見出し画像

『レディ・プレイヤー 1』 レビュー:愛あるオマージュと欠点

前から気になってはいたのだが、連休中ということで映画館で見てきた。監督は他に誰がいようスティーブン・スピルバーグ、ストーリーはゲームの世界での宝探しという、聞いただけでもエンタメ感満載の作品だ。

概要

舞台は荒廃した近未来、人々はVRを装着してアクセスできるゲーム世界「オアシス」の中で毎日を過ごし、ありとあらゆる想像が実現できる電脳世界に入り浸っている。「オアシス」の創設者ジェームズ・ハリデーは死の間際、一つの遺言をのこした。ゲーム内に隠された三つの鍵を見つけ、「オアシスのイースターエッグ」を見つけ出せば、莫大な遺産と「オアシス」の管理権を手に入れることができる。オハイオ州のスラムに住むウェイドも日々「オアシス」にログインし、ゲーム上のもう一人の自分「パーシヴァル」として鍵を探し続けている。

愛あるオマージュとレファレンス

この作品のキモは、なんて言っても所狭しと詰め込まれた80、90、2000年代のサブカルチャーへのリファレンスだ。ざっと目立つものだけで『バック・トュー・ザ・フューチャー』、『AKIRA』『シャイニング』『アイアン・ジャイアント』『機動戦士ガンダム』など挙げていけばきりがないほどのキャラクターがゲーム参加者のアバターやゲーム内の装飾として盛り込まれている。少しでもサブカルチュアに触れたことがある人なら一度は二度はニヤリとするシーンがあるはずだ。

wiki によればこう言った無数のキャラクターたちを登場させるためのライセンス交渉だけで数年を費やしたという、。正直言ってオタクに媚びすぎな作品なのだが、そう言ったいやらしさを差し引いてもこの演出はうまく言っている、というよりこの作品の価値の9割がこの「キャラクター大集合」的な賑やかさなのだ。

物語の終盤、ここ一番の場面で日本人キャラクター「ダイトウ」が「俺はガンダムで行く」と宣言してゲーム内のアイテムを起動、初代ガンダムに変身してメカゴジラと大乱闘を繰り広げるシーンがあるのだが、よかった、とても良かった。正直ここ数十年で作成されたガンダムに関する映像作品でもっともアツかった。その他にも金田バイクにまたがったアルテミスがNYを疾走する場面もかっこよかったし、クラブシーンでかかるNew Orderの「Blue Monday」もこの映画のターゲット層に響くような選曲だ。

欠点

とはいえ、この作品には出演しているキャラクターの数と同じくらいの欠点がある。まず登場人物の描写が非常に希薄だ、「気弱なオタク」「ヒロイン」「親友キャラ」「エリート主義の冷酷な悪役」など記号的に与えられている役割以外の、意外性のあるキャラクター造形はほとんど見られない。

脇役にしても同じだ、侍アバターを使っているのは日本人、辮髪の小柄なキャラクターを使っているのは11歳の中国人、ヒロインはアバターと同じく魅力的な女の子だ(しかもなぜかみんな近くに住んでいる)。オンラインゲームという設定を生かすのであれば、アバターとそれを操るキャラクターは同じではなく、むしろ正反対くらいでいいし、住んでいる場所や国も世界中に散らばっていてもいいはずなのに。

荒廃した現実世界という設定も、その言葉以上の深みを与えられていない。主人公の家族を爆殺する悪徳巨大企業の「IOI」は『FF7』の神羅カンパニーのような超国家的な権力を持っているのかと思いきや、ラストでは社長が簡単に警察に捕まる。(とすればあのテロ行為や銃撃戦はなんだったのか、警察に捕まる程度の存在なら、ヒロインが所属していたレジスタンスとは?)

致命的なのは、現実世界の描写があまりにもチープなので、ゲームの世界とのコントラストをうまく描けておらず、主題であるはずの「リアルとオンラインの二項対立」が取ってつけたようなものになっていることだろう。その辺の安っぽさはメタサブカルチュア作品の宿命なのかもしれない。

ただ見て後悔したかというとそんなことはない、所狭しと暴れまわるキャラクターを観れただけでも楽しかった。ほぼCGであるにも関わらず映像をそのものを十二分に楽しめたのは、設定の効果が大きいだろう。ゲームやアニメに熱中したことが少しでもある人なら、楽しい2時間を過ごせることは間違いない。




ジュース奢ってください!