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【ファン企画】夏だ!エロイカだ!ネップリ企画だ! 参加しました!

あざラッシュまんまる @manmarushark 様主催
【ファン企画】夏だ!エロイカだ!ネップリ企画だ!

超短編小説にて参加をしました。
しばらくの間、このまま置いておきます。
よろしければ、読んでらしてください。  山吹屋

★『スーツの騎士 Rose Tint My World』
ロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスでバレエを観劇した。
御贔屓のバレエダンサーの晴れ舞台であったし、好きな演目でもあった。
ジェイムズ君もボーナム君もバレエに興味はない。
留守番を頼み、たまには1人でゆっくりするのもいいかなと考えたのだ。

少佐の任務の邪魔をしに来たわけではない。
ただ、少佐の任務と少しばかり被っていたようだ。

「伯爵、ドアを開けろ」

鑑賞後の余韻に浸りながら、ホテルの部屋でワインを片手に寛いでいた私に、突然の訪問者が現れた。

「少佐、こんな夜中にどうしたんだい」

「あのバレエダンサーと知り合いだったのか」

まったく意味が分からない。

「バレエダンサーと付き合っていたのか!」

あのバレエダンサーとは誰なのか。付き合っているとは?
私の「いきなり何だい」意味を尋ねる小声に反して、少佐の大声はホテルの廊下に響き渡る。
ホテルのフロントに通報でもされたら面倒だ。仕方がなく、私は少佐を部屋に招き入れた。

「君の言うバレエダンサーが今日のロイヤル・オペラ・ハウスの主役の彼ならば、私はファンなだけだ。
彼の初主演の舞台だった。ぜひ観たくて、ボーナム君もジェイムズ君も置いて一人でロンドンまで出て来たんだ」

テーブルの上に置いたままだった半券にプログラムを無遠慮に調べている。
チケットは正規のルートで購入したし、プログラムだって開場とともに入って並んで買ったものだ。何かあるわけがない。

それにしても劇場内でちらりと見かけたスーツに黒髪はやはり少佐だったようだ。
いや、あの時は脳が反射的に拒否をして少佐かどうかの判断を怠っていたのかもしれない。

「えっ、少佐」

少佐が上着を脱ぎ、そればかりか私のワインを勝手に注ぎ飲み始めた。
ルームサービスのワインではあるが、最高級の一品だ。

「何をしているんだ」

「今日はここに泊まる。お前はロレンスと同室になったことが無いからな。あれよりは伯爵の方がましだ」

「ロレンスが何だって」

空になったワイングラスをテーブルに音を叩てて置き、そのまま長ソファに横になってしまった。

「ところで、伯爵、お前はああいう男が好みだったのか」

あっ、と身体が動いた時には少佐は既に私に背中を向けてしまった後。

「せっかくのバレエ鑑賞だったが」

いびきをかき寝てしまった少佐を眺めながら、私は改めてグラスにワインを注ぐ。

「君って人は」

余韻は急速に冷えていく。
姫を救う為に舞い踊った王子は遠のき、黒髪にスーツの騎士が現れた。

「少佐に乾杯」

寝てしまったはずの背中がわずかに揺れたような気がした。

★私はフランス情報局のQが1番の推しです。
Q様は普段はどんな感じの活動をされているのか。妄想が止まりません。

「パソコン大売り出しやるね。よろしくあるよ」

私はある日突然に届いたメールを読んでいる。

伯爵関係で知った怪しげな中国人の青年が開く店だ。

その彼がなぜ、私の個人メアドを知っているのか。
疑問もあるが、この店は何でもありなのだろう。

普段ならば削除してしまうが、非常にタイムリーであったのは否定出来ない。
私は考えを巡らした後で、返信をした。

「パソコンがあるのか」

「いらっしゃいませある。品揃えバッチリね。伯爵とは友達あるか。半額クーポンある」

「むむ☹」

「友達ないなら、定価ね」

「定価なのか」

どうすべきか。仕事用ならば定価で買う。領収書を貰えば済む。
私物のパソコンが欲しい。
だが友達なのか。今までの経過からいけば友達より敵ではないのか。
しかし、半額クーポンは捨てがたい。

「ある意味で友達ではなく同士である!」

「どういう意味あるか」

「同じ目的、もしくは目標がある。少佐だ。少佐を捕らえたい」

「OKある!半額クーポンね」

フフン、

「半額だな。了解」

★『ツリーの天辺に Rose Tint My World』
「ご主人様。飾りつけはこんな風で如何でしょうか。クリスマス楽しみですね」

「俺は仕事だ」

今日は久しぶりに自分の屋敷に帰宅をした。
夕食を取り、食後の珈琲を飲んでゆっくりしていたのだが、
執事が待ってましたとばかりにツリーを持ち込み、飾りつけを始めた。

煩いわけでもなく、ただ「一緒にどうぞ」の言葉だけは退けて眺めていたのだが。何か違和感を感じる。

ああそうか。

「古い飾りは捨てたのか」俺は執事に問いただした。

「とんでもない。ご主人様が子供の時から変わっていません」

「だが飾りが足りない気がする」

「ですが箱はすべて取り出しました」

「見てくる」

クリスマスの飾りを仕舞っている物置部屋に行くが、棚のなかは箱は全て出されている。だがさらに奥に古い箱が1つ残されていた。

「これがそうか」

開けてみると思った通りクリスマスの飾りが並んでいる。
飾りの下に何か紙が挟まっているようだ。取り出してみると古い写真が一枚出て来た。

「ご主人様、飾りはありましたか」

「この写真は覚えているか」

執事が受け取り目を細めながら写真を見る。

「ああ、思い出しました。これはロンドンのデパートに出かけました時のです。
お父上様の所用で3人で出かけました時のです。珍しくご主人様がクリスマスツリーの飾りが欲しいと駄々をこねられまして。
ですが飾りはもう売り切れ。帰ろうとしました時にこの少年が『あげる』手渡してくれたのです」

写真には少年と俺が写っている。
だが、それよりも。

「デパートの大きなツリーの前でした。私がちょうどカメラを持っておりまして記念に一緒に撮りましたのですよ。お父上様ならもっと良く覚えておりますでしょう。ぜひクリスマスの夜にお話をなさられては」

俺は写真を穴が開く程に見つめる。
デパートの巨大なクリスマスツリーの飾りよりも輝く金色の巻き毛。
俺はその少年の横で、星の飾りを手に直立している。

あの時、少年から手渡された星の飾りは急速に輝きを失った。俺はどうしてだろうと思ったものだ。

「あいつが手にしていたから星は輝いていたのか」

飾りを手にいそいそとリビングに戻る執事。
写真は箱の底に置き、俺は蓋を閉じた。


読了ありがとうございました。
あざラッシュまんまる様の素敵な企画に参加をさせていただきました。
山吹屋