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待ち合わせ 結局今年も 小走りで

友人との待ち合わせ時間を一時間勘違いして、早めに駅に来てしまった。あてもなく駅ビルをふらふらしようと、とりあえずエスカレーターで上へ上へ。

一番上の階に到着して「さぁ、どこから回ろうか」と辺りを見渡すと、見知った顔が目の前に現れた。

大学時代の恩師だ。

いや、ここは新幹線も止まるようなターミナル駅。そんなわけないだろうと三度見くらいしたけれど、やっぱりこれは、あの、大学時代の恩師だ。

大きく手を振りながら近づいていくと、わたしの顔を見て目を大きく見開いた彼が次の瞬間にっこりと笑いながら

【久しぶりですねぇ】

と手話で答えた。

彼は、わたしが生まれて初めて出会ったキコエル学校で育ったキコエナイ大人。つまり、彼も聴覚障害があって、手話を自分の言語とする人で。

実際に会うのは何年ぶりだろう。それでも、彼は全く見た目が変わっていなかったもんだから、わたしたちのいる空間だけ10年くらい前に引き戻されてしまったような。(がしかし、彼と再会したこの駅ビルはわたしが学生の頃はまだ出来上がっていなかったのだけれども)

軽く近況報告をしていたら、あれよあれよという間に彼と待ち合わせをしていたという、大学の職員さんたちが集まってきた。彼女たちは、大学に入ったばかりの「わたし、別にキコエで困ってきたことなんかないもん!」という世間知らずだったわたしに、この世界にはたくさんの音情報があることを四年間かけてしっかり教えてくれた人たちで。

この人たちがいたからこそ、わたしは「合理的配慮」という名のもとに、進学先で情報保障を整えてもらい、社会人になってからも音の世界の人たちにわたしの #音の世界と音のない世界の狭間で 感じることたちを言語化できる大人になった。このnoteも、彼らの存在なしでは書けなかっただろうし、今のお仕事にもつながらなかっただろうと思う。

そんなわたしの原点みたいな人たちが、ぶわあっと集まってくるもんだから「これはもしかして、走馬灯とかいうやつなのではないか」と心配になって、頬を3回くらいつねってみるなどした。一応痛かったので、あれはきっと現実だったのだろう。

みなさんと新年おご挨拶をして、転職のご報告まで。みんなが「好きが仕事になって良かったねぇ」ととても喜んでくれて、とても嬉しかった。

時計を見たら待ち合わせ時間ぴったり。慌てて

「今から向かうね」

と友人にLINEをしたら、「さんまりちゃんは、相変わらずギリギリなのねぇ」と笑われてしまった。今年は、余裕のあるスケジュールを立てようと思っていたのになぁ。なんだかちょぴり悔しい。

でもね。夜ご飯のおともに読んでもらいたいお話(この日会う友人も、お耳の仲間だったので、手話や口を読んでもらったのです)が、たんまりあるんだからね。

お話をしやすいようにテーブル席のあるお店を選ぶぞ!

と、小走りに冬の駅を歩いた。もうマフラーなんていらないくらい、興奮と駆け足で顔を熱らせながら。



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