に結末をアレンジしたら、どうなるでしょう?太陽は優しく照らして、旅人を暖めましたが、旅人は上着を着たままでした。太陽はますます明るく照らしましたが、旅人は上着を脱ぎませんでした。太陽はとうとう怒って旅人を上着ごと燃やしてしまいました。この話の教訓は、「仏の顔も三度」とか「長い物には巻かれろ」ということです。

続く、、

P.S. 『イソップ寓話』

「北風と太陽」: 北風と太陽が、旅人の上着を脱がせることができるか勝負する物語です。北風は強い風を吹かせて上着を吹き飛ばそうとしますが、旅人は上着をしっかりと押さえます。太陽は暖かい光を照らして旅人を暑くさせます。すると旅人は自ら上着を脱ぎます。この物語は、力ずくで相手を動かそうとしても逆効果になり、優しく説得するほうが効果的であることを教えてくれます。

「ウサギとカメ」: ウサギとカメが、どちらが速く走れるか競争する物語です。ウサギはカメよりずっと速く走れるので、途中で休んだり寝たりしています。カメはゆっくりですが一生懸命に走り続けます。ウサギが目覚めたときには、カメはすでにゴールしていました。この物語は、油断大敵であり、コツコツと努力することの大切さを教えてくれます。

「アリとキリギリス」: アリとキリギリスが、冬の準備について対立する物語です。アリは夏の間に食べ物をせっせと集めていますが、キリギリスは歌って遊んでいます。冬になって食べ物がなくなったキリギリスは、アリに分けてもらおうとしますが、アリは断ります。この物語は、将来に備えることの大切さを教えてくれます。

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