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なんにもしないを探しに。

私達はいろんなものを見て育つ。
そして、刻々と変わってゆく。
そのことをいろんな形で、
くりかえし思い知りながら、
先へ進んでゆく。
それでも留めたいものがあるとしたら、それは今夜だった。そこいら中が、
これ以上何もいらないくらいに、
小さくて幸福に満ちていた。
(吉本ばなな「TUGUMI」)

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パナマでは、カーニョ(caño)という田舎町にも訪れた。
首都からバスで約3時間。距離でいうと東京から長野くらいの距離感。

ここには、街の集会所となっている教会と個人経営のショップ、そして学校と家々が並ぶ。
それだけ。

滞在中のわたしの生活は
朝寝坊して起きて、朝ごはんだか昼ごはんだか分からないご飯を食べる。そのあとは、日向ぼっこしながらTwitterを眺めつつお昼寝をする。
昼寝から目覚めて日向ぼっこしながら本を読み、夕方から村をただ歩いて散策する。帰り道、サッカーしてる若者たちを眺めて日暮れを迎える。サッカーが終わると帰宅して夜ご飯を作って食べる。
おしゃべりしたり読書したりして、シャワー(といってもちょろちょろ水が流れてくる程度)を浴びる。漫画を読んで、眠くなったら寝る。

ゆっくりと心地よいあたたかさの中、ただただ時間が過ぎていった。

そんなある日。
サッカー観戦を終えて泊めてくれていた友人の家に戻ると、電気がつかない。なんなら、シャワーも出ない。

停電と断水が一気にやってきた。

他の家の様子を見てみようと外に出ると、どこもかしこも真っ暗。
日本で同じことが起きたら大惨事だろう。でも、カーニョの人々は何事もなくこの暗い中で生活を続けていく。

ふと空を見上げると、満天の星空。
所狭しに星が並ぶ。この星たちが真上にも真後ろにも真ん前にも。わたしを取り囲むように散らばっている。
まるで、天球の中にいるような感覚。

地球はまるいんだ。

理屈では知っていた。だけど、空一面の星にかこまれてみて、初めて実感した。
あんまりにも綺麗で、言葉を失って、何を考えるわけでもなく、ただ庭に座りこんで星を見続けた。

パナマでは、カスコビエホの綺麗な街並みの散策や大きなパナマ運河観光もした。

でも、一番の思い出は何かときかれたら、あの停電断水の夜に見た満天の星空とこたえるだろう。
時が止まったかのような真っ暗な中で、星だけがきらきらと輝く世界。そこで、ただ何も考えないということ。

なんにもしないをすると最高の何かに繋がる

って、プーさんも言っていた。一見簡単そうだけれど、たくさんの情報や娯楽に溢れる日常では、なかなか難しい。だからこそ、この「なんにもしない」をしたあの時間がわたしにとって大きな大きな宝物になったんだと思う。

「なんにもしない」を探しに出る旅もなかなか悪くない。

#旅とわたし #旅と写真と文章と #パナマ #吉本ばなな #TUGUMI #プーさん


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